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2021年4月の記事一覧

この幸せが、あなたの(コンビニに生まれかわってしまっても/西村 曜)

「死にたい」で検索すれば出る相談窓口「死ぬ」では出てこなくなる(p102)

「熱」

ブタメンに湯を注いでいる最中に、カップを倒した。湯が半減したので、さらに追加。味が薄くなると思っていたけど、まったくそんなことはなく。さすが、カップ麵コーナーじゃなく、駄菓子コーナーに陳列されているだけある。つまるところ、これはおやつなので昼食ではないと、ぼくの良心が訴える。けれど、泣き腫らしたぼくは、腹に収ま

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都市、年、駆け行く(サウンドスケープに飛び乗って/久石 ソナ)

役割を担いたいよね灯台は午後五時前にひかりを宿す(p126)

すれ違うたびに傾く傘があるまれに掠めて分け合う温度(p51)

田舎生まれ田舎育ちのぼくには、都市の匂いはわからない。東京とか大阪とか、行ったことがないわけじゃない。でも、旅行者が感じる匂いと、そこで生活する人達が感じる匂いは、きっと違う。だから、ぼくが本当の都市の匂いを感じることは、これから先もない。と、思っていたんだけど。

『サ

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この水面、上から見るか?下から見るか?(水の聖歌隊/笹川 諒)

雨上がり、水たまりに曇り空が映り込んでいるのを見下ろすことがある。そのままじっとしていると、まるで空へ墜ちていく感覚に陥ることがある。「どぼん」とわかりやすく音を立てて。

椅子に深く、この世に浅く腰かける 何かこぼれる感じがあって(p6)

『水の聖歌隊』の先頭にあったこの短歌を読んだときに覚えた感覚が、まさしくそれだった。

「水面下へ、ようこそ」

と、誰かが言った気がした。

コインチョコ

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「刹那い」(花は泡、そこにいたって会いたいよ/初谷 むい)

『花は泡、そこにいたって会いたいよ』は、ぼくが初めて買った歌集だった。

一目惚れだった。表紙のイラストを、ぼくが元々ファンである大島 智子さんが担当していることも、一つの理由だったけど。

『花は泡、そこにいたって会いたいよ』

5・7・5のこのタイトルだけで、充分だった。初谷 むいという歌人に惹かれるには。

どこが好き?何か有っても無くっても撫でれば同じように鳴くから(p20)

「閉店後バ

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