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パラドックスとジレンマ:AIの意思決定を理解するための重要な鍵

 世界中には様々な法律、条例、規則、ガイドラインが存在しています。ガイドラインのカテゴリーだけでも、安全ガイドライン、品質ガイドライン、衛生ガイドラインなど多数あり、これらの分野の一つに倫理ガイドラインがあります。然しながら、ガイドラインは通常、法的拘束力を持たないため、重視していない人が多く、そもそも倫理ガイドラインの存在すら知らない人の方が圧倒的に多いです。

 倫理ガイドラインはさらに細分化すると、以下のように様々なガイドラインがあり、これらのガイドラインに違反すると、国際的な大企業でも破産や倒産に追い込まれる一因や、社会問題の発端となることも少なくありません。軍事や諜報活動に関係した倫理問題は、様々な国際条約に加盟していなくても、経済制裁や戦争の大義名分として使われる可能性があり、戦争に発展することさえあるほど倫理問題は重要なものです。

 気候変動問題は昨年まで世界中の経営者の最大の関心事として取り上げられており、これは環境倫理問題の一部として認識されています。二番目の関心事として取り上げられていた新型コロナウイルス対策は医療倫理問題と関係しています。

 2023年に入ってからこれらの倫理問題よりも重要視されているのが、AI倫理問題であり、G7やG20サミットや、ビルダバーグ会議などで、気候変動問題よりも優先度の高い最重要問題として取り上げられています。

 国際的な取り組みが重要視されている倫理問題には、環境倫理、医療倫理、兵器関連倫理、人権倫理、情報倫理(データプライバシーと情報セキュリティを含む)、経済倫理(ESG投資など)、研究倫理(遺伝子編集技術やAI研究など)、宇宙利用倫理など多数あります。
 
 AI倫理問題が環境倫理問題や他の課題と並んで重要視されるようになった背景には、AIが環境、医療、人権問題に留まらず、一次産業からマスメディア、一般生活に至るまでのあらゆる分野に影響を与えることに起因しています。

AI倫理問題の理解に役立つパラドックスやジレンマ問題

 AIを理解し、その応用範囲を拡大する中で、特にAIの判断や動作に関するパラドックスやジレンマは頻繁に議論されるテーマとなります。これらの問題を理解することが、AI倫理やAIガバナンスの理解にどのように役立つかについて、以下に説明します。

具体的な問題意識の形成:パラドックスやジレンマは、抽象的な考えや理論を具体的なシナリオで考えるためのツールです。例えば、『自動運転車が事故を回避する際の判断基準は?』といったジレンマを考えることで、AIが直面する実際の問題や課題をイメージしやすくなります。
 
倫理的価値の議論:パラドックスやジレンマを考えることで、人々がどのような価値観や優先順位を持っているのか、そしてAIがどのような価値観を持つべきかについての議論が生まれます。このような議論は、AIの設計やガイドライン作成の際に不可欠です。
 
技術的制限とのバランス:すべてのジレンマやパラドックスが技術的に解決可能ではありません。これを理解することで、技術的な可能性と社会的・倫理的な要求との間でのバランスを取ることの重要性が明らかになります。

多様なステークホルダーの視点:一つのジレンマやパラドックスに対して、さまざまなステークホルダーが異なる意見や立場を持つことが明らかにできます。この多様性を理解することは、AIガバナンスの際に必要な多角的な議論を行う上で役立ちます。
 
予期せぬ結果への備え:AIがジレンマやパラドックスのシナリオに直面した場合の反応を事前に想定することで、予期せぬ結果やリスクを早期に検知し、対策を考えることが可能となります。

 これらの観点から、パラドックスやジレンマ問題を深く理解することは、AI倫理やAIガバナンスを考え、形成する上で非常に有益と言えます。これにより、技術の進化と社会の要求を適切にマッチさせる方向へと進める手助けとなります。

 AIとパラドックスやジレンマに関する問題を考えることは、『未来の技術の先取り』、『哲学的な問い』、『物語性の豊かさ』、『技術的な挑戦』、『人間の理解の拡大』など知的好奇心を掻き立てる要素に満ちています。AIとパラドックスやジレンマの関係を考えることは、単に技術的な問題だけでなく、人間の哲学、倫理、価値観など、多くの面での興味深いテーマです。
 
 そのため、AI無知倫理学会では頻繁にパラドックスやジレンマの問題を取り上げていますが、多数のクリエーターが参加するnoteの読者の間で、このテーマに人気がない理由が不思議です。 




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