秋帽子

日本、東京  文机探検家[desk-top explorer] 2020年5月、東京都…

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日本、東京  文机探検家[desk-top explorer] 2020年5月、東京都小金井市に開設した秋帽子文庫を拠点に探検中  たまに社会人教育(ビジネス実務法務)、知的財産管理技能士会研修委員

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【トンネルに雨は降らない】第1回_ブンブンの家電販売

トンネルに雨は降らない 秋帽子(著)第1部 風信子石の手紙 第1章 朝日 1 最後の一人1-1 ブンブンの家電販売 彼は手紙を読み終え、丁寧に折りたたんだ。真っ赤なビロードの生地に、溶かした銀で文面を記し、縁取りに褐色や青の小さな宝石を配したものだ。  宝石は、金剛石(ダイアモンド)にそっくりの輝きを放っている。屈折率も光の分散の強さも、宝石の王によく似ているが、同じくらい希少で、もっと、ずっと古いものだ。南方の大陸で発見された、現存する最古の鉱物である。  二十億年の、その

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    • ワトソンが見た「束の間の夢」(遠慮なくネタバレ満載版)

      森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』の発見報告 ☆予めお断りしておきますが、長いです。スマホ片手に気軽に読める前稿「なるべくネタバレ回避版」もどうぞ。 ☆注記は末尾にまとめてあります。注8以降は、本文に戻るのに利用できる小見出しを付けました。目次から小見出しを選んで本文に戻ってください。 (1)『凱旋』ついに刊行! 2024年1月、森見登美彦さん待望の新刊『シャーロック・ホームズの凱旋』(以下、『凱旋』または「本作」と略記する)が刊行されました。  本作の原型である

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      • ワトソンが見た「束の間の夢」(なるべくネタバレ回避版)

         一袋の粉末スープに注ぐ湯は、マグカップの半分くらいが適量。満タンにしてはいけません。秋帽子です。  本稿および次稿では、「蔵書より」特別編として、2024年1月に単行本化された森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』(以下、本作または『凱旋』と略記)を取り上げます。  まず本稿「なるべくネタバレ回避版」では、本作の注目ポイントをかいつまんでご紹介。さらに掘り下げた内容は、次稿「遠慮なくネタバレ満載版」にてご報告します。  というか、本作には、書いておきたいことがありすぎ

        • 穴掘り探検ゲーム『テラリア』(Terraria)の背景世界

          「Terraria Lore」:開発者から8周年記念のプレゼント 2024年1月27日 秋帽子 テラリアはいい! 現在の地球で最も成功している陸棲の生き物は、アリだそうです。彼らのバイオマス総量は、陸棲の哺乳類と鳥類を合わせたよりも多いのだとか。  皆さんもご存じのとおり、アリたちは地下に長いトンネルを掘り、倉庫や育児室を設け、1億年にも及ぶ長い繁栄の時代を築いてきました。  しかし、私たち人類も負けてはいません。  この世界のどこかに、今日も夜な夜な地下に潜り、ツルハシ

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        【トンネルに雨は降らない】第1回_ブンブンの家電販売

          【「トンネル」探索ガイド】トンネル世界と12の人類

          トンネル世界と12の人類〈語り部〉〈トンネル〉〈ガイド〉 語り部:田宮 伴(Bann Tamiya) 万和8年11月8日公開(前回の記事へのリンク) トンネル世界 ブンブンたちの暮らしているトンネル世界は、我々の暮らす地上世界と同じ環境に存在している。  つまり、大気と大陸と海があって、生き物がいる世界だ。人類も、その一員として生存している。  太陽は一つだけで、春夏秋冬は毎年同じように順番に巡ってくる(太陽が三つある世界では、必ずしもそうとは限らないものだ)。  しか

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          【「トンネル」探索ガイド】トンネル世界と12の人類

          【動画公開情報】『AIで絵を描く時代の知財技能』が公開されました

          こんにちは。長濱秀文の個人プロジェクト、秋帽子です。 久しぶりに教材動画を制作しましたので、ご紹介します。 社会人向け学習プラットフォーム「マイラ」で公開中の、『AIで絵を描く時代の知財技能』という動画です。 「知的財産管理技能」という選択肢非エンジニア人材のDX対応 タイトルにもあるように、「知的財産」に関する技能を題材にしたコースです。 動画の提供先である「マイラ」というプラットフォームでは、特に近年注目度の高いDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成という

          【動画公開情報】『AIで絵を描く時代の知財技能』が公開されました

          [秋帽子文庫]蔵書より_忘れられた帝国

          ちょっとすみませんごめんなさい。夏が来るの早くないですか?毎日の仕事場からの帰り道、フェイスタオル3本を使いながら、ようやく家までたどり着いています。 どうもお久しぶりです。もう2022年の7月になりましたか。ずっと『トンネル』の続きを作ってます。楽しい時間が過ぎるのは早いですね。 しばらく記事を公開していない間に、noteのエディタが変わってしまいました。新しい仕様を探りながら、この記事を書いています。秋帽子です。 一昨日のことです。 ツイッターから通知が来まして…。何や

