マガジンのカバー画像

読書感想

30
本の感想や書評を書いた記事です。主に小説について書いています。一部のノウハウや個人的な話は有料にさせていただいています
運営しているクリエイター

2022年10月の記事一覧

島木健作『煙』読書感想 古本と生活

島木健作『煙』読書感想 古本と生活

この小説は、古本の競りに出かけた青年が、人が持つ生活への執着心に驚きながら、働くことについて考えを深めていく話です。

主人公の青年である耕吉は、古本屋を営む叔父と生活していましたが、自分でお金を稼いでいないことに負い目を感じていました。ただ本は好きで、他の人とは一風違った本の良さが分かることに対し自信がありました。あるとき古本の競り市が開かれることを知り、耕吉が出かけていくシーンから話が始まりま

もっとみる
岡本かの子『金魚撩乱』読書感想

岡本かの子『金魚撩乱』読書感想

この話は、美しく成長した幼なじみの真佐子に挑発され、華やかで目を引く金魚を作りだそうと、一心不乱に努力をする青年の話です。

小説の短編集を図書館で借りてきたんですが、その中にあった岡本かの子さんの『金魚撩乱(きんぎょりょうらん)』について、ネタバレ含みつつ考えてみたいと思います。

この小説は、もともと金魚を売り生計を立てている家に生まれた青年が主人公であり、幼なじみの女性にあおられ、金魚の交配

もっとみる
梶井基次郎『冬の蠅』読書感想

梶井基次郎『冬の蠅』読書感想

この作品は、冬の蠅と自分を重ね合わせながら、透明感のある文章で倦怠感を描いた話です。

梶井基次郎は『檸檬』という小説が有名ですが、今回は『冬の蠅(はえ)』という檸檬にも通じる小説について、ネタバレ含みつつ考えてみたいと思います。

この小説は、患っていた病気と、将来への不安からくる倦怠感や焦りを、部屋にいた冬の蠅に自分を投影し描いた作品です。

作者の梶井基次郎は、昭和時代には治らない病気とされ

もっとみる