マガジンのカバー画像

冬野あかり作品集

40
自分の記事のまとめ。 これを本にしたいなあ~。
運営しているクリエイター

#詩

【詩】海と空と

【詩】海と空と

海よ
おまえの嘆きの深さは
あまりにも深すぎて

空よ
おまえの喜びの高さは
誰にも測りきれなくて

海の深さと
空の高さを
比べることなど
できる人はいなくて

海の青さと
空の青さの
どちらが美しいかを
比べることなど
できる人はいなくて

ただ水鳥が
浮かぶ

海よ
おまえの豊かさを
知る人はいなくて

空よ
おまえのはかなさを
知る人はいなくて

ただ雲は
流れる

【詩】夏冬秋春(かとうしゅうじゅん)

【詩】夏冬秋春(かとうしゅうじゅん)

夏きたりなば
春なほ遠し
冬きたりなば
ゆく道近し
秋きたりなば
桜を思ひて
春きたりなば
世の光みる

【詩】思ひ出

【詩】思ひ出

さくらさく
きせつがいつか
わたしは
しらない

いつだって
いつだって
わたしの
こころのなか

はなは
ねむっていた

いつも
いつだって

はなは
ねむっていた

とうめいの
ビニールシートが
かぜに
とばされたひも

はげしい
あめが
ふりつけたひも

いつだって
はなは
ねむっていた

ひとりしづかに

まっしろな
おもひでが
ふりそそぎます

はなのうえに
ゆきのように

わたしの

もっとみる
プルーストの詩を読んだ

プルーストの詩を読んだ

プルーストの詩を読んだ。

過去に、私は「詩とは何か?」という記事を書いて、ちょっと最後に有料でしか読めない記事を書いていたのだが、

全部、消したくなった「詩とは何か?」

プルースト、あなたは偉大な人であった。
あなたの作品を読まずに、うっかり有料記事を書いてしまってごめんね。

まあ、全部、消したくなったけれども、それを言い始めると、私はnote記事を全部、消すことになる。

何も読まずに、

もっとみる
「唄」

「唄」

あなたに捧ぐ
この唄を

天より降り注ぐ光と
地より昇りゆく光が

溶け合い混ざり合い
ひとすじの光となりて

今生行く末
どこどこまでも

目を反らしたい醜さと
この世とは思えない典雅な響き

ふたつ並びて
この世となる

悲嘆の嵐はありけるに
なんぞ鳥が知りましょう

栄光の光の影にまた
悲運号泣絶えぬ人

思うがままにゆかぬなら
せめて美しく縁取った
ハンカチーフをあなたにと
唄う私がおりま

もっとみる
「詩」とは何か?

「詩」とは何か?

「詩」、それは詩人の心の中にある。

私は、哲学の小路を、ふらふらと散歩する。

「散歩」、それは人生を3歩前に進めること。

3歩あるいて2歩さがる。
ほら、1歩前進!

人間は、1歩前進するために、5歩あるかねばならぬ。

5歩あるく人、そういう人が、1歩前に出る。

しかし、人間、3歩あるいている途中、花に出くわす。

「おや、花が美しい」

立ち止まって、花に見惚れる。

1歩も前に進めな

もっとみる
【詩】一本の花

【詩】一本の花

花を 花を 花を
描きました

あなたのために

花を 花を 花を
描きました

一本の花を

世界の中の
たった一人の
孤独の中にいる
あなたのために

花を 花を 花を
どうぞ

あなたに
笑ってほしくて

ただ
それだけで

檸檬と薔薇【ノンフィクション】

檸檬と薔薇【ノンフィクション】

「檸檬」という小説がある。
詳しい説明はしない。

「丸善」という本屋がある。
どこにあるかは、言わない。

私は、先日、丸善に行った。
詩集のコーナーを探した。

詩の本が並んでいた。
私は、そこに一枚の紙を置いた。
本のタイトルを隠さないように、
本の配置を、少し動かして。

なんてことのない紙だった。
ありふれたノートのページを、
一枚破って、絵を描いた。

紙を折って、造花の薔薇をのせて、

もっとみる
【詩】手のひらの細胞に捧ぐ

【詩】手のひらの細胞に捧ぐ

嗚呼 手のひらの細胞よ
わたしは おまえに詫びねばならぬ

かつて わたしは 幼い子どもであった
家の中には ストオブが
赤々と 燃えていた

母は わたしに言ったのだ
ストオブに触っては いけませんと

何ひとつ わたしは
考えていなかった

いや それとも わたしは
考えたのかもしれない

ストオブに触ったら
どんなことが 起こるのか

嗚呼 その後のことは
ご存知のとおり

わたしは その後

もっとみる
「本物の作品」とは何か?

「本物の作品」とは何か?

note記事を読んでいて、たまたま、佐佐木政治さんの書いた詩に出会った。

既に、お亡くなりの方なのだけれど、娘さんが、作品を発表しておられて、だから、読むことができた。

大学でフランス文学を、学びたいと思いながらも、その夢を断念し、けれども生涯にわたって、詩作を続けた。

亡くなる2年前に、脳梗塞で倒れて、記憶障害や、手の麻痺が起こったのだけれど、そんな中で、動かない手を使って、文字通りの手作

もっとみる