映画を見た帰りに

會津蔵武のお客さんに聞いた話です。

昨日、来てくれたHさんは会津地域で農家をしている豪快な人だ。うちの店にもよく来てくれる。見かけガタイのいいおっさんで独特のファッションをしているので、ちょっと怖い人に見える。うううんん。なんていうか、ド派手な和柄のタンクトップにシルバーのアクセサリーをジャラジャラ。そこに薄手の和モノの羽織物。ぱっと見、神輿を担いだお祭り帰りの格好。
Hさんだけでなく、会津地域の上手に農家をやっている人たちは、基本、豊かで、自由な生き方をしていて、おしゃれな人が多い。おしゃれなカッコでベッタベタの会津弁を話すギャップがまたいい。いわゆる「濃いい人」たちだ。Hさんもその一人。

彼の趣味は映画館での映画鑑賞。
大昔は、会津には映画館が6館あった。栄楽座、みゆき座、栄楽プラザ、東宝映画館、松竹映画館、大映映画館。全部、無くなってしまった。
実は会津地域でも大規模映画館の噂があり、それをすごく楽しみにしている。
彼は、会津にはない映画館の映画を求めて、那須、山形、仙台まで出かける。特に4DXの那須にはよく通うらしい。観るジャンルもさまざま。アニメだって観る。ぱっと見、神輿を担いだお祭り帰りの格好で、パトレーバーとかエヴァンゲリオンの話をしたり、「一応、鬼滅は観た」とおさえてる感が、見かけとのギャップがあって面白い。

「俺は、普段、そんなものは観ないのだけど、1週間前、那須フォーラムからの帰り、甲子峠で奇妙なものを見た」
と、言う。

遅くなった帰り道、甲子峠を走っていると猿がいて、猿を轢きそうになった。
「ドキッとして、今度は用心深く走ってたっけ、こどもぉ歩いでだ」
甲子峠の家々も途切れた山の中。パジャマを着た幼児が道を歩いている脇を通り過ぎた。
「たぶん、人だど思うんだげんじょな・・停まって、見る勇気はねがった」
時刻は夜中の11時過ぎ。
「こどぉも、ちっちぇやつ? パジャマみでなの着てあるいでで、人間だったらぎゃぐに怖いぞ」

実は、会津盆地には真夜中の幼児の怪談は結構メジャーだ。よく聞くのは滝沢峠の三輪車幼児の幽霊。真夜中に三輪車の幼児がキコキコ峠をこいでくる話。

その類型。
中央病院のそばのの某営業所(職種は伏せてあります)勤務の50代女性が、ミーティングで遅くなった夜、丘の上の居合にある自宅に帰る道すがら、時間は12時。三輪車をこぐ幼児とすれ違った。近所には住宅は多く、そこの住民の子とも考えられるが、そのありえない時間帯にありえない年齢の幼児。
人であっても幽霊であってもどちらも怖かった・・・・。
その話も彼から聞いた、彼の友人の話だ。

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この「怖い話」は會津蔵武のカウンターで聞いた話です。話してくれた友人、お客さんからは、掲載や怪談としての発表の許可をいただいています。
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