見出し画像

批評家への序章:梅崎幸吉を論ずるための心構え(一)

武智倫太郎

『評論』『批評』という用語は、文学、芸術、映画などの創作物に適用される分析や評価を意味しながら、その間に微細な差異を有する。

#評論 は作品を広い視野で捉え、その内容やテーマ、 #歴史的背景 #社会的意義 を深く掘り下げることが特徴だ。作品の価値を明らかにし、 #学術的 、或いは教育的手法を屡々用いる。評論家は作品を多面的に分析し、読者や視聴者に新たな視点や洞察を提供することを志す。

 一方で、 #批評 は作品への評価や判断を主とし、その良し悪しに言及する。ここでは #技術的側面 #表現方法 #作者の意図 とその達成度など、具体的な要素に焦点を置くことが常である。批評家は、作品への具体的な評価を下し、その根拠を明確にし、読者や視聴者の理解を深めることを目指す。

 英語では、これらの違いを『Critique』や『Commentary』(評論)と『Criticism』(批評)として表すことがある。評論では作品への広範な分析や解説が、批評では作品の評価や批判が前面に立つ。これらの用語はしばしば交錯し、文脈によっては同義として用いられるが、『Critique』は #建設的な分析 、『Criticism』は #批判的な評価 を意味する傾向にある。故に、英語への翻訳を通じて、その差異をある程度明確にできるが、一対一で対応するわけではなく、文脈によって意味が変わることがある。

 この稿を手掛ける #武智倫太郎 は、『 #無師直感流哲学 』を唱えるほど、深い思索を避け、本を読まずに気軽に考える人物だ。このような立場の私が『梅崎幸吉を論ずるための心構え』と題するに至ったこと自体、『無師直感流哲学』が梅崎幸吉の作品やその人間性の深遠さに敗北を認める証左である。

 だが、この敗北をもって梅崎幸吉論を成立させないわけにはいかぬ #新たなパラドックス が生じる。故に、ここからが『無師直感流哲学』の真骨頂の見せ場である。

 本稿を #梅崎幸吉論 の序章と捉え、 #哲学 よりも #武術 の技法である『 #脱力 』を応用し、敢えて『無師直感流哲学』の本を読まずに深く考えないという原則を一時忘れ、 #梅崎幸吉 の著作を熟読することから始める。これにより、梅崎幸吉論の執筆を通じて、批評のあり方を梅崎幸吉自身に問いかけながら学ぶ #画期的な試み が、この稿の目的である。

 この試みの特色は、現代の著名な批評家が、 #ジャクソン・ポロック の絵画や #カール・ユング の無意識の理論、 #フロイト #精神分析 を如何に論じようとも、彼ら自身から直接の反応を得ることは不可能であるのに対し、『無師直感流哲学』に則った批評においては、梅崎幸吉への批評が適切か否かを梅崎自身に直接問うことで確認、検証し、もし誤りがあればそれを訂正できる #科学的かつ気軽なアプローチ を可能にする点にある。

武智倫太郎 

付録:批評や評論に関連した英語とその語源について

 英語圏で #フランス語 #ラテン語 から多くの単語が導入された背景には、歴史的、文化的、哲学的な要因が深く関わっています。英語はゲルマン語派に属し、古英語時代から存在していましたが、1066年のノルマン征服以降、フランス語がイングランドの支配階級と法律の言語として広く用いられるようになりました。このことが英語にフランス語由来の語彙を大量に取り入れるきっかけとなりました。

歴史的・文化的背景
ノルマン征服:1066年のノルマン征服は英語語彙におけるフランス語の影響を大きくしました。支配階級がフランス語を話したため、政治、法律、芸術、文学などの分野で多くのフランス語が英語に導入されました。

学術と宗教:中世から近代にかけて、学術や宗教の分野ではラテン語が国際的なコミュニケーション言語として使用されていました。科学、哲学、神学などの分野で新しい概念や理論がラテン語で表現され、これらがそのまままたはフランス語を経由して英語に取り入れられました。

