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孤独や寂しさは手放さないままでいい


しばらく前、映画館に「ちひろさん」を
観に行った。


心が解きほぐされた感じがして、
でも凛とした感じも残っていて、とても良い作品だった。


『人の心を独り占めすることなんてできない』


『あなたならどこにいたって、孤独を手放さずにいられるわ』


このふたつの言葉が、大好きだった



**


創作って、心が辛かったり不幸だったりした方が、湧き出すってことがあると思う。

下手したら、だから不幸や寂しさを手放したくない、とまでも思ってしまう節がある。





だってそういう時って、
自傷行為みたいに、書いたり、造ったり、表現する。所謂、“筆が乗る”みたいな状態になりがちだから。


でも最近、わたしは幸せで、
引きずっていた辛いことも薄くなっていて、
“慢性的な辛さ”を原動力に文章を書くことが減った。


もう、そういうものたちを、完全に手放していいよ、手放せてるよ、とだれかに言われている気がする。

そうだよな、とおもうけれど、
でも簡単には手放せなくて、やっぱりどこか、片足の先っちょだけでも、孤独や悲しみに浸かっていたい。
そう思ってしまうところがある。

それは、どこか後ろめたくて、だめなことだと思っていた。


**


「ちひろさん」の話に戻るけれど、

『あなたならどこにいたって、孤独を手放さずにいられるわ』


これは、いろんな過去を背負ったちひろさんへ、仲良くしていたお弁当屋さんのお母さんが言ったセリフ。

明るくて強く見えるちひろさんが
ずっと同じ場所にいられないのは、

その場所や人に慣れて愛着が湧いてしまうと、安心してしまって、自分が大切にしてきた孤独とか寂しさが必要なくなってしまうから。
それが怖いのだ。

だからそうなる前に、いろんな場所を転々としている。

そのお母さんは、
今のあなたならその孤独をもったまま今の場所にいられるよ、と言ってくれるのだけど、
結局ちひろさんは違う街に移ってしまうのだ。


**

そもそも、孤独とか寂しさって、
ない方がいいと排除するものじゃなくて、
大切にしてもいいもの
なんだって、ちひろさんを観ておもった。

わたしだって、ずっとそれに浸かっているわけじゃないけれど、心の奥にある孤独をたまに取り出して、大切にしたい。


それをもったまま、幸せでいられるって
本当に稀有で、とても難しいバランスの上に成り立っている気がする。


孤独とか寂しさ、辛い死にたい消えたい頑張る生きなきゃ幸せだいすき。全部一緒に共存していて、別にそれは変なことじゃない。

そんなこと思っちゃだめなんて事なくて、
わたしは全部持ちながら、幸せなところに行きたい。


やっぱり、孤独と寂しさは時に必要で、
なんというか、自分だけの小さな部屋みたいな、静かで誰も入れない、1人だけの空間な感じがすきだ。



この先も、

たとえば結婚して、

たとえば子どもができても、 

誰かと一緒でも、ひとりでも、


孤独や寂しさは手放さないまま生きていく。



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