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第61回:作家だけでは「物語」は完成しない

こんにちは!あみのです。今回の本は、葉月文さんのライトノベル作品『ホヅミ先生と茉莉くんと。』の第2巻です!登場人物たちの「物語」に対する思いに大感動した前作。続編も新たな感動を求めて早速読みました。

2巻で大きく取り上げられていたのは、ラノベ作品の「コミカライズ」。より多くの読者が手にしやすい漫画という方法で、原作小説の面白さを届けるコミカライズですが、作品に携わる人々はどのような思いを背負っているのでしょうか?今回もとても興味深いエピソードでした。

シリーズものなので1巻から順に読んでもらいたいですが、今回のエピソードは小説好きだけでなく、漫画が好きな人にも心に刺さる内容じゃないかなと思います!

あらすじ(カバーより)

 茉莉の”おてつだい”の甲斐もあり、念願の”はじめて”を卒業できたホヅミ。
 喜びに浸るのも束の間、直接会って伝えたいことがある、と担当編集の双夜(ふたつや)から呼び出しがかかる。逆らうこともできず渋々茉莉と訪れた編集部で彼を待っていたのは、思いがけない言葉で……!?
「おめでとうございます。”放課後、制服姿の君と。”コミカライズ決定です!!」
 重版に続きとんとん拍子に話が決まったホヅミは、浮かれつつ誕生日や七夕を茉莉と過ごしていた。全てが順調に進んでいるかに思えた裏で、新たな波乱の幕が開けようとしていることも知らず――。
 拗らせ作家×世話焼きJKの青春リライトラブコメ、シリーズ第2弾!

感想

自作のコミカライズが決定したホヅミ先生。コミカライズの担当漫画家を決めるための打ち合わせにてホヅミ先生は、「ハレルヤ」先生という若き才能と出会います。

作画のクオリティはもちろん、ホヅミ先生の読者でもあるハレルヤ先生に期待が高まるホヅミ先生たち。
実際にハレルヤ先生が描いた「ネーム」を見たホヅミ先生ですが、描かれていた内容は原作のストーリーよりもヒロインの魅力を重視した、原作サイドの意図から少しズレたものでした。

原作を読んだことがない人や本編からズレた「スピンオフ」作品であれば、ハレルヤ先生が描いた内容でも問題ないと思います。でも、原作のファンからすれば、ヒロインの可愛さだけを伝えているような内容じゃ納得しない読者もいるかもしれません。

ただ「絵が上手い」「原作が好き」だけでは、コミカライズを担当するのは難しいことをハレルヤ先生から実感します。人気小説のコミカライズ作品がどのような背景で生まれていくのかを知れたのが、今回の1番の収穫でした。

また、原作イラストレーターのPOP☆コーン先生(通称:ポンコツ)とハレルヤ先生のコミカライズを巡るバチバチには「このコミカライズ、本当に連載できるのか?」と私も凄く不安になりました。

でも、彼女たちの作品をよく理解しているホヅミ先生は、それぞれの「ハッピーエンド」へ2人を導きます。ホヅミ先生が導いた今作の「ハッピーエンド」には、私も非常に納得です。

クリエイターひとりひとりに向いている仕事や得意な表現がある。そして、ホヅミ先生の彼女たちへの期待は、読者全員の期待でもあると思う。ポンコツ先生もハレルヤ先生も、将来はより素晴らしいクリエイターになりそうですね。

***

2巻は前作のように出版業界のシビアな話題は比較的少なく、どちらかというと「ラブコメ」としての面白さがより増していた印象を受けました。

今回も茉莉ちゃんと過ごすゆるやかな日常風景に、微笑ましくなりました。最高のヒロインと一緒に作品作り、とても楽しそうですね。でも、コスプレ「茉莉」(笑)とか茉莉ちゃんと双夜担当で百合妄想とかホヅミ先生、前作以上に変態になってる気がする。

一方で今回も感じたのが、ホヅミ先生以外にも様々な人同士が支え合うことでひとつの「作品」は完成するということです。

厳しいながらもホヅミ先生と一緒に作品を売るための手段を考えてくれる双夜担当、物語に彩りを与えてくれるポンコツ先生、読者を増やすためPOPなどで面白さを伝える書店員、そして茉莉ちゃんのようなホヅミ先生の新刊を待ってくれる読者。

でも、実際はきっとそれ以上の人々がホヅミ先生の物語を支えているのではないでしょうか。ひとりの作家の作品に携わる人々の「売りたい」「届けたい」という気持ちが高ければ高いほど、「ヒット作」というものが生まれていくのだと思います。

物語を一緒に作る楽しさと喜び、物語が誰かに届いたときの感動が読み手にもしっかりと味わえるのがこのシリーズの素敵なところだと改めて感じました。やはり何らかの「物語」が好きな人にもっと届いてほしいシリーズです。

1巻は読者代表の茉莉ちゃん、2巻はイラストレーターのポンコツ先生がキーパーソンでしたが、次回は誰がキーパーソンとなるのでしょうか。3巻の発売にも期待しています。

***

今回も私の感想を読んで頂き、ありがとうございます。
この感想を読んで、『ホヅミ先生と茉莉くんと。』というシリーズに関心を持ってくれたらもっと嬉しいです!

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