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アパート 【まとめ】

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大人になるまで住んでいた実家が舞台。当時住んでいたアパートの思い出を、りんちゃんと追体験します。
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#小説

君は何を背負うか

君は何を背負うか

 10階建てのアパートはかつてたくさんの子育て世代で満室が当たり前だったものの、少子高齢化と賃貸物件の乱立でその姿はすぐに寂れた。

 すると前触れなく管理会社は空室を埋めるために「精神科シェアハウス」の業者に数フロア貸し出し始めた。
 事前に知らされずどういった形態の事業者なのかも分からないまま。
 そうしてアパート内ではそのフロアに限らず奇行としか言いようのない不思議な事をする人で溢れた。

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犬は吠えるし、人も吠えるので。【アパート番外編】

犬は吠えるし、人も吠えるので。【アパート番外編】

笑い話。あるいは本当にあった怖い話。

事件に際しての情報提供。私が昔住んでいたアパートは動物飼育可。
まだ数年しか住んでないうちに周りで数回引越しがあり、私の入居1年でだいぶ顔ぶれは変わった。

私が入居する時、管理会社から引っ越しの挨拶周りなどはしないように言われた。防犯上の理由と隣人トラブルを回避するためとのこと。

このアパートで顔ぶれが変わる中、
引っ越しの挨拶は一度もない。
でも、生活

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アパート【♯6】

アパート【♯6】

 りんの考える自身の父親とは、気難しいぶってるがどこか抜けたところのある不思議な人だった。
たまに突拍子もない行動をして家族を振り回す。面倒くさいけど面白い子どもみたいな父親だ。



 そんな父親、最近は仕事場が近いらしく家にいる時間が長い。りんにはよく分からないが父の仕事は大工さんで、お家を建てる場所が仕事場だというのはなんとなく分かる。
 りんには寝たきりの妹がいるので在宅で介護をする母親

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アパート【♯5】

アパート【♯5】

 このアパートに決めた一番の利点はエレベーターがついていることだった。
運動機能の衰える難病のせいで歩行どころか首が座ることすらなかった次女。今はまだ幼くベビーカーで事足りているが、いずれは車椅子やベッド状の移動器具に頼る日が来るだろう。

 交通の便もよく、学校などの施設も潤う街に立つ細長いアパート。破格の家賃にしてエレベーターまで完備されているこの物件は大体にして満室御礼だ。



 りんの

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