見出し画像

【ショートストーリー】男友達

高校時代,
「おまえ,ひょっとして俺のこと好きだろ」
って不意にあいつが言った。
「なんでわかるの」
って笑いあったけれど
その後意識することもなく,
私たちは普通に卒業した。

大学時代,
私に好きな人ができた時にあいつは
「おまえの好きなヤツって,
 カッコいいんだろうな。
 カッコ悪かったら許さないぞ」
と笑った。

社会人になって会った時,
たばこなんて吸い出すから
「ねぇ,前からこんなたばこ吸ってたっけ?」
って言ったら,
「おまえ,俺のこと何もわかってねーな!」
とふざけて首を絞められた。

そんなあいつから突然の電話。
思い出した風を装って
「あっ,そうそう,今度俺,結婚するんだよ」
びっくりしすぎて声が出ないのに
「…寂しい?」とたたみかける。
電話の向こうでにやりと笑う,
あいつの顔が目に浮かんだ。
だけどなぜか私は正直だった。
「うん,そうだね…」
そして思った。
(私の逃げ込む場所は,もうなくなるんだ)

私が失恋した時は黙って聞いてくれた。
私に恋人ができると
「俺をさしおいて」と少し妬いた。
私が恋人とけんかしても,
あいつは私の味方だった。

それでもいつだって”友達”を主張していた。
誰も気づいてない,あの頃の仲間たちも。
みんなで集まればただの私たち。

それでもあいつの存在そのものが
私を安心させていた。

でも今,自分一人で誰かを愛していく強い心を
持たなくてはいけない時がやってきた。

結婚おめでとう。
私は笑顔をつくれるだろうか…。

©2023 alice hanasaki

シリーズ紹介:前章的な物語👇🏻

シリーズ紹介:続編👇🏻

散文・詩のマガジンはコチラ ↑  

ショート・ストーリーのマガジンはコチラ ↑  

最後までお読みくださり,ありがとうございます!
他の散文・詩やショートストーリーも
読んでいただければ,もっともっと喜びます😊

この記事が参加している募集

#私の作品紹介

96,427件

応援していただけたら嬉しいです😊 よろしくお願いします❣️