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今井むつみ『英語独習法』岩波新書 を読んでみました。

今井むつみさんは、認知科学がご専門の方です。

(御本人のプロフィールはこちら→https://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/imailab/profile/)

題名は出版社の方が付けたのでしょうか。

「この本で独習すれば、できない英語ができるようになるのだ」と思う人が出てこないことを祈りたいと思います。

実はこの本の「全部」が役に立つのは

ビジネスあるいは論文を書くというようなとき、使い物になる英語力を身につけたい

という人です。

筆者も

「本書は主に、仕事の場でアウトプットできるレベル、すなわち自分の考えを的確・効果的に表現し、相手に伝えられるレベルの英語力を目指す人に向けて書かれている。」(15ページより引用)

と書いています。

つまり、主要な読者として想定しているのは、かなりの実力の持ち主なのですね。

では、そういう人でないと読んでも無駄なのか、というと、そうではなく、

主要読者に当てはまっていない人でも、参考にできるところはあるのではないかと思います。

自分が「著者が想定している主要読者ではない」と思ったら、全部を読もうとはせずに、つまんで読めばいいのです。

例えば、第5章、第6章は、コーパスを使って、その語の使い方をじっくり観察する方法について、「こんなふうに使うといいですよ」とレクチャーしてくれるところなのですが、ここは、

辞書を眺めて、いろいろな意味や使い方に目を通して「ああ、この語はこのように意味が広がってきたのだな、おもしろいな」と思ったり、さらに詳しい情報を得たくて、英英辞典を普段から見たりしているというような人

に効果的な部分なのだと思います。

(辞書を見るのが面倒くさいな・・・と思うような人では、この章を読み進められないと思います。)

また、197ページ以下の「探求実践篇」も、当初の主要対象読者向けレベルということになっています。(それなりに難しいです。)

主要対象読者ではなくても、この本から有益な情報を引き出せるとしたら、

①認知や習得理論を踏まえて、英語の特性について語っている部分
②著者の経験もふまえて、こうやってみたらどうでしょうと言っている部分

を読んで、自分の勉強に生かせないかと考える、という使い方をした場合でしょう。

①については、「人間は自分が目を向けた部分は見落としてしまう。だから、こういう点に注意しながら英語の学習をしていくのがよい」(←「こういう点」がどういう点なのかについては、実際に本を見てみてください)ということがこの本には書かれており、そこはどの人にとっても役立つものだと思います。

②については、「聞き取り」ができるようになるには何が必要か、リスニングとライティングはどちらを優先させるべきか、多読の目的は何か、ということを述べている部分があり、役立つ情報になりうると思います。(ここは個人差もあるので、アドバイスが効く人と効かない人がいるとは思います。)

多くの人にとっては、「読んでみて、自分にも参考になりそうな部分があったら、取り入れてみる」という気持ちで読み進めていくのがちょうどいいのではないでしょうか。

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