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第113回:世界は「幸せ」も満ちている

こんにちは、あみのです。
今回の本は、櫻いいよさんの『世界は「」で満ちている』という作品です。

今作はヤングアダルトのジャンルにカテゴライズされる作品でしたが、今の私が読んでも充分心に刺さる1冊でした。使われている表現も凄くわかりやすいので、中高生に限らず幅広い世代の人の心を掴む作品ではないでしょうか。

人間関係の難しさを感じる作品ではありますが、読後は主人公と一緒に日々を楽しく前向きに生きていきたい!という気持ちになることができます。

あらすじ(Amazonより)

中学1年生の由加は、家では優しい家族に、学校では仲の良い友人たちに囲まれ、毎日を楽しく過ごしていたが、ある日を境に突然学校内で孤立してしまう。
親友だと思っていた涼ちゃん、毎日おしゃべりが尽きなかった友人たちからも避けられるようになった由加は、同じく一人きりで過ごしている幼なじみの男の子・悠真に話し掛けるようになるが――。 
世界は「楽しい」ばかりじゃない。
世界に満ちているものが「 」なら、私たちはどうしたらいいの――? 
リアルで胸に迫る、青春小説。

感想

心ない「ウワサ」が人々を苦しめる世の中。主人公の由加も教室で飛び交うウワサによって、ある日突然居場所を失ってしまいます。

友達との関係が上手くいかなくなってしまった由加は、幼なじみの「ゆうくん」こと悠真に悩みを頻繫に打ち明けるようになります。ゆうくんは由加にとって、とても居心地のよい相手でした。

由加は昔からゆうくんのことが大好きで、彼の優しさもよく知っています。だけど不良っぽい見た目やひとりでいることを好むことから他の人には、「怖そうな人」「近づいてはいけない人」など先入観で「悪い子」だと思われていた一面もありました。私もゆうくんは、見た目で避けちゃうタイプだと思う。

人の不幸は蜜の味。いいウワサよりも、悪いウワサの方が圧倒的に広まってしまう。特に由加たちが暮らす小さい街では、何かのウワサが生まれるとすぐみんなに知れ渡ってしまう。

世界は「悪意」で溢れている。その「悪意」の中から「真実」を見つけて、「優しさ」を追求していく由加の姿からは、大好きな人と毎日を楽しく生きていくための「希望」を感じることができました。

***

今作では「毒」という言葉が印象的に使われていました。
自分で自分の心を傷つけてしまうことで、毒が生まれる。生まれた毒は、自分だけでなく、関係のない人までも巻き込んでしまう。悩みを溜めこんで苦しむ私たちは、この毒からどうしたら解放されるのだろう?

「悩み」って人に話しやすいものもあれば、話しにくいものもあると思います。由加もゆうくんや家族にこれまで抱えていた悩みを話した結果、今の彼女に必要な「居場所」へ辿りつくことができました。

また、由加が居場所を失う原因となった友達涼ちゃんとの関係もちょっと残念な結果にはなってしまったけど、彼女の本当の気持ちを聞いたうえで、今の自分なりの答えを出すことができた由加は凄く立派だと思います。
今は涼ちゃんと距離をおくことを由加は選びましたが、改めて仲良くできる時がいつか訪れるといいなと思いました。

一方で、由加の悩みを聞いていたゆうくんにもたくさんの悩みがありました。ひとりを好む「今の彼」になった理由、家族と上手くいかないこと。口に出すのが難しい悩みを由加に話したことでゆうくんは、「由加」という尊い存在が身近にいることの「幸せ」に気が付きます。

2人の絆からは、少なくてもいいから本当に信頼のできる「仲間」を持つことの大切さを感じました。また由加は、ゆうくんへの居心地の良さから本物の「恋する気持ち」を知りました。大好きな人と過ごす幸せな時間は、自分を苦しめる毒にだって打ち勝つことができる!

私も悩みを上手く人に話せなくて、自分を苦しめてしまうことがよくあります。自分を苦しめてしまうことで、この先のことが不安になってしまう時もあります。
悩みを思い切って誰かに話してみること、些細なことでも「幸せ」を見つけられること。これらのことは、今を生きるにおいて凄く大切なことだなと今作を読んで強く感じました。

辛いこと、嫌な話題が飛び交う毎日だけど、世の中には楽しいこと、嬉しいことのような「幸せ」も溢れているんだよっていうことも忘れないでほしい。明日を生きていくための「光」を感じることができた素敵な作品でした!

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