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努力次第で困難は乗り越えられる(森田碧:『余命88日の僕が、同じ日に死ぬ君と出会った話』*よめぼくシリーズ3)

今回の本は、森田碧さんのライト文芸作品『余命88日の僕が、同じ日に死ぬ君と出会った話』(ポプラ文庫ピュアフル)です。今作は『余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話』(以下:「よめぼく」)シリーズの3作目となります。

シリーズとはいえ、既刊とは別の主人公とヒロインなので、今作から入っても大丈夫です。だけど、あとがきで作者が書いていたように2作目を事前に読んでいた方が作中のネタとかわかって物語への理解度も更に高まるかと思います。

(ちなみにシリーズ2作目はこちら)

今作も王道な青春物語ですが、自分の「苦手なこと」を乗り越えていく主人公の姿がとても心に残る作品だと思います。今、何か克服したいものがある人には、少しでもヒントが見つかるかもしれない1冊です!

あらすじ

高二の崎本光は、クラスの集合写真を興味本位で“死神”に送り、自分と人気者の浅海莉奈の余命が88日だと知る。友人もおらず、ある悩みから既に人生に見切りをつけている光はたいして落ち込むこともなかったが、なぜ自分と対照的な存在の彼女と同じ日に死ぬ運命なのかが気になった。
やがて体験学習で一緒に水族館へ行くことになり、そこで浅海が深刻な病を抱えていると知った光は――。

感想

母親から虐待された過去によって、女性恐怖症になってしまった主人公・光。過去のトラウマもあって人付き合いはなるべく避け、クラゲのようにふよふよとなんとなく生きることを彼は望んでいました。

無気力な日々を過ごしていた光ですが、SNSで話題になっている「ゼンゼンマン」(ちなみにゼンゼンマンの正体は2作目で描かれています)と名乗る人物に自分の余命が88日であること、更にはクラスメイトの莉奈も同じ日に亡くなることを告げられ、光の人間関係が大きく変わっていきます。

ゼンゼンマンの予言を機に生まれた莉奈への興味。女性恐怖症の光にとって莉奈に話しかけるだけでもかなり勇気がいることだったと思います。
だけど勇気を出した結果、莉奈とは水族館が好きという共通点があったし、逆に彼女がきっかけで光が初めて知った世界にもたくさん出会えました。

そして、光の女性恐怖症も莉奈と何度も関わっていくうちに少しずつ解消していきます。

「崎本くんの女性恐怖症も、きっと克服できると私は思う。今すぐには無理でも、観覧車のようにゆっくりと前に進めば、いつかは克服できると思うから、頑張って!」

P211-212

苦手なものって誰にもあると思います。本当に苦手であれば無理する必要はないとは思うけど、どうしても乗り越えたいものがあるのなら、努力次第で克服できることを今作では教えてくれました。

上記で引用した観覧車デートでの莉奈のセリフには、読んでいて凄く前向きな気持ちになりました。私も人付き合いとかまだまだ苦手なことがたくさんあるので、自分の弱点を乗り越えるための努力を日々大切にしていきたいと思いました。

「よめぼく」シリーズですが、新作が出るたびに既刊の登場人物との意外な関係が見えてくるところがやっぱり面白くて好きだなと思いました。前作に出てきた「ゼンゼンマン」の存在が今作で新たな物語を展開していたように、光と莉奈の物語もまた別の誰かの物語につながっていくのでしょうか?4作目も出るのであれば、どんな物語が描かれるのか楽しみです。

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