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助手席が大人気! タクシーの「お作法」

世界79ヶ国のビジネスパートナーに「お辞儀レッスン」をして以来、いつの間にか、出張に行く国の先々で、日本のビジネスエチケットレッスンを開催することになった私。
(お辞儀でめっちゃ感動されたお話はこちらから↓)


いまではサッとできるようになりましたが、当時の私は、レクチャーして!と気軽に言われても、それなりに準備が必要でした。

なので、本を読んで勉強したり、自分が新入社員だったころの研修を思い出したりして、日本のビジネスエチケットを復習しました。

「講師」として恥ずかしくないよう(笑)、彼らが楽しんで覚えてくれるように、自分なりに工夫して、レッスンに臨んでいました。


特にバルセロナには、しょっちゅう出張していたこともあり、たくさんの人たちに日本のことを知ってもらえました。

バルセロナのオフィスは、500名くらいの人が働いているのですが、なんといっても特徴的なのは、「ダイバーシティ(多様性)の象徴」だということです。

国や肌の色、宗教、アイデンティティを問わず、さまざまな人たちが働いていました。

そのため、バルセロナオフィスは、レッスンをするにはもってこいの環境でした。

レッスンの参加は自由です。
少数の方がロールプレイや気軽にコミュニケーションをしやすいので、定員は12名と決めていました。

が、よほどニッポンの文化やビジネスエチケットに興味があるのか、就業時間中にも関わらず、いつも満席御礼でした。

いまや定番メニューとなった「お辞儀と名刺交換」だけではなく、色んなレッスンをしました。


今回は、タクシーの上座・下座についてお話します。


助手席に座る理由

「みなさん、このタクシーの図を見てください。
みなさんは、これから「上司」「お客様」と3人でタクシーに乗ります。
さて、あなたならどこに座りますか
次の3つの中から選んでください。」

 1.助手席
 2.運転手の後ろの席
 3.助手席の後ろの席

ほぼ全員、1番の助手席でした。
(おっ!日本とおんなじ。海外でもタクシーでは上座と下座があるのね~。)

私は、ちょっぴり驚きました。

「わっ、日本とおなじですね!
やっぱり1番下のポジションの人が助手席に座りますよね~。」

と、私が言うと、みんな顔をしかめたり首を横に振ったりしてます。

(あれ~? じゃ、なんで?)

「あれ? 別の理由ですか?
なぜ、あなたたちは、助手席に座るんでしょう?
アレックスさん(スペイン人:前回パリージョ(つまようじ)探しに大活躍したイケメンヒーロー)、なぜですか?


景色がいいから。


WHAT? なに~ぃ?」


思わず聞き返してしまいましたが、みんなうなずいています。

イブ(コートジボワール人)、イブラヒム(アラブ人)、ヤニック(フランス人)、ルチアーノ(アルゼンチン人)が、みんな顔を見合わせて


「当たり前だよね~♪」

と、言っています。

若干、めまいがする私・・。
そこで、日本のビジネスパーソンが助手席に座る理由を伝えました。

「日本には上座下座というものがあります。
お客様や取引先、上司など自分よりポジションが上の方は上座、あなた方は下座に座ります。
タクシーの中だけではなく、会議室やレストランなど、そこにいる人のポジションによって、座るべき場所が決まっています。
この場合は、お客様が最高の席(運転手の後ろ)、次が上司(運転手の斜め後ろ)、そしてあなたたちは助手席に座ります。」

みんな、タクシーの中で「座り分け」があることに驚いています。
私は解説をつづけます。

「助手席に座るのは主に3つの理由があります。
1番の理由は、助手席が一番安全でないからです。
クルマの座席は、運転手の後ろが1番安全です。
次に安全なのは運転手の斜め後ろ。
大切なお客様の安全を守るために、お客様には運転手の後ろに座っていただきます。」


WHAT? なに~ぃ?」


今度は、彼らが驚愕しています。
日本の「上座・下座」というのは、ときには自分の命をかけるものであることが、彼らにとっては、カルチャーショックのようです。

「2番目の理由は、運転手にナビゲーションしてあげられるから。
そして3番目の理由は、運転手の隣の席なので、支払いがスムーズにできるから。」

みんな、さらに納得がいかない表情です。
イブが私に質問してきました。

「でもさ、支払いって上司がするもんじゃね?
だって上司の方がリッチじゃん。」


んぐぐっ。
たしかに上司の方が高給取りではあるんだけど・・。


支払いは誰がする?

ここで私は、タクシーなど高額過ぎない移動に関しては、日本では上司ではなく、部下が支払いを立て替えて、後日、経費精算するということを説明しました。

海外の会社の多くは、コーポレートカード(会社名義のクレジットカード)を従業員が持つので、リッチな上司が支払おうが、リッチでない部下が支払おうが、「自分のお金を立て替えることはほとんどない」ですが、それでも上司が払うことが多いようです。

日本でもコーポレートカードを持つ会社は増えていますが、現金であれ、コーポレートカードであれ、部下が支払いをする慣習になっていることが多いのではないかと思います。


単なる「タクシーの上座・下座」のレクチャーから、話がどんどん派生して、活発なディスカッションに発展し、新たな学びを得るのが、異文化交流の醍醐味です。
(レッスンする方は大変ですが・・。)

レッスンを終え、私は、「本日のおさらい」として、再度質問しました。

「みなさん、上座・下座については理解していただけましたね? 
では、おさらいです。
みなさんは、「上司」「お客様」と3人でこれからタクシーに乗ります。
お客様と上司には、どこに座ってもらいますか?
そして、あなたは、どこに座りますか?」


「お客さんとは、そこまで親しくないから、お客さんが助手席!
そして僕は運転手の後ろ!」


「やっぱり上司が支払うべきだから、上司が助手席で僕は運転手の後ろだな、
ふっふっふっ。」


もはや、誰も助手席には座りたがりません
ダメだこりゃ(笑)


でもまぁ、タクシーの座る場所には意味があることは、しっかり理解してもらったから、まっいいか!


次回は、ビジネスの場面で海外の人たちと交流するために欠かせない、
アイスブレイクの「お作法」について、お話します。



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