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生きづらさの中に、優しい希望が灯る和風シンデレラストーリー(東堂燦:『十番様の縁結び』1巻)

久々にファンタジーにハマってみたいと思った私。いろんなライト文芸レーベルから多数のファンタジー作品が出ている中で、まずは表紙が好みかつ巻数が少なめ(3巻以内)の作品を何か読んでみよう!と思い、オレンジ文庫から出ている東堂さんさんの十番様じゅうばんさまの縁結び』という作品の第1巻を読んでみました!

1作目は「真緒まお」と名付けられた機織の少女が、「十番様」という神様とつながりが深い一族である終也しゅうやと運命的な出会いをするところから始まります。5年前から一途に彼女を想う終也の優しさに癒される一方、この優しさには何か裏があるのでは…?と読んでいてちょっぴりハラハラしたところもありました。

十番様は蜘蛛の姿をしており、一族でも神様の血が濃い(先祖返り)終也は、時々蜘蛛の姿になってしまうことがあります。そのことから母親に忌み嫌われている終也は、自分の姿に自信が持てないところがありました。

‥‥‥本当の化け物は、醜いものは、怖いことをする人たちのこと。叔母様たちみたいに。あの家の人たちのことを、今は醜いって思うの

p156

だけど真緒は蜘蛛の姿となった終也よりも、今まで自分を苦しめてきた叔母たちの方が醜い化け物のようではないかと考えます。終也の見た目よりも、彼の優しい心を大切にする真緒の素直な気持ちは、私も正論だと思いました。真緒のように相手の「心」を自然と受け入れられる人に私もなりたいものです。

今作で描かれている世界にも、人々を苦しめる生きづらさが存在していました。それでも「誰かを愛する気持ち」とか「優しさ」で溢れた真緒と終也の関係性には微かな「幸せ」が感じられ、ずっと2人の世界に浸っていたくなる美しい物語でした。

真緒と終也、それぞれの「好き」の形は今は違うけど、いつか真緒が終也の「好き」に追いつく時がとても楽しみになりました。今の真緒にとっての終也は苦しい生活から救ってくれた恩人のような存在だと思うけど、彼との生活を続けていけばその気持ちはきっと「愛」に変わると私は信じています。

真緒が現れたことによって終也たち一族がどう変化していくか見ていきたいし、目の色が赤いなど真緒自身にも謎がまだまだ多そうなので、まずは2巻を今度読んでみようと思います!

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