見出し画像

好きな仕事を辞める勇気

先月の話です。

昼下がりの心地の良い眠りの中、現実世界へと引き戻されるかのように私はある1本の電話で目を覚ましました。

転職エージェントから連絡が来たのです。

「aimaさんに最適なお仕事があるのですが、今どのようなご状況でしょうか?」

私は現在夫の仕事の都合で地方に住んでいます。
ですが、来年の4月からまた東京に引っ越します。

そして、電話を頂いた時は、まだ就職というものに抵抗を感じながらも、どんな可能性があるのか気になっていました。
うつが治っていなくても、もしかしたら在宅で仕事ができるのかもしれない、そう考えていたのです。

私は転職エージェントへ来年に東京へ引っ越すこと、そして今無職であることを告げ、就職に対してどのような可能性があるのかなど聞いてみました。


心の中で、本当にこれでいいのか戸惑いながらも。


「1年のブランクがあるのはちょっとまずいですね。それが日本企業のマイナスなところなんですが、急いで就職をした方が良いです。来年東京へ引っ越されるのでしたら、東京の会社で在宅ワークから始められるところを探しましょう。」

エージェントはもちろん私の病気についても、こちらの事情についても知りません。


“焦り”と“不安”


エージェントの何気ない言葉で、私はこのままでは社会の置いてきぼりにされるのではないかという焦燥感と不安に襲われました。

「在宅ワークから始められるお仕事を参考までに紹介してください。」
気がついたら、私はこう言っていました。


電話を切った後、すぐにエージェントからゲームプランナーを募集している仕事を数件紹介していただきました。どちらも大手の会社でした。


“在宅でできるなら、療養しながら仕事ができるかもしれない。これなら私でもやれるかもしれない”


でも果たして、本当にそうなのでしょうか?
今の私に必要なのは仕事ではなく、うつ病を改善していくこと、健康を取り戻すこと、そして、妊活できる身体作りをしていくことなのではないか?

今の生活は安定していて、生活リズムも整っています。朝散歩も自分のペースででき、運動、食事、睡眠も管理しやすい環境にいます。

ゲーム会社に戻ったら、残業は当たり前の多忙な生活、予算と企画との兼ね合いや人間関係で起こるストレスフルな毎日に戻るのではないか…。

以前も記事で書きましたが、私は自分の仕事に対してとてもストイックでした。周りにも自分にも厳しく、さらに“面白い”や“良作”にとことんこだわって作品づくりに取り組んでいました。側から見ても見なくても確実に“バリキャリ”でした。


仕事が生き甲斐でした。私にできることは、良い作品、感動できる作品、面白い作品をユーザーに届けること。

子供や大人まで、全員が遊ぶゲーム。そのゲームを手に取って遊んで、人生を豊かにしてもらいたい。心動かすほどの感動を得て、道徳や人間の心の在り方を学んで欲しい。

本当に良い作品というものはこの世界でもほんのひと握りしかありません。

だから私は、モノづくりに全身全霊をかけていました。それが私にできることだと思い込んでいました。

きっと、「好き」だったんですね。自分の仕事が。


子供の頃から漫画やアニメ、ゲームが大好きでした。
エンタメではありますが、自分には信念がありました。

日本の漫画、アニメ、ゲームは世界を平和にする。私は子供の時から、多くのことを漫画、アニメ、ゲームから学びました。友情、愛、勇気、人間の魂の質…。
寂しい時も、辛い時も、苦しい時も、これらが救ってくれました。

本当に感動するものは、制作者が思いっきり魂を込めて作らないと出来上がりません。
予算がどうとか、制約がどうとかに縛られてしまったら、それが作品に嫌でも滲み出てしまうのです。

だから、私はとことん納得がいくまでゲーム制作を続けていました。
人々の心を豊かにしたかったから。私が見た景色や経験、愛を詰め込んで、人々の心を愛情や幸せでいっぱいにしたかったから。

