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【短編小説】ジェットコースターに首を並べて発射

※今回はグロテスクな表現がありますので、苦手な方は回避してください。

俺は廃墟の遊園地が大好きだ。
たまにアニメや漫画やゲームに現れる、廃墟の遊園地。

あの、暗くて、おどろおどろしさと可憐な可愛いさが混ざり合った、退廃的で甘美で、不思議の入り口に迷い込みそうな、廃墟の遊園地。

今日俺は、テロを起こす。
この、都内で人気の遊園地で。
そして、呪われた遊園地にして、誰も近寄れなくさせ、見事廃墟の遊園地を作り出すのだ。

包丁に血が付着して刺しづらくなる為、一人につき一つのナイフで刺し殺す。
包丁10本持ってきた。
10人殺して、俺は捕まって死刑になるだろう。
だが、死刑になっても構わない。
俺には夢がある。
廃墟の遊園地を、大好きな廃墟の遊園地を、この手で、この手で作り出す。
その為には死刑になっても構わない。

「たとえ何人死んだとしても遊園地を廃墟にしてはいけない」という法律なんて無いんだろ?
「沢山殺した人を死刑にする」なんて法律、容易い御用だぜ。
俺は俺の命より、俺が後世に残す作品の方が大切なんだ。

決行当日。
ジェットコースターで動いている最中に、全員殺すという計画だ。
ジェットコースターに生首を並べて発射。
そう考えると笑えてくる。
だが、包丁で心臓を刺すんだ、生首には出来ない。
そこは残念だが、しかし、ジェットコースターは最高のステージだ。
死体だけが乗っているジェットコースターが、高速で駆け上がり、落下していく。
なんて素敵なんだ。
まあ、俺も乗ってるから死体だけじゃないのだが、死体ジェットコースターをこの世で俺だけが体験出来る、それも最高に幸せなんだ。

たまたま一番前の席になる。
スタッフがレバーを下ろし、膝にガードがかかり、体は固定される。
だが俺は、固定される時に、こっそりと靴を挟んで置いた。
これにより鍵がかからず、発車した後にレバーを上げられる算段だ。
そして、まず隣の人を殺し、後ろによじ登りながら一人一人殺していくんだ。

運行、スタート。
文字通り、地獄行きの列車だ。
ゆっくりと上に登っていく列車。
スタッフの目から離れた。
それがわかり、まずは隣の人の心臓目掛けて包丁で思いっきり刺す。
血が飛び出て見事成功。何度もイメージしていた姿がそこに存在して興奮する。
後ろを振り返り、包丁を手にした俺を見て、まだ落下してないのに叫ぶ男女二人。あはははは。
更に後ろに乗っている客にも、俺の姿が見えているようで、なんだか声が聞こえる。
そして、男女の心臓を一つづつブッ刺す。
グチャア!ズチャア!
悲鳴が聴こえる。
その悲鳴に、別の種類の悲鳴が混ざる。
そう、ジェットコースターは落下を始めた。
俺は列車にしがみつき、もう一段階後ろの男と男をぶっ刺す。
色々な悲鳴の混ざった音。
この音が快楽で殺人や残酷行為がやめられない人もいっぱいいるんだろうな。
俺も中毒になりそうな音。
そしてもう一つ後ろに行こうとした時、その女にハサミで顔を刺され、姿勢を崩した隙に殴られ、俺は地面目掛けて落下を始めた。

バーンンンン!!!!!

俺の死体は、廃墟の遊園地となった。

どういう事か。
地面でグチャグチャになった俺の体目掛けて、幼稚園児くらいの子が走ってきて、体をバンバンと踏み付け、そして千切れた腕を持って飛行機のように動かした。
お母さんは近くにいないらしい。
すぐに別の誰かが救急車と警察を呼び、遊園地のスタッフらしき人が駆け寄ってきて、子供も捕まえられた。

俺の腕が飛行機となり園児に遊ばれている姿はスマホで撮影されSNSで拡散。
恐怖のグロ映像として、騒がれた。
その映像は、一部のマニアが熱狂的に観て、後世にまで残り続けた。
俺自体が、愛好家の居る、廃墟の遊園地そのものとなったのだ。

俺には葬式なんかいらない。
俺は永遠に残り続ける、廃墟の遊園地だ。
データの中に生きる俺の死体は、死んだまま、いつまでも生きつづけ、憎まれつづけ、愛されつづけたのだ。

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