會津蔵武 あいづくらぶ店主の非日常

あいづくらぶ店主カズさんの非日常。

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あいづくらぶ店主カズさんの非日常。

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最近の記事

祖父と喧嘩した日

 看護師の女性からきいた話だ。  中学の頃彼女は、両親兄弟と祖父の六人で暮らしていた。彼女は幼い頃、特に祖父に懐いていて、祖父もたった一人の孫娘をたいそう可愛がってくれた。  しかし彼女が中学に入る頃には、友だちが増え、部活や勉強も忙しくなり、祖父とは生活のリズムが合わなくなった。それでも、祖父は孫娘が可愛くて、声をかけたりするのだが、動きが鈍く、なかなか言葉が出てこない。そんな祖父の言動は、忙しい彼女のリズムを乱れさせる。いつしか、彼女は祖父を疎ましく思うようになった。

    • 祖父の葬儀

       同級生のハナちゃんから聞いた話だ。 ハナちゃんの母親の実家は、福島県奥会津の小さな村で旅館を営んでいた。ハナちゃんが小さな頃、長期の休みには、その旅館に姉妹で預けられ、旅館を手伝ったり、村の子どもたちに混ざって遊んだりしていた。子どもたちが過ごした、この村での不思議な話は数多くあるのだが、今回は彼女の祖父の葬儀に関わる話をしたい。  ハナちゃんが二十歳の年、その奥会津の家の祖父が亡くなった。40年近く前のことだ。  祖父は、村の寺に広い土地を寄進したり、他にも様々な貢献があ

      • ウォッチを洗濯した。

        数日前、Watchを洗濯してしまった。 濡れた洗濯物からゴロンとWatchが出てくるまで、間違って洗濯してしまったことにも気がついていなかった。 ゴロンと出てきた瞬間の、背筋が凍った。 やっちまったー! 幸い、起動させてみたら、正常に動いた。 たぶんボディを覆うケースのお陰で無事だったのだと思う。 笑っちゃったのは・・・・ 洗濯機の中から出てきたWatch、エクササイズリングが完成してたんだよね。。。。 信じられないかもだけど、本当の話。

        • よろしくね

          私は、とある日本酒バーを営んでいる。 カウンターに座る、さまざまな職業、年齢層のお客様が、たびたび不思議な話を置いていってくれる。 その日のお客様、福島県内に住む30代の男性客、中村さんの話。 2018年1月22日から23日にかけて、久しぶりの大雪で東京の交通がマヒした日の話だ。福島県内でも、郡山市やいわき市など、太平洋側でたっぷりと積雪があった。 1月22日の雪の朝、中村さんが職場に出勤し、仕事の準備をしていると、同じ職場で働いているスタッフ吉田さんが、中村さんより1

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        • 怖い話 不思議な話
          18本
        • 店主の日常
          1本
        • 會津蔵武のちょっといいもの
          1本

        記事

          あそこの席の女性

          30代の知的な女性が二人で来店した。そのうちの髪の長い彼女が話してくれた。 「大学のときの先生が女性向きのイタリアンレストランを始めたんですよ」 シェフとしてというわけではなく、オーナーとして。 彼は、都内O線沿いのおしゃれな街に、女性ウケを狙ったおしゃれなイタリアンレストランを始めた。わりと順調にお客さんが入り始めた。 お客さんが 「ああ、あそこの席に座っている女性、きれいですね」 っていうんですけど、誰も座っていないんです。 「でも、その大学の先生も、そういうの見えるっ

          指輪をなくした話

          2022年の10月になって、大事な指輪をなくしてしまった。 その指輪は、母方の親類に関わる指輪で、ぼってりと丸いフォルム、ずっしりと頼もしい重みがあって、私は好んで身につけている18金の指輪だ。 それがないことに気がついたのは10月に入って3日目くらい。そこから2週間も探し回っていた。 店のいつもの定位置にあるのかもしれない。 ない。 では、自宅のあそこか? いや、ない。 それなら、車のあそこだ。 ない。 いつも持ち歩くカバンの中のポケットの一つ一つに手を突っ込んでみた 。

          道に・・・

          ある道に、秋に白いワンピースを着た人がいて、それには気がついたけれど、それは普通の人かと思って通り過ぎた。 場所はもう忘れたけれど・・・。 3時間後にひきかえして再びその地点を通ったら、まだその場所にいた。 でも、そこで誰かを待っているだけかな? 道を歩いていて、知らない人がその道にいたとて、誰も気にしない。 生きていようが、亡くなっていようが・・・。 神戸に、不自然に二股になって再び合流する道があって、真ん中に木があるんですよ。 全国のあちこちに存在するいわゆる「呪いの

          セー◯ームーン人形

          會津蔵武に来てくれた、年の頃は20代後半か30代前半の女性が話してくれた、小さい頃の人形にまつわる話です。 彼女の実家はマンションの5階。 小学校に上る前まではセー◯ームーンが好きで、セー◯ームーン人形を持っていた。誰もが想像するリカちゃん人形タイプの、ソフビでできた腕も脚も首も動く着せ替えができる、さらさらとした長い金髪の人形だ。 とにかく小さい頃は一番のお気に入りで、保育園に行くにも他所の家に遊びに行くにも、いつも持ち歩いていた人形。小さい頃の自分を撮った写真にはいつも

