【後編-4 イスラム教:ラマダンってなぁに?】あなたの大切な人の「アイデンティティ」を守る「お食事の要件」
宗教のダイエタリー リクワイアメント、つまり「お食事の要件」のお話を、ご紹介しています。
前回は、イスラム教のハラムとハラルについて、ご紹介しました。
今回は、イスラム教のお作法とラマダン(断食)について、「お食事の要件」の観点からお話します。
直接、イスラム教を信仰している人たちと関わりのないあなたも、イスラム教を信仰する人たちの国に旅行をするかも、そこでムスリムのお友達ができるかも、素敵な恋をするかも!など、楽しい妄想をしながら、読み進めていただければ、嬉しいです。
※雑談ネタとしても、どうぞ (^_-)-☆
(ハラムとハラルってなぁに?イスラム教の「お食事の要件」【ハラム・ハラム編】はこちら↓)
右手のお作法
まず、食事のお作法からご紹介します。
イスラム教徒ではない人は、これに従わなけれなならないことは、滅多にありませんが、念のための知識としてご紹介します。
後日、お話する予定のヒンドゥー教が、左手は不浄の手とされているので、混同されがちですが、イスラム教で右手を使うのは、「左手は不浄」という定義が明確にあるわけではないようです。
私が、イスラム教のビジネスパートナーから聞いた話では、
右手を左手より敬いましょう
と、イスラム教の預言者ムハンマドの言葉がおさめられている、ハディースに書かれているから、というのが理由だそうです。
ハディースというのは、コーランに次ぐ、イスラム教の第2の聖典だそうです。
ただ、排泄や不純物を取り除くことは左手で行いますので、そういう視点で、「不浄の手」と解釈されているのかも知れません。
◆お食事のお作法 ◆
● 右手で食事をするときは、親指、人差し指、中指の3本の指で食べます
● 食べものを口に運ぶときは、持ってきた指を口の中で、やさしく持ち上げるようにしましょう
● 食事中は、口を閉じて余計な音を立てないようにしましょう
ただ、すべてのお食事が右手で食べられるわけではないですよね?
たとえばラーメンやステーキ、これを右手のみで食べるのは至難の業ではないかと思います。
実際、私の周りのイスラム教のビジネスパートナーたちは、ナイフやフォーク、お箸を使って、右手でも左手でもお食事をしています。
そして、おやつも、特に右手にこだわって食べているわけではなさそうです。
ですので、この右手のお作法は、食事のメニューや個人の信仰の厚さの違いなどにも依存するのではないかと思います。
ラマダン
■ ラマダンってなぁに? ■
ラマダンとは、イスラム教の人たちが「断食をする月」をいいます。
この「月」とは、イスラム教の9番目の月をいいますが、いま世界標準で使用している暦とは異なるため、ラマダン月は、毎年変わります。
ちなみに、2021年のラマダンは
4月12日~5月11日
と発表されています。
■ ラマダンですること・目的 ■
健康な成人のイスラム教徒は、夜明けから夕暮れまで断食をします。
ただし、思春期に達していない子ども、妊婦、授乳中の母親、高齢者、肉体的にも精神的にも断食ができない人、旅行中の人は断食する必要はない、とされているようです。
断食を礼拝の行為として、また神に近づく機会として、また優しさを必要としている人たちに対して、より思いやるため、とされています。
また、忍耐力を身につけ、悪い習慣を断ち切るための方法のひとつとしても、断食を行うようです。
ラマダンでは、不道徳な行為や怒りなども禁じられるそうですが、目的を理解すれば、その理由も納得できます。
■ ラマダンは絶食ではない ■
ラマダンは、約30日の間、まったく飲み食いしないわけではありません。
断食ですが、絶食ではないのです。
ラマダンの間、イスラム教徒は早起きして、スフールといわれる夜明け前の食事(朝食的な位置付け)をとります。
夜明けから日没までの間は、水もガムなども禁止です。
水で口をすすぐことは許されていますが、飲んでしまわないように気をつける必要があります。
このように、水分補給もできないことから、スフールは、果物やヨーグルトなど、腹持ちがよく、水分の多いものを食べるそうです。
こちらは一例ですが、ヘルシーでとっても豪華!
