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#恋愛小説

好きな彼

好きな彼

初夏の海のマジックアワー。

「夕方は寒くなって来たね。」

そう言って後ろから私を抱きしめて温めてくる彼。私の髪に鼻を埋めて、手を握りあい。周りが暗くなるほどに強く手を握りあう。大好きよ。

「そろそろ家に帰ろうか。」

私は彼を誘って、手を繋いだまま歩いて、私達の家に帰り始める。その間彼は一言も喋らず手の強さが熱い。本当に痛いくらい力強い…。どうしたの?

家に帰りつき。手洗い終わるなり、

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青い時代の恋

青い時代の恋

私に会うとポーカフェイスの貴方の耳が赤く染まる。だから思い切って聞いて見る。

「すきなの?」

「なにが?」

「私が」

「なんで、そう思ったの?逆に聞くけどさ。」

「貴方の耳が真っ赤だから。」

すると顔まで真っ赤にして、彼は下を向き立ち尽くしてしまった。私はえへって笑って走って逃げちゃった。

逃げて立ち止まって振り返り、

「勝手に踏み込んでごめん!でも、まってるの私!私の扉の鍵はあな

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全ては仕組まれている

全ては仕組まれている

体はもう仕組まれていた。

生まれる前に私の体の仕組みは殆ど揃い、そこへ私の心が生まれた。体へ私の心は落ちて、もう拾えない。引き返せない。

生まれたいと願った訳でなかった。

せめて愛の結晶で生まれたかった。雪の結晶のようなキラキラと輝く愛の形の子供として…。



命が性欲使い、地位や名誉、体裁欲を餌に、男女に子を作らせ笑っている。

世間の体裁で出来た表面的な人形たちを笑ってる。

子供、

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失恋

失恋

貴方と別れて私は豊かになっている事に気づいた。貴方は本当に凄い人。



捨て猫の汚れを落として白猫にした貴方。だから、私の汚れも落としてくれる気がしたの。

あなたは眩しくて、私の色の事なんて考える隙なくなった。恋って全てが真っ白に盲目になっちゃうのね。私は貴方の輝きの色に塗り変わったわ。



毎日、毎日が同じ繰り返し。結局同じ繰り返しだったけど、貴方の色を貰って、同じ毎日の中に新しい私は

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初恋

初恋

初夏の少し暑い日だった。

急な坂から、カラカラと綺麗な細工が施された一本の口紅が転がってくる。

坂の上の人が落としてしまったんだろう。若者は急いで坂を駆け上がる。若い筋肉が脈打ち隆起しながら上へ上へと道路を蹴り上げ、登ってゆく。汗とともに。

坂の上に着くと、その先に更に階段があり、少し遠くにポニーテールを揺らして女の子が登っているのが見えた。高校生らしき女の子の口紅だろうか…若者は大きな声で

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恋(誠実な男) Honest piano man

恋(誠実な男) Honest piano man

夏の初め、君と抱き合いハンモックに乗り揺れて愛を語り合った。

夜空を見上げ、星座を共に探した時間が流れる。2人の息がお互いを撫で、優しく水の瞼の中で1つになる幸せの深夜。

裸で抱き合い、笑顔で頬を寄せ合う2人を月の光が照らし、君が艶やかに冷たく輝いて青く白光するから、お互いの体温が恋しくなる。

キスは熱く、抱擁はもっと熱く、君の細い手首、首が赤く紅潮し、ハンモックも徐々に僕達を包み込み、月と

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君と結婚したいんだ

君と結婚したいんだ

シンプルに生きたいなと呟いた僕に、

「シンプルに生きるなんて、この時代に言われてもね。」とイライラと吐き捨てるように言った君。かなり怒っていてとても可愛かったんだ。顔真っ赤にして怒った顔が又グッときてさ。

ある日ふと、恥ずかしいけど謝りたいと言ってきた。

「貴方、個人の話だったんだね。」って。って歯に噛んだような、歯を食いしばったような顔で。

僕はもう忘れた話だったから、面食らったけど愛し

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