【前編】あなたの大切な人の「アイデンティティ」を守る「お食事の要件」とは?
みなさん、お正月はいかがお過ごしでしたか?
美味しいものをたくさん食べて、ゆ~っくりされてましたか?
それとも、お正月関係なく、忙しい日々を過ごされましたか?
先日は、あなたの大切な人を、食事にお招きするときの「お作法」として、ダイエタリー リクワイアメント、つまり「お食事の要件5つ」をご紹介しました。
そして、5つの中でも、超重要な要件である、食材アレルギーについて、トホホな私の実体験とともに、お話しました。
特に、アレルギーをお持ちのゲストをお招きするときは、食材そのものだけではなく、調理器具や調理の過程でも、クロス コンタミネーション(交差汚染)が起こらないように、配慮してあげましょう。
(おおみそかのパリでの惨事はこちら↓)
この「お食事の要件」を守ることが、あなたや、あなたのゲストの命やアイデンティティ、信条を守ることにもなります。
いつか、あなたがゲストをおもてなしするときに、もしかしたら役に立つ日がくる・・かも知れませんので、来たるべき日にそなえ、一気に参照できるよう、「お食事の要件」をマガジンにまとめます。
◆ お食事に関する5つの要件 ◆
1)アレルギー
2)宗教上の理由
・ハラル(イスラム教)、コーシャ(ユダヤ教)など
3)個人のポリシー
・ヴィーガン、ベジタリアンなど
4)健康上の理由
・セリアック病、乳糖不耐症、糖尿病、妊婦
5)好き嫌い
今回は、ふたつめの要件、宗教から見た「お食事の要件」について、お話します。
こちら、ひょっとしたら日本では、話題に上ることが少ないかもしれません。
クリスマスを祝い、おおみそかに除夜の鐘を聞いて、新年には神社に初もうでをする、私たち日本人にとって、宗教による「お食事の要件」が、あまり身近にないから、なのかも知れません。
しかし!
グローバルビジネスや異文化交流の場では、このふたつめの要件も、ぜ~ったいに外せないものです。
宗教は、その人に寄り添う、大切な信仰心、そしてアイデンティティ。
あなたのゲストにとって、大切なものを、むやみに傷つけることのないよう、まずは、ふたつの基本を覚えておいていただけたら、幸いです。
● 宗教にも「お食事の要件」があり、 それは宗教や宗派によって異なる
● 「クロス コンタミネーション」(交差汚染)にも注意!
宗教から見た「お食事の要件」のお話は、長くなってしまいそうなので、【前編】【後編(宗教ごとに複数回)】に分けて、お届けします。
宗教の世界分布図
国際機関の世界経済フォーラムの記事では、2019年の、宗教の世界分布図について、紹介しています。
この図をみるだけでも、メジャーな宗教である、仏教、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、ヒンズー教だけでも、世界各地に分布しています。
12の世界の主な宗教
そして、 米メディアのNBCから発展した、百科事典、辞書、統計、歴史的記録などの情報が一度に参照できる、infopleaseというポータルサイトによると、
● 世界の宗教信仰者は総人口の83%を占めている
※世界の総人口は、77億9,500万人
● そのうち、大部分は、次の12の宗教に属している(順不同)
仏教、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥー教、神道、道教、儒教、ジャイナ教、シーク教、バハイ教、ゾロアスター教
これらの宗教は、「宗派」とよばれるものに、さらに派生していきますし、ここに書かれた12の宗教以外の宗教を信仰している人たちもいます。
宗教からみた「お食事の要件」
そして、大切なのは、これらの中には、「食の伝統」や「お食事の要件」をもつ宗教がある、ということです。
「食の伝統」や「お食事の要件」を守ることが、彼らにとっては、その人の信仰している宗教や神への信仰心や自制心を示す、証明となります。
このような理由から、あなたが、ゲストの信仰心に賛同しているか否かにかかわらず、そしてあなた自身に、宗教への信仰があるか否かにかかわらず、ゲストが食事を通じて証明しようとしている、彼らの宗教や神への信仰心を、傷つけることのないように、気を配ることが、エチケットとして求められるのです。
なお、「食の伝統」や「お食事の要件」は、厳格に守る人もいれば、一部しか守らないけれど、その一部に強いこだわりをもつ人もいます。
そして、両親の信仰心は厚くても、ご本人はそれほどでもない・・など、信仰心の度合いは、極めて個人に依存します。
以前、アイスブレイクの「お作法」の記事で、を宗教を雑談の話題にするのは避けましょうね~と、お話しました。
でも、あなたが、そのゲストとお食事をともにする場合、食事の観点から、宗教上食べないものや、「お食事の要件」を、どの程度厳格に守っているかについて、聞いておいた方が良いでしょう。
やはり、クロス コンタミネーションに注意!
