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灰汁詰めのナヴォー

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小説っぽいなにかがあります
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#暴力

恐怖のチューイングガムお姉ちゃん

恐怖のチューイングガムお姉ちゃん

「七月、高温と高湿度、満員電車の中でマチェーテで二本持ち無双乱舞したい季節!クソ熱いせいで軽率暴力思考が抑えられねえ!でも懲役が嫌!死刑がもっと嫌!アクズメさん、なんとかして!」という幻聴が聞こえた。暑さのせいかな。

 おっしゃー任せろ。脊髄が凍るほどのこわい話を教えてやろうじゃないの。おれの実体験だぜ。

 僕がまだ幼稚園児だった頃の話だ。

 熱心のクリスチャンだった両親は僕を教会ゆかりの幼

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タピオ・カーン STRIKES AGAIN

タピオ・カーン STRIKES AGAIN

「これでOK?」「もう少し近づけた方がよくない?」

 ピンク縁眼鏡のケイミと黒いロン毛のラビ、二人の女子高生はカメラに向けて、頬がくっづくらいに顔を近づけ、手に持っているタピオカミルクティーとタピオカ冬瓜ティーのコップを合わせて乾杯するポースをとった。

「おっ、いい感じじゃない?」「じゃあ撮るね。せーのー」

「「イェーイ」」

 満点な笑顔をきめて、ケイミはBluetoothシャッターリモコ

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危険ピン

危険ピン

「女にしてはなかなかやるじゃねえか、ビッチ」

 中年サラリマンのカスヒロは鋲付きロッドに付いていた血を振り払い、目の前にしゃがんでいる女向かって言った。シートも吊り側もない殺風景な車内に、血まみれたスーツ姿の男女たちが床に倒れている。通勤時間のパージ車両にありふれた光景である。

 パージ車両、それは令和になっても解決できない痴漢問題と冤罪問題で煮えたぎていた市民の情緒をなだめるため、政府が考案

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ジ・エンド・オフ・コーン・ウォー③

ジ・エンド・オフ・コーン・ウォー③

「ハァー……ハァー……ハアー……畜生っ」

 麺棒男は右脇腹を抑え、テーブルを掴んで辛うじて立ち上がった。激闘の末、店長の女含めた二人の従業員を重金属麺棒で頭がべちゃんこになるまで叩き、タコスにしてやった。

 頭の裂傷から血が滴り、上半身に数か所に打撲痕が見られる。さっきの戦いでトマホークを模したヘラに裂けられた脇腹がやばい。出血とともに血中コーン濃度が下がり、麻薬コーン『トルナーダ』がもたらし

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ふたりはPre-cure【エピローグ】

ふたりはPre-cure【エピローグ】

 帰りの電車で、深友はスマホをいじる気力すらなく、ただ席にもたれ込み、Pre-cureの二人からもらった名刺を眺めて、今日起きたことを反芻していた。

『これでおれたちの任務は終了だ。お大事にな』

『ま、待ってください!鈴さ……あの女がまた来るって言ったよね?俺はこれからどうすればいいの?』

『現実的に言うなら、引っ越して、携帯番号もSNSアカウントも全部新しく作った方が良いだろう』

『そん

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