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第143回:優しい人々との絆から見える「命」の大切さ(汐見夏衛:臆病な僕らは今日も震えながら)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、汐見夏衛さんのライト文芸作品『臆病な僕らは今日も震えながら』(実業之日本社文庫GROW)です。noteで汐見さんの作品を紹介するのは7冊目です。

今回の作品では汐見さんが他作品でもよく描く「生きづらさ」だけでなく、「命の大切さ」というシンプルだけど深いテーマも印象的に描かれていました。ストーリーもわかりやすいので、汐見さんの作品はまだ読んだことがない!という人にも強く推せる作品です。

あらすじ

汐見夏衛史上、最も切ない!愛する人へつなぐ命の物語。
またこの夢か――。疎外感の中、生きる希望を失った女子高生・緒方きららは、不可解な「虹色の世界」の夢を幼い頃から繰り返し見ていた。自殺を思い訪れた地で彼女は偶然、その「虹色の世界」を描く青年・芳川景と出会う。彼もまた同じ夢を見続けていた。やがて、夢の謎を追うふたりに、想像を絶する過酷な真実が待ち受けて‥‥‥。生きる意味、命の尊さにボロ泣き必至!

カバーより

感想

今作は、「人々の優しさから生まれる感動」を存分に味わうことができた物語でした。

主人公のきららは、自分が生きている理由がわからず、家でも学校生活でも消極的な日々を過ごしていました。つまらない日常が続くと思っていたきららですが、景という少年との出会いが彼女の運命を変えていきます。

きららと景には、生き物や景色がすべて「虹色」でできている幻想的な夢をよく見るという共通点があります。出会って以来図書館などで夢の正体を調べる2人ですが、ある日手がかりを掴むために訪れた個展にて「隆介さん」という男性の存在を知ったことで更なる物語が動き出します。

事故で亡くなった隆介さんと今は亡ききららの母との間でつながっていた命の物語。きららの母はきららが生まれてすぐに亡くなっているため、彼女は自分の母親がどのような人物なのかずっと知らないままでいました。

隆介さんの家族から生前の母の話を聞いたことで、これまでなんとなく毎日を過ごしていたことへの「申し訳なさ」と、今を生きていることへの「感謝」の気持ちがきららの中で生まれていきます。

難病を抱えていた自分に命をつないでくれた隆介さんと彼の家族への感謝、そして直接伝えることができなかったきららがこの世に生まれてきたことへの喜び。

時を越えてきららのもとに届いた母からの温かなメッセージからは、彼女がどれほど愛されていたのかを感じることができ、心が震えました。
またきららの母や隆介さんのようにもっと生きたくても生きることができなかった人たちのことを思うと、馬鹿馬鹿しいことなんて言っていられない!と強く思いました。

自分の存在は無価値で無意味だなんて、思っちゃだめだ。そんなふうに卑下するのは、わたしの命をつないでくれたたくさんの命に対して失礼だ。

p294

今作は長く降っていた雨が止んで、空に虹がかかっている景色を読後に思い浮かべる物語でした。たくさんの出会いと見えない親子の絆からきららが得たものを私も日々忘れないよう生きていきたいです。

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★個人的におすすめな汐見さんの作品です


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