日没後は、食事をしても良いのですが、胃をビックリさせないよう、最初に栄養価の高いデーツの実(↓)を食べてから、イフタール(夕食的な位置づけ)という豪華な食事をします。
イフタールはもちろん、ハラル食品ですが、何をどれだけ食べても良いそうです。
イフタールも、豪勢なごちそうのオンパレード!
夜にたくさん食べるので、ラマダンの時期は、痩せるどころか、かえって太ってしまう人もいるとか!
ラマダンとラマダンの間で
以前、私の席の右隣りは、イスラム教の人でした。
そして、私の席の左隣りも、イスラム教の人でした!
右がユースフ(イエメン人)、左がラスール(おなじくイエメン人)。
2人とも、イスラム教を信仰しているので、ラマダンを必ず行っていました。
ラマダンとラマダンの間で、1日の半分以上を過ごす私。
ラマダンに入ったら、私は、どう振る舞うといいのか、「席の間にいる者」としてのお作法はあるのか、ユースフに聞いてみました。
「ユースフ、あなたたちがラマダン中は、私はなにを気をつければいい?
たとえば、席で飲食してほしくない、とか、なにかリクエストはある?」
「akkie、気にしなくていいから、普通に食べたいもの食べて!
気にされると、ボクらも気になっちゃうからさ☆」
な~んだ、そんなに気を遣わなくていいのね~と、ちょっと安心した私。
そして、ラマダンに入りました。
ユースフのアドバイス(?)通り、遠慮なく、ラマダン中の彼らの席の間で、私は好きなものを食べ、好きなものを飲んでいました。
でも、ユースフもラスールも、本当に気にしていない様子。
お腹が空くことには、慣れっこのようです。
ただ、仕事の集中力は途絶えがちになるようで、外に出て気晴らしをしたり、ゲームをしたり、ときにはお昼寝をしたり。
仕事中ですが、ラマダン中であることが分かっている私たちも、なかなかおおらかで
「そりゃお腹が空いたら、仕事もパフォーマンス落ちるから仕方ないよね~☆」
と、彼らのラマダン明けを、一緒に心待ちにしていました。
試練!ラマダン明けパーティ
そして迎えたラマダン明け
2人とも早めに仕事を切り上げて、モスクにお祈りとお祝いにでかけます。
モスクでのお祈りとお祝いが終わったら、私たち(非イスラム教)と合流して、ラマダン明けパーティの始まりです。
ラマダン明け、おめでとう~♪
山ほどの料理を飲み食いし、歌って踊って大騒ぎ!
一次会では、デザートケーキまで食べたのに、2人のラマダンでの欲求不満は、まだまだ解消しないため、アイスクリームやらパフェやら、二次会三次会へとハシゴする私たち。
彼らはお酒を飲まないので、デザートのはしごになるのがお決まりコースなのです。
このパーティーには、ルールがあります。
彼ら2人のどちらかが、満腹でギブアップするまで、非イスラム教の私たちは、彼らとおなじ食べものを食べ続けなければならない..いま思えばかなり無茶なルールです。(笑)
※彼ら2人と、同僚である私たちが、勝手に企画したイベントなので、イスラム教とは関係ありません。
彼ら2人にとっては、断食明けのお祭りですが、私たちにとっては、エンドレスなドカ食いの試練に耐えるという、ある意味苦行、なんともシュールなラマダン明けパーティで、夜が更けるのでした。
いかがでしたか?
なが~くなりましたが、イスラム教の人たちの、「お食事の要件」、いつかあなたのお役に立てることがあったら、嬉しく思います。
次回は、ちょっと一息ということで、周りが凍りついた、お食事やらかしエピソードを、お話します。
そして、あなたがゲストをおもてなしすることになったら、役に立つ・・かも知れませんので、来たるべき日にそなえ、一気に参照できるよう、「お食事の要件」をマガジンにまとめておきますね☆
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