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きむち
2024年7月6日 21:03
とある夏の日の夕暮(ゆうぐ)れ時、ゲコゲコゲコとカエル達の鳴き声が聞こえます。カサコソカサコソと音を立てて草むらから緑色の小さな丸い生き物が現われました。夜行性(やこうせい)の虫たちがやっと動き出す時間のようです。<コガネムシくん>そう、辺(あた)りが暗くなると僕はようやく動き出すよ。今日は沢山お昼寝をしたから、すこし身体(からだ)がなまっているみたいだ。僕の身体は光る緑色をしていて、丸っこ
2024年7月5日 16:42
とある田舎の町に住む少女マチルダは、その真冬の肌寒い日、一人でお留守番(るすばん)をしていました。窓の外では、雪がしんしんと降り積もり、木立こだちを覆(おお)い隠(かく)しています。一面(いちめん)の銀世界。一緒に暮らしているお母さんとおばあちゃんはマチルダをおいて、この大雪の中どこかへ出かけてしまったのです。「私を連れて行ってくれてもいいのに」そう言うマチルダにお母さんは、今日は寒い
2023年12月5日 20:30
待合室「失礼します。こんにちは~」シャランとした柄物の羽織をまとった小太りの中年女性が診察室へ入っていく。心療内科の待合室は、ピアノのゆったりとした音楽の波が満たされている。オフィスにいるはずの平日のど真ん中にこの場所にいることは、私をどこか浮世離れした気分にさせてくれる。会社というピリピリした檻の中から引っ張り出されて、心を調整するためのあたたかい空間にちょこんと置かれたみた