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【短編小説】ルービックキューブる

自分をルービックキューブる人が居た。
頭の中が多様な色でガチャゴチャしていて、考え方も価値観も気持ちも滅茶苦茶に組み合わさって複雑になっている。
それを整理整頓する為に、人と話すわ、SNSを使うわ。
頭の中を綺麗な色に整える為だけに、全人生を費やしている。

僕はその脳に注射して、中に卵の黄身を入れた
その人は「ドクドクドクドク」と喋りだし、僕は「あ、よいしょ!お、よいしょ!」と手拍子を打つ。
DJが曲を最高潮に盛り上げる時みたいに、ドクドクドクドクがどんどん高音へとエスカレートして、そして「ビャクーーーーー!!!」。
最後もドクー!で言って欲しかったが、ビャクが来た。
その人の頭はみかんの皮みたいな不恰好な形で自然と剥かれて行き、脳味噌丸出しモードに。
その脳味噌はやっぱりルービックキューブってて、鮮やかだけど、とてもうるさい、色の嵐。
僕は「どれどれ」と触り、組み立てる。
ここを赤にしてから、ここを緑、一度緑に青が混ざってから、また緑にして青にする。
ルービックキューブが凄い得意な早技名人な訳ではないが、一応完成させる事は出来る。
そして、ルービックキューブってるその人の脳味噌も、無事完成。
最後にみかんの皮みたいになってる頭を上げてくっつけて銀座の文房具で買った接着剤をつけて頭部元通り!
やったー!!!

その人は、無事に、まともな、ハッキリ、キッチリ、落ち着いた、人となった。
注射器の先っぽを僕は舐めて、人助けしたあとの脳はうめー!と、朗らかな気分。
ああ、僕は君を愛してるよ。
にっこりしながら君の顔を見て笑った。
未来は輝き。
君は輝き。
僕は輝き。
ランランランランラン!

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