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語学上達の鍵は必要性~『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』(山舩晃太郎著 新潮社2021)を読んで

※再投稿記事です。(2022/01/21に投稿した記事に見出し画像を付けました。)

山舩晃太郎(やまふね こうたろう)さんは、簡単に言えば、水中考古学の専門家です。

特に西洋の船に詳しく、沈没した船の測量や復元構築を専門とする学者さんです。

その方が『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』という本を2021年に出版されました。

書評を検索すれば、だいたいの内容はわかると思いますが、その本に載っていた「学者になった経緯」だけを、これまた、簡単に言うと、

・プロ野球選手になるのが夢だった。
・大学まで野球部でがんばったが、夢は果たせなかった。
・大学の専攻は史学で、卒論関連で図書館にいたとき、運命の1冊に出会った。
・『海底の1万2000年―水中考古学物語』(ロバート・F・バージェス 心交社1991年)である。
・それに魅せられて、水中考古学関連の本を読みあさった。
・そこでテキサスA&M大学がこの分野の一大拠点であることを知り、留学を目指す。
・ただ、野球漬けの毎日で、勉強は××だったので、英語はよくわからなかった。
・しかし、井上たかひこさん(40歳を過ぎてから脱サラしテキサスA&M大学に留学した方)の本を読んで勇気づけられた。
・それで、アメリカに飛び込んでみた。
・しかし、英語が・・・
・何とか食い下がって、大学院に入学。夢中で取り組む。

もちろん、この本には、調査での人間模様ややや専門的な船の構造についての部分など、いろいろなことが書いてあります。

それはそれで興味深いです。

しかし、言葉・語学・教育などに関心がある当方としては、語学の面に目が向きます。

山舩さんの体験を見ると、やはり語学上達の鍵は必要性(動機)なのですね。

いままでに言い尽くされていることかもしれませんが、大きな要因であることは間違いないです。

この分野を学びたい、このアメリカの大学で過ごしたいという思いがあったわけです。

でも、先生が何を言っているかわからない・・・

何とかしなければ、この先、道が開けない・・・

という状況にあって、必死に勉強するので、実力がついていくということです。

日本人は語学が上手ではないと思っている人は多いと思いますが、そして、それが本当なら、それにはいくつかの原因があると思いますが、何と言っても大きいのは、「切実な動機」不足なのだと思われます。

別に外国語(例えば英語)を話さなくても生活ができる、というのは素晴らしいことですが、そのような状況は、外国語(例えば英語)を話さなくては生活ができない、というような人に比べて、動機が弱くなるのですね。

さて、語学上達に必要なことを他に挙げるとしたら、好奇心(意欲)でしょうか。

山舩さんの文章から窺えるのは、文献を読んだりするのは大変だったけれども、知りたい内容をどんどん知ることができる(自分の世界が広がる)ということとして捉えることができ、その知りたいという好奇心と英語習得が同じ方向を向いていたから苦にはならなかったということですね。

さらにもう一つ。文章には書いていないのですが、野球をやっているときに培った「◯◯ができるようになるために、必死で努力を積み重ねる」という態度も語学習得を後押ししていると思いました。

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