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イマココの恋人しか知らない

大学生の頃、私は恋人の過去の話を聞きたい人だった。恋人にとっての過去の恋人の話を聞きたいし、子どもの頃の話なんかも聞きたかった。

その話を聞いたところで、目の前の何かが変わるわけではない。でも、私はとにかく聞きたかった。

聞くことで、知りあう前のことを埋めたかったのかもしれないし、恋人の元恋人にマウントをとりたかったのかもしれない。

なんにせよ、恋人の過去を知ることは、私にとっては大事なことだった。


それで、いまの私はどうかといえば、そんな質問はまったくしない。

何も聞かないから、人として興味がないのかと思われるほどに、私は聞いていないらしい。

私はイマココの恋人しか知らなくていいと思うようになった。それが私にとっての、恋人のすべてだから。

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過去を知らなくてもいい


ライフコーチになったり、スピリチュアルなことを知ったりするうちに、私の持つ思考や概念は大きく変わった。

私たちには過去と今と未来があるけれど、究極にはイマココのことさえ考えていればいい、あるいは味わっていればいい。そう思うようになった。


私たちは、今にだけ生きている。

私はたとえばSFでは未来志向が強いので、未来に思考が飛ぶことが多い。でも、私たちが生きられるのは、どうあがいても今だけなのだ。

目の前の恋人とも、私はイマココの時間しか過ごせない。今の時間が過去になって積み上がることはあるけれど、究極には今という時間しかない。

いま目の前にいる恋人は、私のいない過去の時を過ごしてきた。彼にとっての私だって同じ。

過去をどう生きていようと、私たちはイマココにいる私たちに過ぎない。それ以上でも以下でもない。

だから私は、恋人の過去を知らなくていい。結局イマココでは、今の私たちとその関係性にたどり着いているからだ。


イマココの恋人しか知らない


私は彼のことをぜんぜん知らない。

国籍、仕事の業界、兄弟構成、だいたいの家の場所は知っている。年齢は数日前に知ったけど、私が質問したわけではない。

そんな基本的なことを知らないなんて、それでも恋人なの? という価値観もあるのかもしれない。

でも、私は知らなくても問題ない。むしろ、その質問をする時間もなんだか惜しいくらい。私はただ、イマココの彼が好きだからだ。


イマココを過ごす私たちの会話は、その後に覚えているような話の内容ではないことがあるし、取るに足りない話をしていることもたくさんある。

でも私は、それがいい。過去を知って、それを勝手に考察し始めたりしてしまうよりは、純粋に目の前の恋人との時間を楽しみたい。

私は、イマココの恋人しか知らない。過去のことを、積極的に聞き出そうとも思わない。

私はそれがいい。イマココを集中してすごしていれば、私たちにとっての過去が関係性として積み上がる。

私は、それだけでいい。二度と取り戻せないイマココを丁寧に過ごし味わいきり、その積み上げとしての私たちの関係性を作っていけばいい。

私はイマココの恋人しか知らない。これからもこの思考をモットーに、恋人と楽しく一緒に過ごしたい。


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