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MENA(中東・北アフリカ)専門家によるイラン解説 I

 皆さまもお気付きかも知れませんが、 #イスラエル #イラン 間の緊張が戦争勃発寸前に達しています。欧米に住んでいると感じることがありますが、この地域のニュースは新聞やテレビで日常的に報じられており、中東情勢がメディアの大きな割合を占めています。

Google Map イラン周辺地図

 これに対し、日本の首相の発言が欧米のニュースで取り上げられることは殆どありません。

 10ヵ国以上に滞在経験のあるKyoさんは、日本の首相が海外のメディアで取り上げられることが珍しいという事実をよく理解されています。そのため、彼女のような有識者は、日本の首相が海外で報道されているのを発見すると、各国の報道内容を以下のように比較してしまうほどです。

 一方で、日本は化石燃料の多くを中東諸国に依存しているにも関わらず、国内の中東報道は非常に限られています。その内容も、殆どが欧米メディアやイスラエルの報道を中途半端に要約したものであり、私の観点からは偏向していると感じることが多いです。そこで、本日から #MENA 専門家として、欧米や日本のマスメディアが報じない中立的な視点で #イラン情勢 を解説します。

MENA地域とは?

 MENAは『Middle East and North Africa』の略称で、 #中東 および #北アフリカ 地域を指します。この地域は #モロッコ からイランに至るまで広範にわたり、多様な文化、宗教、経済が存在します。MENA地域では、 #アラビア語 を主要言語とする国々が多く、 #イスラム 教が広く信仰されているのが特徴です。

 私の専門分野は情報工学、環境・エネルギー・資源学、資源経済学などであり、これまでの記事でこれらの学問領域がどのように関連しているかを説明してきました。

 資源経済学では、資源産出国を含むグローバルな視点から経済を考察しています。特に、日本のような資源をほとんど産出していない国は取り上げていません。その理由は、日本における国産化石燃料の生産量が全体の化石資源使用量と比較してごく少量であるため、日本の地質学に焦点を当てることは少ないからです。代わりに、化石燃料やその他の資源が豊富な国々の #地質学 #地政学 に焦点を当てています。

 主要な化石燃料産出国にはロシア、アメリカ、カナダ、ベネズエラ、ブラジル、マレーシア、オーストラリアなどがありますが、私の専門地域はMENA地域と #アフリカ の北部から南部にわたっています。

日本のマスメディアによる非常識なイランの常識

 MENA地域内でイランは特に注目すべき重要な国です。イランはシーア派イスラム教の最大の拠点であり、地域の政治、経済、文化に大きな影響を及ぼしています。イランの政治体制はイスラム共和制であり、多様な民族グループと豊かな歴史が存在します。日本のメディアでは時として、 #イスラム教 の二大宗派である #スンニー派 #シーア派 の違いについての誤解が生じがちです。例えば、シーア派を過激派、スンニー派を穏健派と誤って解説することがありますが、このような分類は正確ではありません。

 この誤解の深刻さを理解するために、 #キリスト教 #仏教 の情報が日本に広く浸透していることを考えてみましょう。例えば、キリスト教で #プロテスタント を過激派、 #カトリック を穏健派と解説するのは明らかに無意味です。同様に、仏教において日蓮宗を過激派、真言宗を穏健派と述べると、常識を疑われるでしょう。イスラム教においても、スンニー派とシーア派の間の比較は、プロテスタントとカトリックの間で過激さを論じるほど的外れなのです。

イランの経済と文化

 イランは天然資源が豊富で、特に天然ガスと石油の埋蔵量が顕著です。これにより、エネルギー市場、特に石油市場でイランは重要な役割を担っています。しかし、国際的な経済制裁と地政学的な緊張が経済に影響を与え、イランの国際関係は複雑化しています。

 文化的にもイランは #ペルシア 文明の継承者として、豊かな芸術、文学、映画が国内外で高く評価されています。特にイランの映画は国際的に認知され、多くの国際映画賞を受賞しています。

 MENA地域の中でも、イランはその独自の政治体制、経済の潜在力、文化的遺産によって際立っています。地域内外の多くの課題に直面しながらも、イランは中東および世界の舞台で重要な役割を果たし続けています。

スンニー派とシーア派に関する歴史的背景

 シーア派とスンニー派は、イスラム教の二つの主要な宗派であり、それぞれ異なる歴史的背景、信仰体系、宗教的慣習を持つことで知られています。以下に、それぞれの宗派の特徴と主な違いについて説明します。

スンニー派:イスラム教創始者、ムハンマド預言者の死後、彼の後継者として指導者(カリフ)を選出する過程で形成された宗派です。スンニー派は、コミュニティ(ウンマ)の合意に基づいてカリフを選ぶべきだと考え、これが主流派となり、世界のムスリム人口の約85%を占めています。

シーア派:シーア派は、ムハンマド預言者の従兄弟兼婿であるアリーとその子孫が正当な指導者であると信じることから始まりました。彼らは『イマーム』と呼ばれる指導者が神からの直接の啓示を受けると考え、彼らだけがコミュニティの真の指導者であると主張します。

信仰体系と慣習:スンニー派は、ハディース(預言者ムハンマドの言行録)とスンナ(預言者の伝統)を重視し、これらを日常の宗教実践と法の解釈において中心的な役割を与えます。一方、シーア派は、12人のイマーム(特に十二イマーム派)の教えと彼らの権威を特に重視します。シーア派にとって、これらのイマームは罪がなく、誤りを犯すことがない存在とされ、彼らの言葉と行動が最終的な宗教的権威を持ちます。

宗教的行事:スンニー派は主要なイスラム教の祭りとして、ラマダン月の断食やその締めくくりのイード・アル=フィトル、犠牲祭であるイード・アル=アドハーなどを祝います。一方、シーア派はこれらの祭りを祝う一方で、ムハンマドの孫であるフサインのカルバラでの殉教を悼むアーシュラーという行事が非常に重要です。アーシュラーはシーア派にとって深い宗教的意義を持つ日とされ、悲しみと追悼の行事が行われます。

地理的分布:スンニー派はサウジアラビア、エジプト、トルコ、インドネシアなど世界中の多くの国に広がっています。シーア派はイラン、イラク、バーレーン、レバノンの一部など、特定の地域に集中しています。

 これらの違いにもかかわらず、スンニー派とシーア派はコーランとムハンマド預言者を共通の信仰の基礎としており、多くの基本的な信条と宗教的慣習を共有しています。

つづく…

#武智倫太郎

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