天海大介

言葉と教育に関心があり、それについて考えたことを中心に記すページです。世の中ではそれに…

天海大介

言葉と教育に関心があり、それについて考えたことを中心に記すページです。世の中ではそれに関連した先生という仕事をしています。

最近の記事

こんな本を読んだ『共生社会のアサーション入門 差別を生まないためのコミュニケーション技術』(著:小林学美 絵:石川貴幸 明石書店2023.4)

12月の上旬は、障がい者週間(12月3日から1週間)や人権週間(12月4日から1週間)が重なる時期です。 【参考】 人権週間についての法務省による説明 https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03.html 障がい者週間についての内閣府による説明 『共生社会のアサーション入門 差別を生まないためのコミュニケーション技術』は、少し前に読んだ本ですが、時期的にはぴったりかと思い、書いてみました。 出版元の明石書店のサイト(https://

    • こんな本を読んだ『日本語教師のためのはじめてのコーチング』(吉田有美 アスク2022.12)

      「日本語教師のための」ということからわかるように、対象者をはっきりさせた本です。 日本語教師になろうかというような人だけでなく、実際にその仕事をしている人にも、ヒントとなる問いかけが多くあります。 コーチングという言葉はビジネスでも聞く言葉ですが、誤解されがちな概念でもあります。 著者の吉田さんも「はじめに」で 「当初はコーチングを“相手にやる気を出させる手法と勘違いしていましたが、あとからコーチングは対人支援の方法であることを学びました。」(同書p.2から引用)

      • 佐々涼子『ミケと寝損とスパゲティ童貞 サクラの国の日本語学校』(万来舎 2009.12)を読んでみました。

        ★日本語教師だった著者が日本語学校で出会った人について綴った本 著者の佐々涼子さんは、ノンフィクションライターとして、有名な方です。 遺体などをその方の本国へ送る仕事を扱った『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社 2012.11 のち2014に文庫化)で、「第10回開高健ノンフィクション賞」(2012)を獲り、(http://gakugei.shueisha.co.jp/kaikosho/list.html)(なお、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』にヒントを

        • 今井むつみ『英語独習法』岩波新書 を読んでみました。

          今井むつみさんは、認知科学がご専門の方です。 (御本人のプロフィールはこちら→https://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/imailab/profile/) 題名は出版社の方が付けたのでしょうか。 「この本で独習すれば、できない英語ができるようになるのだ」と思う人が出てこないことを祈りたいと思います。 実はこの本の「全部」が役に立つのは ビジネスあるいは論文を書くというようなとき、使い物になる英語力を身につけたい という人です。 筆者も 「本書

        こんな本を読んだ『共生社会のアサーション入門 差別を生まないためのコミュニケーション技術』(著:小林学美 絵:石川貴幸 明石書店2023.4)

        • こんな本を読んだ『日本語教師のためのはじめてのコーチング』(吉田有美 アスク2022.12)

        • 佐々涼子『ミケと寝損とスパゲティ童貞 サクラの国の日本語学校』(万来舎 2009.12)を読んでみました。

        • 今井むつみ『英語独習法』岩波新書 を読んでみました。

          都立高校の入試にスピーキングテストを導入する件について

          都立高校の入試でスピーキングテストを利用しようという話が進んでいて、それをめぐってあれこれもめているということなのですが… この問題を私が最初に見たのは、毎日新聞2022/10/8の地方版でした。 (注:地方版とは、新聞の中で配布地域を扱った紙面です。私が東京在住なので、配られる新聞では、そのコーナーは「東京」となっています。) その記事は ・立憲民主党都議団が「都立高校の入試で、スピーキングテストを利用することを事実上できないようにする条例案」を提出した。 ・その条

          都立高校の入試にスピーキングテストを導入する件について

          集英社の季刊誌『kotoba』2022年秋号で、杉田敏さん、大杉正明さん、遠山顕さんの鼎談を見ました。

          集英社の『kotoba』2022年秋号 を見てみました。 今回の「特集」は「やがて愉しき外国語」と題されています。 (季刊誌で、その都度、「特集」が組まれます。評論対象は文学だったり、映画だったり、いろいろです。) 外国語系では、2019年春号に「特集 日本人と英語」というのがありましたが、久々の語学特集ということになるでしょうか。 詳しくは集英社の当該サイトを見てみてください。 https://kotoba.shueisha.co.jp/#fragment-1

          集英社の季刊誌『kotoba』2022年秋号で、杉田敏さん、大杉正明さん、遠山顕さんの鼎談を見ました。

          国際的な条約への参加・不参加問題

          社会・文化・地域に関する話題です。 まず、クイズを二つ。 問題1 下の国で、いわゆるジェノサイト条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)を批准していない国はどれでしょう。 1 日本 2 中国 3 アメリカ 4 ロシア 5 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮) 問題2 下の国で、いわゆる子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)を批准していない国はどれでしょう。 1 エクアドル 2 アメリカ 3 ルワンダ 4 アフガニスタン 5 日本 ↓ ↓ ↓ ↓ 問題

          国際的な条約への参加・不参加問題

          語学上達の鍵は必要性~『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』(山舩晃太郎著 新潮社2021)を読んで

          ※再投稿記事です。(2022/01/21に投稿した記事に見出し画像を付けました。) 山舩晃太郎(やまふね こうたろう)さんは、簡単に言えば、水中考古学の専門家です。 特に西洋の船に詳しく、沈没した船の測量や復元構築を専門とする学者さんです。 その方が『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』という本を2021年に出版されました。 書評を検索すれば、だいたいの内容はわかると思いますが、その本に載っていた「学者になった経緯」だけを、これまた、簡単に言うと、 ・プロ野球選手に

