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「融資」で貧困を助ける~グラミン銀行から学ぶ成功ビジネス~

今回は私が気になっているマイクロファイナンスの仕組みについて、基礎知識から振り返っていこうと思います。そして、グラミン銀行が行っている成功ビジネスモデルの具体的な内容を一気に書き上げます!

マイクロファイナンスってなに?グラミン銀行ってなに、、?って方でも、分かりやすく書くのでどなたでもお気軽に読んでいただきたいです。後半の方は、「貧困層」向けに行っている金融ビジネスの成功する秘訣に迫ります!

マイクロファイナンスとは何か?

早速「マイクロファイナンス」とは何かということですが、一言でいうと、貧しい人々に融資をして彼らの貧困を抜け出すために作られた金融サービスのことです。このサービスにより、彼らの貧しい生活を再建・向上させることを目的としています。

具体的には主に3つほどあります。まず、「マイクロクレジット」と呼ばれる少額の融資により、生活に困った人々の収入向上や生活改善を図ります。その借りたお金で洋服を作ったり、野菜を売買したり、ヘアサロンなど始めたりすることができます。融資額は自分の収入でのちに返済をしていきます。

次に「マイクロセービング」と呼ばれるサービスは、低所得者の貯金を守り、収入が足りないとき、教育や健康、衛生面のために使用する準備金や将来への投資を助けます。

そして「マイクロ保険」と呼ばれるサービスは、これは自然災害や戦争、病気、経済危機などで緊急事態の時にそのリスクに対応するために貧しい人々を守るサービスです。

どのサービスも、従来の援助漬けになる可能性が低く、貧しい人々が自らの手で収益活動を行う機会を与え、自営業や将来に投資することができます。

日本では銀行に行けばすぐに借金の手続きができてしまうものですが、貧困層の人々にとってはこれらのマイクロファイナンスの考え方は非常にありがたい存在だったといえます。

ノーベル平和賞を受賞した「グラミン銀行」とは?

銀行がノーベル平和賞?と思う方もいると思いますが、実は2009年にバングラデッシュで当時経済学者であったムハマド・ユヌス氏によって設立された銀行がノーベル平和賞をとりました。

ユヌス氏は、教壇で学生に経済学を教える学者でしたが、教室から一歩出ると、貧困で苦しむ人々が多くいることを目の当たりにし、「自分が教室で学生に教えている経済学が実際の社会に役に立ってない」と疑問を抱きました。そして、担当していたゼミナールの学生と最貧困層の村を対象に研究・調査を始めた事が発端とされています。

貧困層の女性たちが、竹細工の作業をしていても作業代として手元に残るお金はわずかであることを知ると、「自分達で材料が購入できれば竹細工の売り上げ全額が自分のものになり,収入を何倍にも増やすことができるはずだ」と思い立ち、竹細工の材料購入代としてお金を貸し出すことにしました。

土地を持たない人々が適切な期間と状況の中で資金が運用できるようになれば、貧しい人々が自助努力を積み重ねて大きな発展につなげることができると、ユヌシ氏は考えたそうです。

なぜ金融サービスを継続できたのか?

ここまで見ると、マイクロファイナンスによって役立つサービスを提供でき、貧困層にも社会全体にもプラスになることだと思います。しかし、よく考えると、対象者は低所得者でもともとお金を多く持っていない人たちが銀行からお金を借りることは極めて困難でした。

そのため、地主や仲買人などから高い金利でお金を借りるしかなく、それは貧困をさらに悪化させる危険をはらんでいたのです。

さらに彼らの収入源は主に農業だったので、天候により農作物の取れ高が変わるなどし、決まったお金が月に入ってくるわけではありません。しかもその中から生活費を賄わなければいけないことを考えると、金融サービスを提供しながら貧困削減に取り組むグラミン銀行が行なったことは、特筆すべきことでした。

考えたいところは、貧困層をターゲットに現地の人々の生活を金銭面で支援しながら、銀行側にも利益を生み出すということです。グラミン銀行がどのようにして融資を行い成功したのかは、主に2つの観点からあります。

1つ目は、顧客である貧困層が銀行に出向くのではなく、銀行スタッフが直接村を訪れて手続きを行うことです。毎週一度、村の人々が集まり、そこに銀行スタッフが出向いて融資や貯金の手続きを行います。これは「移動業務」と呼ばれ、銀行員が一度に手続きを行える一方で、サービスを受け取る貧困層にとっても遠くの銀行にいく手間が省けます。

二つ目は、借手同士「5人組」のグループをつくったことです。グループ内で返済できない者が出た時に、他のメンバーが肩代わりして返済するという制度をつくりました。銀行側も、元本と利子が全て返済されて儲けになるので、銀行経営をする観点からもきちんとお金を返済してもらうことはとても大切な条件となるのです。

グラミン銀行の社会的効果とは?

お金を借りる側の貧困層にも、貸す側の銀行側にも双方にメリットが期待される社会的な効果とは何でしょか?

それは、女性の労働の機会を与える事に貢献しています。前述したように、グラミン銀行の発端はもともとは竹細工で働く女性のために生まれたアイデアでした。この活動が広まることにより、より多くの貧困層の女性に雇用の機会を提供することにつながります。

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さらには、必要なときに使うことができる金融サービスを利用することにより、生活の質の向上・維持が大きく期待されます。また、借りたお金を悪用したり未済する事態に陥らないよう、「16の誓い」を農村部の女性が暗唱するという工夫もされています。

これには、「家族計画」や「環境美化」、「規律」などの言葉が含まれており、彼女らの生活向上だけでなく、規律ある生活感をもつことや、社会に貢献する姿勢を抱くようになります。

財政規律という言葉があるように、お金の使途を明確にするだけでなく、融資を受けることで何を実現したいか、将来の生活に希望を見出しながら意識を高めることができますね。とてもいい対策だと思いました。

窮地を脱する策とは?

そんなグラミン銀行でも、1998年の大洪水で一度銀行経営が困難になりました。このとき、バングラディッシュの約7割の水没したといわれていますが、借り手であった人たちも畑や住宅に大きなダメージを受け、返済不能に陥り、銀行として機能しなくなってしまった時期がありました。

富裕層に金融サービスを展開すれば、その利益を頼るという急場を凌ぐ方法もありましたが、あくまで対象は低所得者で打開策を考えたそうです。「顧客の利便性」を高める事により、より多くの人々にグラミン銀行を魅力的にさせるようにしました。

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具体的には、5人組の貸付ではなく、個人に貸し出すように転換したり返済が困難な人たちに返済のスケジュールを見直すなどです。

また、貯金でも「ペンション・スキーム」といって毎月一定の金額を10年間積み立てる貯蓄商品を導入していました。

これらの金融サービスを利用する者の実際の声として、「子どもの教育資金の為に積み立てている」ことや「家族が何か病気になった時の為に貯蓄をしている」といった言葉があったようです。

社会的効果と事業の持続性を両立させるビジネスモデル

下の図は、JICAバングラディッシュ事務所のページに載っていたものです。とても分かりやすいのでご覧ください。貧困女性を対象にし、移動業務や新たな金融サービスを提供することなどすることにより、顧客の利便性を図る取り組みはとても学べることが多くあると思います。

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担保を有しない貧困層をあえて対象にし、様々なニーズに応じた金融サービスを展開することで、より顧客の身近に感じるサービスに変えてきた進化こそ30年以上にもわたり事業を持続することができた秘訣だと思います。

お読みくださりありがとうございました!

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