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          【トンネル】ブンブン一行がクッキーになりました♪【新しいバナー画像】

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          「王国と文明」サービス終了に寄せて

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          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ_第3問 幻獣自薦

          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ第3問 幻獣自薦  秋帽子プロジェクト  ハーイ、今回も始まりました!三択クイズのコーナーでございます。  進行役は私、“出題アナ”こと麻里杏奈(あさり・あんな)です。  第2問では、『金字塔』の主人公である浩一くんの仲間たち、美幌さん、池田氏、東川の三人組について出題しました。  いやいや、相当に変な人々でしたねー。何、アンタほどじゃないって?失敬なー。その視線はなんですか?あっ、今日の私のTシャツですね。これはですねー。 “

          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ_第3問 幻獣自薦

          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ_第2問 4人は1つ、切っても切れぬ

          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ第2問 4人は1つ、切っても切れぬ  秋帽子プロジェクト  ハーイ、今回も始まりました!三択クイズのコーナーでございます。  進行役は私、“出題アナ”こと麻里杏奈(あさり・あんな)です。  第1問では、不思議な建造物《塔》について出題しました。  いやいや、相当に変な物体でしたねー。  選択肢の一つに挙げた『幽霊塔』も随分と奇妙な建物でした。いくらランカスター家の末裔とはいえ、3階建ての洋館に、直径3メートルもある大時計を取り付

          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ_第2問 4人は1つ、切っても切れぬ

          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ_第1問 不思議な建造物《塔》とは?

          “出題アナ”杏奈の『金字塔』まるわかりクイズ第1問 不思議な建造物《塔》とは?  秋帽子プロジェクト  ハーイ、始まりました!三択クイズのコーナーでございます。  進行役は私、“出題アナ”こと麻里杏奈(あさり・あんな)です。  突然、何が始まったのかって?  あのねえ、聞いてくださいよ。  書記局という、頭の固―い連中がいるんですよ。あいつらがね、 「今度、『金字塔』の新作が公開されますんで、それに合わせて、ちょっとした解説コラムみたいなものをやりたいんです。ダイアナさん

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          エフとキャベツの帽子_9.予告編

          『金字塔』特別編 エフとキャベツの帽子  秋帽子 (前回「8.謎解き大会」より続く / 第1回はこちら) 9.予告編 両側に別れた謎解き人が、それぞれの州浜を押し出す。  青方の州浜には、船。灯台。  海鳥が首をもたげて嘴を開くと、空電のような音が響いた。パトリシアだ。  封印が解かれると、垂直に伸びた石碑が動き出し、碑文の文字が浮かび上がった。  赤方の州浜には、岩。砂浜の上には、一輪の菊花。  風に乗って、琴の音が聞こえて来る。  岩の上に生えた松の枝が伸びてゆく。

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          エフとキャベツの帽子_8.謎解き大会

          『金字塔』特別編 エフとキャベツの帽子  秋帽子 (前回「7.未来への扉」より続く / 第1回はこちら) 8.謎解き大会 こうして、牽牛が川を渡るように、東川は扉の向こうに去ってしまった。  カレンダーは、はや6月となり、いよいよ《塔》の紀元祭の季節がやってきた。  夏至の日に至る10日間ほどが祭りの期間だ。この年の紀元祭は、12年ごとに巡ってくる、特別なお祭りである。6月10日に、招待客を《塔》へと導く偽扉が開かれ、6月21日には、「謎掛けの殿堂」(ナゾラー・ホール)で大

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          エフとキャベツの帽子_7.未来への扉

          『金字塔』特別編 エフとキャベツの帽子  秋帽子 (前回「6.ダイヤモンドの輝き」より続く / 第1回はこちら) 7.未来への扉 妨害が止んだことを確認した東川たちは、《塔》の頂へと向かった。  戦士たちは、二体の《四法王》をけん制するように、東川の周りに円陣を組む。秘められた力の大きさを示すように、全身を覆う鎧兜がキラキラと輝いている。  やがて東川は、《塔》の15メートルほど上空に黄金の光を放ち、バスケットボールのコートくらいある、大きな図像を描き始めた。  扉?…いや

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          エフとキャベツの帽子_6.ダイヤモンドの輝き

          『金字塔』特別編 エフとキャベツの帽子  秋帽子 (前回「5.カレー屋と王様」より続く / 第1回はこちら) 6.ダイヤモンドの輝き「ごちそうさまでした!」  エフたちは、ジョーンズにシラノを返してカレー店を出た。会計を済ませたジョーンズは、トイレ借りるよ、と断って、店の中に戻ってゆく。  外に出ると、すでに日は沈んでいた。浩一くんと恵庭さんは、タクシーを拾おうと大通りに出る。エフは、浩一くんの肩に乗り、ふと空を見上げた。 「あっ…。」  星空を覆い隠すように浮かぶ、巨大な

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