          語学上達の鍵は必要性~『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』(山舩晃太郎著 新潮社2021)を読んで

          外国人の在留資格「特定技能」をめぐる見直し論議

          前稿からの流れで、「特定技能」をめぐって見直し論議が起きているという話です。 この制度、至らぬ点が多いというのは事実です。 外国人労働者を増やしたいという立場と、増えるのを抑えたいという立場に配慮したためか、結果として働く人に配慮した部分が少なくなっているということが言われているわけです。 例えば、「特定技能1号」の段階では、家族は日本に滞在できないのですが、これは家族がある人にはきついのではないですか、などということが言われているのです。 (「居ついてもらっては困る。

          外国人の在留資格「特定技能」をめぐる見直し論議

          外国人の在留資格「特定技能2号」を持つ人が誕生

          日本語教育に関わる話題です。 日本語教師になろうという人が学ぶ内容の一つに在留制度があります。 今回は「特定技能2号」の在留許可が初めて出たという話です。 2018年に法律が成立し、2019年4月から創設された「特定技能」という在留資格があります。 外国人の労働者確保を進めたい産業界と、外国人の移民を受け入れるのは嫌だという層の間を取り持つような形で成立したものでした。 当初から政府は答弁で移民政策ではないと言い、しかし、識者は事実上の制度転換だと言っているというよ

          外国人の在留資格「特定技能2号」を持つ人が誕生

          「女優」「うぐいす嬢」「肌色」は、避けるべき言葉?~要配慮表現について~

          『記者ハンドブック』の改訂版(第14版)が2022年3月15日に発売されました。 『記者ハンドブック』は、新聞記者の人が迷ったときに基準にする(参考にする)という目的で作成されている本です。 (といっても、会社ごとに細かい決まりがあって、実際にはそちらのほうで書いているので、そのハンドブックどおりの表記がなされているわけではありませんが。) 私は、まだ、実物は見ていません。 私が見たのは、 「記者ハンドブック」6年ぶり大改訂 「ジェンダー平等への配慮」新規収録、「肌

          「女優」「うぐいす嬢」「肌色」は、避けるべき言葉?~要配慮表現について~

          墨田区、「メールで欠席連絡」を本格導入、テスト採点にAI処理試験的導入

          墨田区が新しい取り組みをしているという記事を見ました。https://mainichi.jp/articles/20220221/ddl/k13/010/116000c(このサイトでは、有料記事なので、一部しか読めないと思いますが、 564文字中、344文字は読めます。) 以前には親から学校への欠席連絡は電話で、ということが多かったわけですが、それを「メールでよい」ということにしようという流れがあるようです。 メールでの連絡を正式な届けと認めるのは、どの学校でもできるはず

          墨田区、「メールで欠席連絡」を本格導入、テスト採点にAI処理試験的導入

          発音ガイド Forvoで遊んでみた

          発音ガイド Forvoで遊んでみました。  Forvoはhttps://ja.forvo.com/にあります。 このサイトは、いろいろな単語などを、世界の人が録音して、それを蓄積しておくというもの。 そうですね。昔、ある言語の発音を聞くことは、なかなか大変なことだったわけです。 辞書の発音記号を手掛かりに頭の中で、その音を構成する、ということがせいぜいだったときも長かったわけです。 インターネット辞書ができるようになってからは、例えば、英語などの場合は、クリックする

          発音ガイド Forvoで遊んでみた

          鈴木孝夫先生の思い出

          言語社会学者、鈴木孝夫先生が2021年2月10日に亡くなってから1年経ちました。 先生と初めて会ったのは、大学1年生のときで、一般教育科目「言語」という科目でお世話になりました。 大教室での授業でした。はっきり覚えていないのですが、全部席が埋まれば、何百というぐらいの数になる大教室でした。だから、先生は遠くにいるという感じでした。 この授業は何回目に何をやるというのが決まっているものではなく、おしゃべりが好きだと公言していた先生が、このあいだ気付いたこと、というようなこ

          鈴木孝夫先生の思い出

          教育と入試の改革をめぐって~物江潤『入試改革はなぜ狂って見えるか』を読んで

          物江潤『入試改革はなぜ狂って見えるか』は、個別指導塾を経営している著者が現場を知る(高校生が身近にいる、入学試験に詳しい)立場から、教育と入試の改革について書いた本です。 この本は、いろいろなことを指摘しているのですが、概略、 1 文科省や審議会は現場の声を拾い上げようとしているが、現場から見るとそれがなされているように見えないのが不思議。 2 教育をどうすべきかについて、有識者の会議では、理念を持ったさまざまな意見が出て、それを無理にまとめようとする。 3 すると提

          教育と入試の改革をめぐって~物江潤『入試改革はなぜ狂って見えるか』を読んで

          自分を鏡を見て自分だと思うのは、人間だけではないという話。

          『魚にも自分がわかる ―動物認知研究の最先端―』(幸田正典 筑摩書房2021年 ちくま新書〈1607番〉)を読みました。 簡単に言うと、自己鏡像認知(自分を鏡を見て自分だと思うこと)がある種の魚にはできますよということを述べた本です。 これまで、自己鏡像認知をするのは、チンパンジー、イルカ、ゾウ、カササギなど、ある程度知能が高いと思われていた動物だけだとされてきたのですが、魚も?ということで、驚かれた研究の紹介です。 この本では、まず、脳についての新しい知見について述べ

          自分を鏡を見て自分だと思うのは、人間だけではないという話。