          稽古の声

          会津若松に住む友人の話。 彼は子供の頃から剣道をやっていて、「会津盆地ならここ!」という有名観光地のど真ん中にある剣道場に子供の頃から通っていた。 朝早く、一番乗りのつもりで稽古場に着くと、もうすでにたくさんの剣士が集合していて、激しく稽古をしている音がする。 (あ、いけね!もっと早い時間集合だったのかな?) と思って、慌てて引き戸を開けて稽古場に入ると、シンとしている。 今までの大勢の人の気配は消え去り、静寂に耳が痛いほど・・・・。 その稽古場ではよくあることだという。

          物音

          会津若松のある工場の話。 彼は、その工場の人事の人間だ。 このご時世、人が密集して仕事をする、工場の人のやりくりは大変だ。当然、残業が多くなるわけだが・・・。 彼のデスクの後ろには、ガラスで仕切られた管理区画がある。彼はそこに背を向けて仕事をしている。 そのフロアにひとりで残業していると、その管理区画から、何者かの強い視線を感じるようになった。 誰かがじっと見ている。 そして、ささやかな異変が起こる。 ある時は、パキンと音がする。 しかし、何もない。 ある時は、ファサ

          ケルン

          昨日、登山を趣味とするお客さんから聞いた話。 ある山で、下山の時に仲間から逸れてしまって、大急ぎで降っていた途中、道に迷った。 ふと枝道があり、方向的に「最善か?」と思いそちらに進む。 すると、程なく少し開けた平場に出た。そこには、人の高さほどのケルンがいくつもいくつも作られていた。 ケルンとは、過去登山した人や、昔、山を管理していた人が、登山者が遭難しないように、道しるべとして石を仏塔のように積み上げたものだ。 そして、まれに、誰かが遭難した場所に供養のために積み上げ

          飛び跳ねる救急患者

          日本酒バーのカウンターでお客様にお聞きした話です。 2月21日のTwitterSpace「第11回會津蔵武の怖い部屋」で私(店主カズ)が話しました。 私は医療従事者です。実は母も同じ職業をしています。 この話は、その事件があったその日に、顔を青くして帰宅した母親から聞いた話です。 ある交通事故で患者さんが救急に運ばれて来ました。 その人は血圧も低くて明らかにショック状態で意識がない状態であるのに、いきなりその身体を起こして床に足をおろし、折れていない方の片足で立ち上がっ

          映画を見た帰りに

          會津蔵武のお客さんに聞いた話です。 昨日、来てくれたHさんは会津地域で農家をしている豪快な人だ。うちの店にもよく来てくれる。見かけガタイのいいおっさんで独特のファッションをしているので、ちょっと怖い人に見える。うううんん。なんていうか、ド派手な和柄のタンクトップにシルバーのアクセサリーをジャラジャラ。そこに薄手の和モノの羽織物。ぱっと見、神輿を担いだお祭り帰りの格好。 Hさんだけでなく、会津地域の上手に農家をやっている人たちは、基本、豊かで、自由な生き方をしていて、おしゃれ

          IT講座の夜

          私の前職の同僚Aさんからきいた、やはり同僚のBさんが経験した話です。 私自身は、前職でAさんとは仕事上の頻繁なやり取りがあり、飲みに行ったりする仲でしたが、Bさんとはあまり関わりがなく、あまり話をしたことはありませんでした。 AさんとBさんは仕事の発注者と受注者の関係です。彼女らは、キャリアアップ関連の講座を運営する団体に勤めており、職業訓練に関わるセミナーを運営していました。Aさんが企画者で会場を手配し、Bさんはその会場でインストラクターの一人として活動するというスタイルで

          検温センサー

          県立博物館で妖怪、幽霊、怪異のテーマの展示をしている。同じ期間、会津若松市内では「怪異」をテーマにした集客イベントがあり、これをここに書いても問題はないと判断する。 私は、まあご存知の通り、そういうものが好きなので、8/18の日曜日に行ってきた。今回の展示は、図録は秀逸で、展示物全てがカラーで収録されている。紹介された興味深い民話もすべて載っていたのはうれしかった。 その中で、福島県では「幽霊掛け軸の寺」として有名なK寺の幽霊掛け軸の選りすぐりを展示していた。 昔、江戸

          叔母から聞いた話

          叔母は今年85になった。彼女は7年前に亡くなった私の父の妹だ。 まだ元気にしている。 うちは古い神道の家系で、今ではそんなことはないが、昔は神社の娘を嫁に入れたり、娘を巫女に出したりしていた。祖母(叔母の母)も近隣の神社の娘だ。そんな風なので、世代にひとりは、妙に感のいい子供が生まれる。 叔母はそういう人だ。 60年以上前、彼女は静岡の小都市に嫁に行き、夫婦でその町に土地を買い、新しい家を建てることになった。 その敷地の中に、傾き壊れた小さな石の社が、半分、土に埋まった状