あかふし

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最近の記事

殉死

 ポケモンのアニメがついに世代交代をして、サトシは主人公を卒業するらしい。数日後にW杯は決勝を迎えるが、おそらくその舞台でメッシの姿を観れるのも最後だろう。子どもの頃から、当たり前に社会に存在すると思っていた通念が終わっていくのを感じる。テレビをつければサトシがポケモンバトルをしていて、世界のどこかではメッシがサッカーをしている。実際にそれらを見るかは別として、そうした秩序のようなものが、自分の世界の裏面に存在すること。それ自体がある種の救いであったのだと再認識させられた。そ

    • 2022年4月5日

       疲れていて昨日は日記を書けなかったが、素朴に歌が上手くなりたかったので通い始めたボイトレのレッスンに行ったのと、サークルの新歓をオンラインで行うなどしてそれなりに活動的な一日ではあった。  新歓が終わった後の雑談で、好きな曲が知りたいのでプレイリストを作ってほしいと同期の子に言われたが、そういえばそうした他者へ向けて作る目的でしか、プレイリストというものを作成することはないかもしれない。精神が限界にある時に安定剤として作用する曲を集めたプレイリストだけは作ってあるが、自分

      • 2022年4月3日

         今日も今日とてバイトだった。天候の影響もあり、ここ数日の繁盛が嘘のように落ち着いた一日だったが、どういう訳か休憩もなしに七時間ほど働いたのでさすがに疲れた。帰り道に聴いた中村佳穂の新譜がとても良かった。  帰ってからはサークルの雑事などをこなして後はダラダラしていた。22時ごろに睡魔に襲われそのまま眠りについたが、二時間ほどで目が覚めてしまった。この時間帯に眠ると大抵の場合はそうなってしまう。  YouTubeでおススメされたので下の動画を見ていた。ツバキのCMが懐かし

        • 2022年4月2日

           昼過ぎに起きて支度をし、そのままバイトに向かう。八時間くらいは寝たはずだが、移動中は眠たくて仕方がなかった。意識が朦朧としている中で聴いたので記憶は定かでないが、電車の中で聴いていたYuckのファーストアルバムがとても良かった気がする。  時節柄、近頃は繁忙期らしく、シフトが始まるとひっきりなしに来客の対応などに見舞われる。お店としては嬉しい悲鳴なのかもしれないが、駒である私には特に何か還元されるわけでもないので、ただ単に平時に比べて疲労が蓄積するだけであった。  帰っ

          2022年4月1日

           昨日は昼過ぎに起きてバイトに行って、それからダラダラと時間を過ごしただけで終わったので特筆することもなかった。  そのくせ朝の五時になるまでは眠らなかったものだから、今日目を覚ましたのは夕方になる少し前くらいのことだった。通学用の定期券を買わなければならなかったので、たとえ日が暮れた後とあっても外出の必要があった。仕方がないのでしばらく布団の上で夢うつつを過ごした後で、シャワーを浴びて外に出た。  自分が定期券を作りに来るということは同じ目論見を持って駅に来る人の多い季

          2022年4月1日

          2022年3月30日

           日々が散漫なので久しぶりに日記をつける。今日はクローズまでシフトを入れていなかったので、いつもよりも早めにバイトを上がることができた。浮いた時間に、書店にでも寄ろうと思いつく。近頃はすっかり足が遠のいてしまっていた。社会的な生活を送ることにリソースが割かれすぎている。学生生活とアルバイトだけですらこの有様なのだから、社会人にでもなった日にはより悪化するのだろうと思われた。いざそうなってしまえば、日々の重心は労働に置かれ、週末に短い余暇を過ごす単調なサイクルが待っているだろう

          2022年3月30日

          2021年9月30日

           手が空いている人間がいなかったのでレジのフォローに入ると、どうやら店の前に客がいて、その人が呼んでいるという旨を別の客に伝えられた。俺が働いているバイト先は地下に店があるから、入店するには階段を降りなければならないのだが、何やらそのお婆さんは足が悪いようで、下まで降りてくることができないらしかった。  なるほどと思い上まで階段を登り、注文を取る。するといきなり横柄な口調で、いま店内には何の在庫があるのか、と聞かれた。一旦店まで降り、どの種類の品が残っているのかを確認し、そ

          2021年9月30日

          書物書簡 七通目 安部公房『方舟さくら丸』

          2021年3月21日 沖鳥灯さん、瀬希瑞世季子さん、Takuさんへ  近頃はあまり本を読めず、投稿が遅れてしまったことを初めにお詫びしておきます。「最近は全く本を読めない」という言葉を会話の度に繰り返していて感じたのですが、自分にとって元より読書という行為は日常的ではなく、本を読むことが可能なコンディションというのは特異な状態であるように思えてきました。 ♦  小説の主人公<モグラ>は物語の終わりに、来るべき核戦争に備えて造り上げた地下シェルターを脱して、透明な街の光

