『よるのばけもの』住野よる
こんにちは、天音です。
五十音順作家巡り、「す」の作家は住野よる。
今回の読書感想は『よるのばけもの』です。
夜になると、八つの目と六つの足、そして四本の尾を持つ黒い化け物になる安達。原因は不明。忘れ物をとりに化け物の姿で学校に忍び込んだ際に、変わり者のクラスメイトの矢野さつきと出会う。
それをきっかけに2人は夜の学校で会うようになる、というストーリーです。
中学生のクラス内における同調圧力と、それに伴ういじめの話です。
主人公は中学3年生の安達くん。
クラスメイトからはあっちーというあだ名で呼ばれています。
読み手としての印象は、平凡な少年。平凡ゆえに自分の弱い立ち位置を理解していて、クラス内では変に目立たず埋没することに努めているような男子です。
安達は、夜は化け物の姿で矢野と普通に接しますが、昼の学校ではクラスメイトに目をつけられるのが嫌で矢野を無視します。
この矛盾した立ち位置に板挟みになり、安達は苦悩するわけです。
物語は彼の視点で展開していきます。
目立たないように神経を張り巡らせている少年と、他者と足並みを揃えられずにクラス内で孤立、そしていじめを受ける少女。
まだ彼の倍の年齢とまでは行きませんが、それでも中学はほぼ10年前に卒業した私には正直な話少し視点が狭く感じました。
そもそも読者は全体を見渡せる立ち位置にいます。
良くも悪くも“中学生の葛藤の物語”だなと。
住野よるさんの描く、学生時代の閉塞感は凄まじいのです。
雨の日の、締め切った教室で大人数がひしめき合うじめじめしたあの感じ。
すごくリアルに再現されていて、クラス内の同調圧力のような右向け右の姿勢を肌で感じながら読みました。
まあ私はあっちーほど空気を読んでうまくやっていこうとするような学生ではなかったですけどね。
……だからいつも一緒♡みたいなクラスメイトいなかったんだろうな。
ほんと、クラスの女子で学食の日✨とかマジで勘弁してくださいって感じでしたし。
私、まず学食が苦手なんですよね。
美味しくないとかじゃなくてガヤガヤうるさいから。しかもそこからなんか気ぃ配って話しながら昼ごはんとか冗談じゃないですよねえ。
大学時代だって学食よりもカフェの方が好きだったし。比較的静かだったんで。
……私の学生時代の嫌だったことはどうでもいいですね。すみません、思い出したらつい……。
作中に出てくる保健の先生が矢野に言った「生き延びなさい、大人になったらちょっとは自由になれる」という言葉は、本当にそうだと思います。
中学時代、友人にトイレに誘われて断った私が断言します。
NOと言える日本人。
だってさっき行ったんだもんあほらしい。
だけどどの世代だろうと、トイレとか、不機嫌になられるのが面倒・怖いとかそういうので雁字搦めになっていたという経験がない人はいないんじゃないでしょうか。
「いじめ」という言葉でぼやかされてしまっている犯罪にまで発展しなくとも、ここに居づらいと思う感覚。
なければ、きっとそれは誰かを拘束していた側だからです。
もしくはすごくいい環境。それは素晴らしい学校ですね。誇ってください。
段々と年齢が上がるにつれて自分も相手も大人になって、強固な繋がりからゆるいものへと変遷していくものです。
……たまに、中学から変わらないなという残念な人もいますが。
クラスメイト、家族、先生、先輩後輩。
所属による立場の使い分けを覚え始めた学生に、読んで欲しい本だと思いました。
どれだけ多くの側面を持とうと、自分は自分だと思えるきっかけになる物語。……かもしれません。
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