減速と加速

 一年の疲労を昨年のうちに解消することができなかったので、新年早々気怠い気分を味わう羽目になった。実家へ帰省したはいいものの、身体が相当に弱っているのか食事がろくに喉を通らず、また突然訪れた寒波で自律神経に不調を来たし、胃痛や乾燥肌や悪寒などありとあらゆる症状が襲ってくる。挙動を見るに全く病人のそれであることを自他共に察したため、元日の夜には帰省を切り上げて元の家に戻ることにした。

 もはや限界に近い身体と精神を引き摺る帰り道、本格的に休養を取らねばまずいと悟る。しかし休養とはいっても何をすればいいのか。そもそも日ごろから何もしていない人間には難儀な話であった。無理をせずに適度な休みを取るべきだと一般論は語るけれど、事はそう単純ではないように思われる。走っている胴体に急にブレーキをかければ負荷が生じるが、体力を使い果たした人間にはそれに耐えうる余力すら残っていないのだ。だからこそ強制的にフリーズがかかるまで働き、昏倒してしまった方が楽にすら感じられてしまう。更に言うならば、一度進行を止めてしまえば、次は再び走り出す必要に迫られる。これもまた厄介である。果たして休んでいる間に初速に耐えうるほどの力を取り戻せるのかという疑念が立ち上がり、そんなことを考えている間にも徐々に精神は擦り切れていく。

 何はともあれ、休む力が残っているうちにやれることはやってしまうべきだろう。これ以上放っておけばきっととんでもない負債を抱えることになる。出来の悪い心身でもその位は切実に予感することができたので、帰宅するや否や、思いつく限りのリラックスを実行した。汚部屋を適当に掃除し、アロマオイルを炊き、ぬるま湯にゆっくり浸かってストレッチをする。ついでにチル系の音楽を流して眠りについたので、今日はそれなりに調子を取り戻すことができた。

 けれどももう一つの予測された問題は残っていて、やはりというべきか調子を取り戻した身体で何をすればいいのか持て余してしまう。動き出すことは考えるだけでしんどかったから、惰性でゲームをやっていたらいつの間にか一日は終わり、それどころか次の朝が到来している。昨年の暮れはよく映画を見て過ごしていたけれど、その効用はなにより映画を日に一本見ることで生活の調子とペースを維持できることにあった。再びそのような生活を取り戻すことが望まれるが、そのためには強制力が必要だ。できるだけ早くレンタル屋にでも訪れてDVDを借りてくるのが良いのだろう。

 新年早々ダウナーな記事になってしまったが、今年もそれなりに健康で文化的な生活を目指して善処したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?