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第80回:ちょっとでも未来は変えられる

こんにちは、あみのです。今回の本は、加賀美真也さんのライト文芸作品『明日、君が死ぬことを僕だけが知っていた』(スターツ出版文庫)です。

今作は「予知夢」が大きなカギとなる物語です。クラスの人気者の女子が死んでしまう、という悲しい夢を見たことから始まる新たな関係。予知夢を機に急接近した2人の高校生が学んだ「大切なこと」とは何か。読み終えたときにはきっと前向きな気持ちになれる作品です。

あらすじ(カバーより)

夢なんて叶わないと思っていた。あの日、君に恋をするまでは――。
「僕は小説家にはなれない――」事故がきっかけで予知夢を見るようになった公平は、自身の夢が叶わない未来を知り無気力な人間となっていた。そんなある日、彼はクラスの人気者・愛梨が死ぬという衝撃的な未来を見てしまう。愛莉の魅力を認めながらも、いずれいなくなる彼女に心を開いてはいけないと自分に言い聞かせる公平。そんな時、ひょんなことから愛莉が死亡するという予知を本人に知られてしまい…。「私はそれでも、胸を張って生きるよ」正反対のふたりが向き合うとき、切なくも暖かな、別れへの時間が動き出す――。

感想

正直、途中までは公平の無気力すぎる性格に違和感しかなかったです。でも、終盤の修学旅行のシーンからこの物語の本当の良さが見えてきました。愛梨の秘密によって、一度は諦めていた小説家への夢を取り戻していく公平の成長にぐっと惹かれる作品でした。

もともとは小説が大好きで自分でも書いていた公平ですが、夢で「小説家にはなれない」未来を見てしまったことと、自分には小説家の才能がないことが重なってしまったことによって、彼は小説を書くことはもちろん、読むこともやめてしまいました。

しかし愛梨は、公平が捨ててしまったノートに書かれていた小説を何気なく読んだことを機に、彼の物語に心が救われていき、書いた本人にも次第に興味を持ち始めます。

小説に限らず、何かの物語によって心が救われた経験、登場人物に憧れを感じた経験のある人って多いかと思います。今作では愛梨がよく「胸を張って生きる」という言葉を口にしていました。実はこの言葉は、公平が書いた小説の中で使われていた言葉で、愛梨は彼の何気ない言葉に勇気を貰っていたことが判明します。

これまで公平にとって「小説」は黒歴史だったと思う。だけど、彼が描く何気ない物語や言葉に救われる人がこの世にいることを愛梨との日常から気付きます。彼女との思い出によって、もう一度大好きな小説と向き合うことを決意した公平の姿を見たとき、「この物語を読んで良かった」と思いました。

愛梨は残念ながら病気で亡くなってしまったけど、彼女から得た希望を胸に、小説家への夢に再挑戦する公平。めげずに好きな物語を沢山書いて、賞に応募することを続けた結果、数年後の彼に予知夢とは違った未来が訪れます。

「小説家になれなかった」予知夢は、ほんのわずかな瞬間を切り取ったパズルのピースのようなものでしかなかったのか、それとも愛梨との経験が未来を少しでも変えたのか、そのあたりのことは詳しくはわかりませんが、自分の行動次第で未来はちょっとでも変えられることは確かなのかなと今作を読んで思いました。

今は何もない日常の中で「今できること」を見つけて、日々コツコツと前に進んでいけばきっと素敵な未来が掴めるはず。ちょっとした気付きで未来を変えた主人公の努力から、自分自身の将来への希望も感じられた素敵な物語でした!

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ここまで今回の感想文を読んで頂き、ありがとうございます。ネガティブに物事を考えがちな人や、愛梨のように何かの物語に心を救われた経験がある人には絶対おすすめな小説です。

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