第141回:一筋縄ではいかない恋から「普通」とは何かを考える。(人間六度:きみは雪をみることができない)
こんにちは、あみのです!とても印象深い恋愛小説に出会えたので、紹介します!
今回の本は、人間六度さんのライト文芸作品『きみは雪をみることができない』(メディアワークス文庫)です。今作は毎年恒例「電撃小説大賞」受賞作のひとつになります。公式略称は「きみ雪」とのこと。
「王道」と見せかけて、実は斬新な恋愛小説。「普通」とは一体何なのか?難しい質問が作中では描かれますが、読むと世の中の見方が少しだけでも変わる物語なのは確かだと思います。
切なめな恋物語が好きな人はもちろん、本を読んで人生をガラッと変えてみたい!と思っている人にもとてもおすすめな作品です。
あらすじ
★「きみ雪」には公式のテーマソングがあって、こちらを聞くと今作が1本の映画のように楽しめるかと思います。また読後に聞くと優紀の気持ちがより深くわかるような歌詞にも注目です。
感想
今作のヒロイン・優紀が抱える「冬眠する病」を軸に、世の中には人それぞれ違う「普通」があることを学ぶことができた良作でした。
優紀にとって冬の数ヶ月間だけ眠ってしまうのは毎年ある「普通」のこと。でも周りはこの「普通」をなかなか理解してくれず、優紀も彼女の家族も非常に悩んでいました。
主人公の夏樹も優紀のことを知らない頃は、なぜ冬の間だけ彼女は姿を消してしまうのか?疑問や寂しい気持ちでいっぱいな日々を過ごしていました。彼女の実家にて「冬眠する病」に対する本人と家族の思いを知ったことを機に夏樹は、優紀の価値観を受け入れられる自分になることを選びます。
一方の優紀も「冬眠する病」を「特別扱い」ではなく、「彼女にとっての普通」として見てくれる夏樹に異性として次第に惹かれていきます。
様々な「普通」を受け入れることによって、今までは見えなかった世界が見えてくることもある。私も夏樹のように、自分にはない価値観も積極的に受け入れることができる人になりたいと思いました。
不思議な設定ながらも「多様性」や「生きづらさ」を描いた箇所はとても今の世の中に必要な物語であることを感じられ、今作はこれまで私が読んだ恋愛小説の中で最も「現実に近い」作品だと思いました。少し難しいテーマではありましたが、多くの人に届いてほしい物語です。
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昨年の電撃小説大賞受賞作で印象的だった作品(国仲シンジさん:『僕といた夏を、君が忘れないように』)の感想も合わせて貼っておきます!こちらは王道路線な青春小説です。
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