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好きな彼

初夏の海のマジックアワー。

「夕方は寒くなって来たね。」

そう言って後ろから私を抱きしめて温めてくる彼。私の髪に鼻を埋めて、手を握りあい。周りが暗くなるほどに強く手を握りあう。大好きよ。

「そろそろ家に帰ろうか。」

私は彼を誘って、手を繋いだまま歩いて、私達の家に帰り始める。その間彼は一言も喋らず手の強さが熱い。本当に痛いくらい力強い…。どうしたの?

家に帰りつき。手洗い終わるなり、

「さっきの続きしない?今度は私が貴方を抱きしめたいんだけど…。どうかな?」

彼を誘ってみる私は、ベッドに足を投げ出し、手を招く。素早く猫のように虎のような彼が私の胸の中に滑り込んでくる。そして、規則正しく息をし始める。愛おしい時間がまた流れ始め私に安息をもたらす。陽の沈んだ後の熱い時間。

彼の猫っ毛の髪を優しく撫でる。私の胸で目を閉じる彼。愛おしい貴方が幸せであって欲しい。

「あのさ、傷を舐め合うってどう思う?」彼が不意に問うて来た。息が胃の辺りで温かい。

「舐め合うだけじゃなくて、治してあってるのよ。傷はいつか治るわ。」

食事もお風呂も入らず、2人少しの間共に眠ろう。私の傷はもうかさぶたも剥がれ新しく柔らかい事、貴方は知らないのね。

貴方の傷が治った時、関係性が変わるでしょう。それとも、貴方は私に感謝して同じ未来を見てくれるかな?もう必要無くなるのかな?

バカな事は考えないで、今を愛そう。貴方の人生を愛するわ。私って強いから大丈夫なのよ。泣いている子が弱いと思わないでね。

もう考えないで少し眠ろう。可愛い貴方と。

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