美しくも奇妙な愛の物語(江戸川乱歩:『人でなしの恋』*乙女の本棚シリーズ)
今回の本は、江戸川乱歩の『人でなしの恋』という作品です。
乱歩の短編はこれまでにも何作品か読みましたが、この作品は初めてでした。イラストレーターさんのイラストで名作が楽しめる「乙女の本棚」シリーズのラインナップにこの作品が仲間入りしたので読んでみました。
ちなみにシリーズの既刊には、『人間椅子』など他の乱歩作品も入っているのでこちらもおすすめです。
今作は、恋愛要素が強めな内容となっています。とはいえ、かなりドロドロしていて何よりも奇妙な恋ではありますが。乱歩が描くミステリアスな恋物語に酔いしれてみませんか?
あらすじ
感想
愛する夫は一体誰に恋をしたのか?夜汽車さんの美しいイラストと共に、ページをめくる手が止まらなくなる作品でした。
門野という美青年と結婚し、幸せな日々が続くのかと思いきや、実はそうではなかった。門野が恋したのは人間の女性?それとも…?
不安な気持ちいっぱいで浮気相手を調べるミステリー的な要素、そしてすべてが明らかとなった時のホラー的な要素と乱歩らしさ全開でした。
浮気相手を調べていく中で、主人公は蔵の中が怪しいと察します。蔵の中で主人公は美しい女性の人形を発見。この人形こそが門野が本当に愛していた女性でした。
「人間」を愛することができず、偽りの愛情を主人公に向けていた門野。夫が溺愛していた人形に嫉妬し、破壊した主人公。それぞれの歪な愛情の行方がおぞましい物語でした。
物語自体も非常にドキドキしましたが、「乙女の本棚」シリーズの本なので、乱歩の文章とリンクした夜汽車さんのイラストも見逃せませんでした。
中でも蔵の中で主人公が例の人形とご対面するシーンの演出が良き。読み手も主人公と一緒に箱を開けているような感覚になれました。イラストを活かした仕掛けは、このシリーズならではの面白さだと思います。他にもずっと見たくなる魅力的なイラストが満載でした。
シリーズも巻数が増えてきたので、新刊を追いかけるだけでなく、既刊を読み返してみるのもそろそろ面白いかもですね。
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