見出し画像

【中国記憶note】上海の怖〜い信号機・・は、まだまだ序の口?

「違反者の顔を晒す」信号機


私たちは日本にいても、街を歩けば、常に無数の監視カメラに見られて記録されている。普段それを意識することはない。しかし、突然自分の顔が”容疑者”として、街頭のスクリーンに映し出されたら・・・

2年前に上海を訪れた際に見た、AIを使った歩行者用信号機。柱の部分にモニターが埋め込まれている。よく見ると、さっきからずっと何人かの顔のアップと、彼らが道を渡る姿の画像が映し出されている。

撮影: AJ

スクリーンに書いてあったのは、

“您已涉嫌法!(nín yǐ shèxián wéifǎ  ニー・イー・ショーシエン・ウェイファー =あなたは違法行為をした疑いがあります!)"

そして、「(交通法規)違反の容疑者」として顔のアップ写真が晒され、どういう違反をしたのか、赤信号で横断歩道を渡るなど、その”違法容疑”行為の「過程」が映されている。

「あなた」と言うのも、「你(nǐ)」ではなくて、丁寧な「您(nín)」という言葉を使いながら、個人の顔を何度も街頭に晒し、警告をしているのだ。

撮影:AJ

今は夜だが、よく見るとまだ明るい時間の画像のようだ。ということは、日中に赤信号を渡った”容疑者”の顔が、夜になってもずっと街頭に晒され続けているということか。

当時は初めて見たので興味津々で、面白半分で、自分もちょっと違反してモニターに映ってみたい幼稚な衝動にも駆られたが、色々考えると怖くなってその気持ちは急に萎えた。

ちなみに自分の周りの信号を待っている人たちは、誰一人赤信号を渡らない。やはり、”違反者の顔晒し”の効果は大きいようだ。

中国の道では自動車も人も実にワイルドという印象しかなく、自分も動物としての能力を研ぎ澄まして道を渡らなければならないことが多かっただけに、とても「文明(ウェンミぃん=マナーがよい)」であることに驚いた。

ちなみに、交通マナーと言えば、北京の交差点で、おばあさんが青信号で横断歩道を渡っているのに、公共交通機関であるバス(公交车 gōngjiāochē ゴォんジアオチョー)が交差点を曲がるためにそこに突っ込んできて、運転手がマイクで「はい、はやくして!はやくして!」とがなり立てて、おばあさんを急かし、おばあさんが転びそうになるのを見たショックがまだ強く残っている。

もうこのレベルまで来たら、交通マナーを良くするのに半世紀以上はかかりそうだと思ったが、少なくともこのAI信号機の前では、歩行者は「文明」になった。

この信号機は、まだまだ序の口?


しかし、このAI信号機は、そんな大したもんじゃなくて、まだかわいいものらしい。場所も観光客が歩くような所なので、象徴的に取り付けられているだけなんだろう。

聞くと、違反者を晒して警告するAI信号機は、既にいくつかの地方で導入されていて、そこでは、違反者の顔のドアップの写真が交差点の超大画面に出るだけでなく、そこにその人の名前、さらに、なんと身分証の番号の一部までが晒されるのだそうだ。

こうした話を見聞きすると、一体どんな未来が待っているのかと心配になる。ジョージ・オーウェルの「1984年」を想起させる。こうした技術は、今後、交通違反からどんな問題まで応用されていくのだろうか。

別に中国だけの問題ではない。中国での”成功例”は、世界中の為政者にとってありがたいものになるかもしれない。

でも最後に、やっぱり信号無視は本当に危ない。
私は実は、小さな道では、時々信号がないところを渡ってしまう。先日もひやっとしたことがあった。

誰かが見てなくても、もう本当にやめようと思う。
"Big Brother is watching you!"・・・と思って・・・

============
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ 😀

この度、生まれて初めてサポートをいただき、記事が読者に届いて支援までいただいたことに心より感謝しています。この喜びを忘れず、いただいたご支援は、少しでもいろいろな所に行き、様々なものを見聞きして、考えるために使わせていただきます。記事が心に届いた際には、よろしくお願いいたします。