あなたのゲストが、厳格忠実に、自身の信仰する宗教の「食の伝統」と「お食事の要件」を守っている場合、クロス コンタミネーションにも配慮しましょう。
クロス コンタミネーションとは、日本語訳で「交差汚染」。
たとえば調理をするときに、まな板や包丁など、おなじ調理器具を使うことにより、ナマのお魚やお肉を調理したときの菌や寄生虫が、そのあとに調理する野菜などの食材にうつって、汚染されてしまうことをいいます。
重篤なアレルギーを持っている人にとっては、命取りになりかねないことを、前回紹介しましたが、宗教でも注意が必要です。
宗教においての交差汚染の例を挙げます。
☆☆☆
宗教上の理由で、豚肉NGなゲストと、お食事をすることになったあなた。
そのゲストのために、巷でとても美味しいと評判の、レストランでコース料理をおもてなしする予定です。
予約するときに、レストランの人に
「宗教上、豚肉NGのゲストがいるので、豚肉や豚肉のエキスのお食事は、出さないでくださいね☆」
と、伝えているので、準備もバッチリ!
当日、あなたの要望通り、豚肉や豚肉のエキスが入っていないお料理が、ゲストに運ばれました。
噂通りの美味しい料理に、ゲストも大満足で、ホッとするあなた。
帰り際にふと、調理場を見ると、シェフたちは、豚肉を調理した包丁やまな板で、別の食材を調理していました。
不安に思ったあなたは、レストランの人に、
「あの~、私のゲストのおもてなし料理を調理するときに、調理器具を分けてくださいましたか?」
と、聞いてみました。
すると、レストランの人は
「えっ、特に分けていませんけど、なにか不都合でも?」
と、答えました。
あなたのゲストは、豚肉NGにもかかわらず、間接的に豚肉を口にしてしまったのです・・。(おしまい)
☆☆☆
交差汚染は、このように、食材アレルギーを持つ人のために気をつける必要があるだけではなく、宗教上NGの食材を持つ人にも、十分な配慮が必要です。
大切なゲストのアイデンティティを守るために、そしてお食事の場を最高のものにするために、宗教上NGの食材と、交差汚染には、十分注意して欲しい旨のリクエストを、レストラン側に必ず伝えておきましょう。
どんなに美味しいと評判のレストランでも、交差汚染に対応していない、または、なにかしらの事情で対応できないレストランには、宗教上の「お食事の要件」を持つゲストは、お連れしない、という判断が、確実にゲストのアイデンティティを守ります。
ご自身で手料理をふるまう場合も、同様に、食材の選別だけではなく、クロス コンタミネーションにも配慮して、おもてなしできると、あなたもゲストも、お互いに安心かと思います。
いかがでしたか?
なぜ、あなたがゲストをおもてなしするときに、その人の信仰している宗教に気を配り、「食材の選択」と「調理方法の選択」をする必要があるのか?
その大切さをご理解いただけたら、嬉しいです。
次回からは、それぞれの宗教の「お食事の要件」を見ていきましょう!
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