          書物書簡 七通目 安部公房『方舟さくら丸』

          2021年2月4日

           私の身体はとても細い。何かの間違いで増えやしないかと毎日のように体重計に乗っているが、目盛りが45kgを超えたことはない。高校生の頃に学校で献血を行う機会があったのだが、体重が45㎏以上でない生徒はそもそも参加できなかったので、私には縁のない話だと笑っていた記憶がある。女性にしてもこの体重は痩せている部類に入るだろうが、男性ときたらこれはもう生命の維持に支障をきたすほどで、実際にここ半年くらいは身体がほとんど動かない日が何日も続いた。  さすがにこれではまずいだろうという

          2021年2月4日

          書物書簡 四通目 上田岳弘『ニムロッド』

          2021年1月25日 沖鳥灯さん、瀬希瑞世季子さん、Takuさんへ 言葉が鳥のように晴れた空を飛んでいる 東京に溢れるこのくだらない信仰のなかで 僕らは議論を白熱させるくせに、 あの太陽が偽物だってどうして誰も気付かないんだろう  プラトンの「洞窟の比喩」について書かれた前回の書簡を読んで、思い出したのはPeople In The Boxの『ニムロッド』という曲だった。洞窟に鎖で繋がれた人々に対して、ひとたび洞窟の外に広がる実在の世界を目にした人間が抱く心情は、まさに「

          書物書簡 四通目 上田岳弘『ニムロッド』

          減速と加速

           一年の疲労を昨年のうちに解消することができなかったので、新年早々気怠い気分を味わう羽目になった。実家へ帰省したはいいものの、身体が相当に弱っているのか食事がろくに喉を通らず、また突然訪れた寒波で自律神経に不調を来たし、胃痛や乾燥肌や悪寒などありとあらゆる症状が襲ってくる。挙動を見るに全く病人のそれであることを自他共に察したため、元日の夜には帰省を切り上げて元の家に戻ることにした。  もはや限界に近い身体と精神を引き摺る帰り道、本格的に休養を取らねばまずいと悟る。しかし休養

          減速と加速

          2020年9月27日

           無駄な一日を過ごしたので日記を書く。何もない日でも日記を書けば何かを為した錯覚を得られるからだ。  何もできなかったのは、何をすればいいのか分からなかったからだろう。「何をすればいいか分からないときは、とにかく何でもいいから手を動かすべき」だとか、「やる気なんてものは行動してから湧いてくるもの」だとか、経験則に照らし合わせてもそういった言説は真理だと思う。けれど一方で、何をすればいいか分からないからやる気が湧かないことも、やる気がないから目の前の何かに手を付けることさえま

          2020年9月27日

          イノセンス

           押井守の『イノセンス』を見た。映画を見ながら思い出す。そういえば私は幼い頃、ピエロを大の苦手としていた。いつからかその感情はどこかに消えていたが、当時はテレビの中であれ現実の物であれ、彼らの姿を目にする度に得体のしれない恐怖を感じて、両親のもとに駆け付けていた。  顔を隠しているせいだ、と思う。同じように、能面やなまはげだって怖かった。幼い頃の私は、彼らが人間のかたちをしているのに、その中にはまるで別種の魂が入っているように思えて、それがひどく恐ろしかったのだ。あくまでひ

          イノセンス

          言葉

           数ヶ月前からTwitterで何かを呟くことがなくなった。Twitterで呟かれる言葉は、公に発されるものである。しかし多くの人はそれを意識せず、私的な感覚を以てそこに言葉を放つ。Twitterに限らずネットで発生するあらゆるトラブルの一因に、そんな事情がある。親しい友人に向かって話していると思ったら、どこぞの知らぬ人間から「その発言は気に食わない」と文句を言われる可能性を常に内包しているのが、Twitterという世界だ。  だが、厳密に言えばそれは現実でも起こり得る出来事

          日記(2020年6月14日)

           時間はその気になればいくらでも捻出できるはずだが、気力のリソースを食われて何もできずに終わる日々が続いている。予定が入っていること、忙しいことの難点はそこにある。ただ時間を使うだけでなく、日に使えるエネルギーまでもがそこに持っていかれるため、例え数時間の予定だとしても、それを熟したらもう何もできなくなっていることが多い。カレンダーを隙間だらけにするか、或いはエネルギーの総量そのものを増やす必要がある。先のことを考えると後者に専心すべきなのは明白だが、それは幾度となく挑戦して

          日記(2020年6月14日)

          どこかに行きたい

           『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んだ。読書会の課題本であり、かつ私はこの本を三年ほど前にも一度読んでいたので、普段よりかは些細な点にも気を払ったり、あるいは文章から何かを読み取ろうという意識を強く持って読んでいたはずなのに、いざ感想を書こうと思うと上手い具合に筆が乗らなかった。数百文字を書いたところで、自分が一体何を考えていたのか、書きたかったのか、そういったことが分からなくなる。  文章を書くというのは、自らの思考の不徹底を突き付けられる過程だ。だから、書こうと思っ

          どこかに行きたい