ですが、そんな情熱は、色々な制約、予算、人間関係で燃え尽きることもありました。私は自分に嘘をつかなくてはいけない時もありました。それはとても苦い経験でした。


物語を作るのが好きだった。キャラクターを動かすのが好きだった。楽しいを届けるのが好きだった。


そんな大好きな仕事を、私は手放しました。
「好き」を手放しました。

「mocoちゃんがディレクターになったら、きっとすごく良いチームができると思う。私はmocoちゃんの下で働きたい」

たくさんの方がそう言ってくださいました。
デザイナーさん、プログラマーさん。私は彼等に、自分がチームリーダーになったら、その人達の感性や創造力を精一杯活かしたチームを作りたい。ゲームは1人で制作するものじゃない。チームで制作するものなんだ。そう、自分の夢を語っていました。

仕事を通してうつが悪化し、プロジェクトの途中で退職する時も、チームの方に

「最後まで一緒に働きたかった」
「aimaさん、将来ディレクターとしてゲームを制作する際は、是非僕を採用してください」

と声をかけてくださいました。それは私にとって、どんなに心苦しくて、どんなに切なくて、どんなに優しく温かい言葉だったか。


仕事に情熱を注いだ頃の私は、もう過去の私です。
仕事でたくさんの人に傷つけられ、そしてたくさんの人に支えられました。
愛情と憎しみ溢れる職場でした。
これは私の過去のお話です。


今でも仕事がしたい、と思うことがあります。
エージェントから連絡が来たとき、胸がドキドキしました。不安と焦りとこれからの将来にワクワクしました。夢を見て、期待したのです。

でも、すぐに頭の中でこうよぎりました。


私はうつ病だ。今はまだ、仕事をする時じゃない。


私の今の目標は妊娠して子供を産むことです。それが第一優先。仕事よりも大事なこと。
私のエゴかもしれない。でも結婚して、幸せな家庭を夫と築きたくて、今の私がいる。

妊活がきっかけで、うつを本気で治す取り組みをするようになりました。

だから、今は体調を戻すことが優先です。
ゲーム制作は個人でもできます。


好きなことは何歳になったって、いつだってできるのです。


もし妊娠して、子供が産まれたら、更にブランクができてしまいます。その間歳も取ります。
そしたら私は余計に社会の置いてきぼりにされ、もしかしたらもうゲーム業界へ復帰することはできないかもしれません。

組織の中で、チームとしての制作はできなくなるかもしれません。

それでも、私は執着心を手放します。辛くても、悲しくても。未来のために、希望のために。
今はまだその時期じゃないから。


それが私の小さな勇気です。


3行ポジティブ日記:
・今日夫とドラッグストアに買い物へ言ったら、内装が海外のお店みたいで、夫と一緒にテンション上がりました。買い物が楽しくて、必需品とはいえ予定していなかったものまで買ってしまいました。夫が楽しそうにしていると、私も嬉しいです。
・ハローワークへ行って用事を済ませてきました。前回行った時は忙しそうであまり親切な対応をされなかったのでビクビクしていましたが、今回は丁寧な対応をしてくださいました。スムーズに用事が済ませられて良かったです。
・今日はまた頭痛がして、運動ができませんでした。でも、音楽を聴きながら掃除をすることができました。今日は洗面所掃除と床掃除。だるい身体も動かすと少し元気になりました。なんだか嬉しかったです。


最近、雇用にとらわれない生き方もいいなと思い始めています。こういう時に私の英語が武器になるんですね。まだ体調改善に努めたいと思いますが、少し症状が落ち着いてまた働けるようになったら、フリーランスで通訳や翻訳の仕事を視野に入れ始めようと思います。

正直私は英語が嫌いです。でも、私は某テーマパークで通訳の仕事経験があり、その他単発で翻訳の仕事もしました。好きなこととはかけ離れますが、それでもとても素晴らしい経験をさせていただいたことは事実です。英語というスキルと、通訳翻訳の経験を活かして、何か単発で小さなお仕事から始められないかと考えています。

こうやって考えると、「好きなこと」ではなく、「できること」を仕事にするのもありなんだと思考の幅が広がりました。思考の幅が広がると、視野も広くなります。

また英語の勉強を始めないといけないですね。
もしかしたら通訳学校へ行き出すかもしれません。


でも、それもまた昔の私では想像できなかったことなので、新しい挑戦として楽しみです。


それでは皆さま、ここまで読んでくださってありがとうございます。
ゆっくりお休みください。明日が皆さまにとって良い1日でありますように。

おやすみなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?