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白状が折られた事故を受けて見えて来た、「交通弱者」という障害者の交通面での立場の弱さ。

こんにちは、翼祈(たすき)です。
皆さんは、「交通弱者」という言葉をご存知ですか?「交通弱者」とは、障害者や高齢者、子どもといった交通手段に制約がある人を指します。

私も聴覚障害があることで「交通弱者」だと思いますが、私にとってもショッキングの話を最近知りました。

2023年8月に、東京都豊島区盲人福祉協会長で目が見えない武井悦子さんは、仕事の帰りに歩道を歩いていると、正面からスピードを出して走行してきた自転車が白杖にぶつかり、車輪に巻き込まれて折れる事故に見舞われました。自転車は元々、車道通行が原則だと法律で定められていますが、歩道を自転車が走行する事案が相変わらず起こっています。

視覚障害者などの「交通弱者」が自転車からの事故に巻き込まれるケースも相次いで報告されています。

岩手県立大学と東京都にある日本視覚障害者団体連合が視覚障害者に行った2016年の調査によりますと、回答した人の120人の4割が過去1年に走って来た自転車と衝突して、その7割が歩道で発生していました。状況はその後も改善されていないと想定されています。

調査に参加した岩手県立大学の交通工学に詳しい元田良孝名誉教授は「自転車に歩道を走行させる運用を許容して来たのは世界でも日本だけで、『交通弱者』に許容したことでのそのしわ寄せが及んでいます」と危惧し、路肩が狭いといった自転車が車道を走りづらい道路事情も踏まえた上で、「自転車道や自転車レーンなどの整備を速やかに加速させ、自転車を歩行者がいる歩道の外へと誘導させるべきです」と主張しました。

今回は武井さんの事故の詳細と、聴覚障害をある私が「交通弱者」だと感じたことをお話します。

2023年8月、白状が折られた事故が発生。その詳細

武井さんは仕事が終わった帰りの8月16日16時20分頃、東京都新宿区にあるJR高田馬場駅近くの歩道を点字ブロックをなぞって歩いていると、正面から走行してきた自転車の車輪に武井さんが手に持っていた白杖が接触しました。歩道幅は3m程度。武井さんは怪我はしませんでしたが、白杖は車輪に巻き込まれたことで、2つにボキッと折れてしまいました。

現場を目撃していた人が「弁償しろよ!」と大声を上げると、自転車の男性は武井さんに謝まり、「杖が視界に入っていなかった」と弁明しました。それから男性が取った行動は、定規と粘着テープを購入し、白杖にそれらで固定し修復しました。武井さんを駅まで送った後、白杖代を渡して立ち去りました。「お礼を返したいから」と連絡先を聞こうとしましたが、男性は連絡先を言いませんでした。

武井さんは「あの事故当時、男性から白状の修復をする対応に、誠意を感じました」と言いますが、過去に武井さんは「ひき逃げ」の様なケースにも見舞われています。武井さんに不注意でぶつかって来たある歩行者が、武井さんが手に持っていた白杖が折れたにも関わらず、「あーぁ」と発した後に、すぐさま立ち去ったということです。

事故が発生した翌日の8月17日、同じ16時過ぎに武井さんと現場付近を歩くと、歩道は歩行者用だというのに、後方や正面から、一瞬で歩道を走り去る様な猛烈な速さで自転車が走行していきました。歩きスマホをしていて、武井さんにぶつかりそうになる男性もいました。

武井さんは現場付近を歩いた30分程度で、点字ブロック上で世間話をする人など3人と、無造作に置かれていた自転車1台にぶつかりました。この様な出来事は日常茶飯事だと武井さんは言いました。

参考:歩道で自転車と接触、白杖を折られた女性「目が見えない人の不安を知って」 一緒に歩いてみて見えた実情 東京新聞(2023年)

武井さんは「視覚障害の方は音などで周りの状況が分からない限り、周囲の人の存在を把握しづらいです。その様な不安があることが、視覚障害の方が外出を控える理由の1つにもなり得ます。目が見えない人がどんな気持ちを持ちながら歩道を歩いているか、少しでも想像して欲しいと思います」と述べました。

誠意が見られない。

自転車でぶつかって来て白状を折った男性は、恐らく動揺している武井さんを前に、何とかかなり粗がありますが、応急処置をします。

それに対して、お礼がしたかった武井さんですが、連絡先を言わなかった男性は、今回起こした事故に男性は深く関わりたくないという意図や、読んでいて余り武井さんへの誠意が感じられませんでした。

私は視覚障害ではなく、聴覚障害ですが、やはり「交通弱者」だと思います。私は片耳しか聞こえないので、歩く時まず車に意識が特に集中します。

それで特に歩道を走る後ろからの自転車に気付かず、近付いて来ても私が避けないことで、よくベルを鳴らされ、「あっ、自転車来てたんだ」と気付きます。

慌ててどきますが、自転車の人から舌打ちや、後ろを振り向いた後、キッと睨まれたり、「何、ボーッと歩いているんだ!」と罵声を浴びせられた時もありました。

見た目では分からない聴覚障害の私でも色々ありますが、目で分かる視覚障害の方はもっと色々あると思うと悲しいです。

周りの人の「心のバリアフリー」が、今早急に求められていますー。


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