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教育協力「平和・人権・開発」の3つのアプローチとは?

今日は主に発展途上国に対する教育協力について書いていくことにします!

今回はネット上の情報ではなく、国際教育開発の分野で研究している早稲田大学院黒田一雄先生の『国際教育協力の再生 ―平和・人権・開発への統合的アプローチ』という短めの論文の内容をもとにお話しています。私の興味が彼の研究内容に近いこともあり、今回は黒田一雄先生の実際の論文を選びました。

黒田先生は、銀行員を経験してから留学を志しスタンフォード大学教育大学院に行かれています。国際教育分野の研究において有名な方で、彼の授業も毎年かなり人気があるようです!

国際社会では教育についてどういう議論がされているのか、グローバル社会で教育の認識はどこまで広がっているのか、これからの課題は何なのか、そんな話をしていきます。

1.平和アプローチ

教育分野の国際協力において、平和を主眼とした考え方は第二次世界大戦後に広がってきました。例えば、1945年に採択されたユネスコ憲章。1974年に採択された「国際理解と国際協力、国際平和のための教育および基本的自由についての教育に関する勧告(国際教育勧告)」は、国連憲章、ユネスコ憲章、世界人権宣言をもとにして、国際社会が抱えるあらゆる問題を提示し、教育の役割について述べられました。

また、2001年に起きた同時多発テロ以降、教育制度の見直しだけでなく、平和や異文化を理解した教科書の内容改善と、教育カリキュラムが大きく見直されました。様々な価値観を持った人を理解することや、あらゆる国や人同士、あらゆる利害関係があることを踏まえた上で、今後の紛争再発を防ぐために教育の重要性が注目されました。

しかし、時代を超えて国際社会が進展してきたとはいえ、いまだ枠組みとして理念が先行しています。世界の認識を共有していくことは大切ですが、議論のための議論にならないことを念頭におきたいものです。

2.人権アプローチ

「教育は万人のための権利である」と宣言してきた歴史があります。それは1948年、国連総会により採択された世界人権宣言です。第26条にはこのように書かれています。

1.すべて人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならず、また、高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放されていなければならない。
2.教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。
3.親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。
(「世界人権宣言」 外務省訳)

第2項を見ると、人間同士の友好関係を深めるための教育である意味合いに加え、社会の平和維持のために教育は存在するということが分かります。

そもそも平和ってなに・・?という疑問が浮かびますが、ひとつ1つ言葉の意味を解釈しようとすると、色んな角度から考え方を捉えられるので、体系的に全てを理解するのは本当に難しいことです。

世界人権宣言だけでなく、UNICEFが出した『世界子供白書』においても、「人権における教育は、子どもが学ぶ教育システムや個別の学校を形づくるうえで何が必要かという点でとくに多大な意味をもつ」としています。さらに、教育の目的に関して「児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」と明記されています。

教育に対するアクセス、教育の質、教育・学習環境の全てにおいて、人権の考え方を根本に強く訴えかけている言葉だと思います。こうした人権に基づく考え方は国家間同士の共通認識ではなく、NGOや市民にも精通しているといえます。

3.開発アプロ―チ

開発アプローチとは、ざっくりいうとより良い教育を実施するためにどのような政策やアクションが具体的にとられてきたか・とるべきかを考えるアプローチの1つです。

まず、財政的な教育(人材育成)の支援として、留学への資金援助(奨学金の支給)が挙げられます。国際理解力を養う人材を多く輩出することは平和アプローチにも間接的に関わります。

経済協力開発機構(OECD)は、経済発展における教育の重要性を強調し、以来、世界銀行は大幅に教育事業への投資を行っているようです。

世銀が出した、教育への投資が経済的にどのような影響をもたらすのかを示した文書(教育のための優先課題と戦略)があります。ここでは、様々な社会課題がある中で教育をより上位へ優先事項とすること、基礎教育を主に公共投資を行うことなどの内容が盛り込まれました。

しかし、教育が経済的な効果を生むと強調するあまり、その肝心の教育の中身が軽視されていることが国際会議で議論されています。教育が経済的なインプットをすれば、アウトプットが自動的に出てくるブラックボックスのような存在として捉えられていることを例に挙げて批判があったとか。

スタンフォード大学は、世界銀行は教育政策をする上で、経済理論を語るばかりではなく、現地の様々な問題が孕む教育環境をきちんと認識したうえで教育における問題解決を現地の「知恵」に委ねるべきであると主張しています。

、、教育投資すればいいってもんではないということですね。どんな人にどんな教育が必要か、現地の人々が自分らで変わりたいと懇願しない限り発想や変化も見いだせないということを裏返して言っているような気がしました。

まとめ

今回は、黒田一雄先生の論文から教育開発において考えたい3つのアプローチを紹介しました。

平和と人権に関しては、大学の授業で何度かこのような内容の講義を受けていたのである程度認識はしていましたが、開発アプローチについては盲点の考え方もありました。

時代を超えて、教育の重要性が世界で認識をされ人々のニーズに合った教育内容がより重要であることが必要だと改めて感じました。

そのことを踏まえて、自分がしたいと思っている教育の環境に恵まれず育ってきた人たちへの貢献。やっぱり、与えるだけの教育支援では意味がなくて、現地の人が変わりたいと心から思っている気持ちを失わないことが大切だと思いました。

「こんな状況じゃ、もう何やっても無理だよ」って人生を見切っている人たちが、支援にも頼らず、自分で立ちあがれるようにしたい、、、

そのためには、やっぱり結果を出さないといけないなと最近つくづく思います。自分の意見をきちんと持っていても、教育がいくら大切だと唱えても、結局地道な精進が無ければ問答無用。

このアウトプットの作業でだいぶ頭がひねられています、、

お読みいただきありがとうございました!

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