哲学的・概念的背景
抽象概念の導入:フランス語やラテン語から導入された単語には、批評、評論、分析、解釈といった #抽象的な概念 #思考プロセス を表すものが多くあります。これらの概念は英語圏内で生まれた哲学的、文学的、芸術的な議論や評価を深めるのに必要な言葉でした。

知識と文化の伝播:中世ヨーロッパでは、学問や宗教のテキストが主にラテン語で書かれており、ルネサンス期にはフランス語が文化や哲学の言語として重要性を増しました。これらの言語からの単語の導入によって、英語圏はヨーロッパ全体の知的遺産や文化的達成にアクセスできるようになり、それによって言語の表現力が豊かになりました。

 英語圏では、特に中世以降、既存の英語だけでは表現できない新しい概念、思想、技術、文化的ニュアンスを取り入れ、豊かな表現力を確保するために外来語を導入する必要がありました。フランス語やラテン語からの単語は、英語の語彙を拡張し、より複雑で精緻なアイデアを伝える能力を高めることに貢献しました。これは言語が社会や文化とともに進化する過程で、外部からの影響を受け入れ、取り込むことの重要性を示しています。

批評や評論に関連した英語の語源

Criticismは、ラテン語の『criticus』(批判的な)と古代ギリシャ語の『κριτικός』(kritikos)から派生し、フランス語を経由して英語に取り入れられました。これは批評や評価のプロセスや結果を指します。

Analysisは、古代ギリシャ語の『ἀνάλυσις』(análusis、解き放つこと、解析)から来ており、ラテン語を経由して英語に入りました。詳細な検討や分解を意味します。

Interpretationは、ラテン語の『interpretari』(説明する、翻訳する)から派生し、フランス語を経由して英語に取り入れられました。これは、あるものを説明したり解釈したりする行為を指します。

Evaluationは、ラテン語の『evaluare』(価値を見出す)から来ており、フランス語を経由して英語に入りました。価値や重要性の判断を意味します。

Commentaryは、ラテン語の『commentarium』(注釈、解説用のノート)から派生し、フランス語を経由して英語に取り入れられました。文書や発言に対する詳細な説明や解説を指します。

Critiqueは、フランス語の『critique』から直接取り入れられ、古代ギリシャ語の『κριτική』(kritikē、批評)に由来します。批判的な評価や分析を意味します。

Appraisalは、ラテン語の『appraisare』(価値を評価する)から派生し、中英語を経由して英語に入りました。価値や品質の評価を指します。この単語はフランス語を経由しているというよりは、ラテン語由来の中英語を通じて英語に入ったと考えられます。

Observationは、ラテン語の『observatio』(注意、尊重、監視)から派生し、フランス語を経由して英語に取り入れられました。注意深い監視や研究を意味します。

Opinionは、ラテン語の『opinio』(意見、推測)から派生し、フランス語を経由して英語に取り入れられました。個人的な見解や信念を指します。

Reflectionは、ラテン語の『reflectere』(曲げ戻す、反射する)から派生し、フランス語を経由して英語に取り入れられました。考えや意見の表明、または物事を熟考するプロセスを指します。

Satireは、ラテン語の『satura』(混合料理、皿一杯の果物などの意)から派生し、最終的に英語に取り入れられました。社会、政治、個人に対する風刺的、皮肉な批判を意味します。

Ironyは、ラテン語の『ironia』から来ており、これはさらに古代ギリシャ語の『εἰρωνεία』(eirōneía、仮面をかぶる、隠れた意味)に由来します。言葉と実際の意味との間に差がある状況を指します。

Deconstructionは、『解体』を意味するフランス語の哲学的概念の『déconstruction』から英語に取り入れられました。 #ジャック・デリダ によって提唱された思想で、テキストや概念を分析し、隠された意味や矛盾を明らかにする方法論を指します。

Dissectionは、ラテン語の『dissectio』(切断、解剖)から派生し、詳細な分析や解剖を意味します。主に科学的な文脈で用いられますが、比喩的に批評や評論での深い分析を指す場合もあります。

#武智倫太郎の豆知識

この記事が参加している募集

わたしの手帳術

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?