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緑にゆれる(ロングバージョン)

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長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
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#写真

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.2 第一章

第一章 「よし、終わった。ね、もう行ってもいい?」  圭が、最後のシールにはんこを押しつ…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.3 第一章

 秀幸さんとは、勤めていた都内のクッキングスタジオで出会った。「男のための料理教室」。上…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.4 第一章

 美晴が秀幸さんの一人暮らしのマンションのキッチンに立ったのは、それからさして時を経なか…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.5 第一章

  ***  鎌倉ロケも最終日を迎え、午後も早いうちに撮影は終わった。  カケルは、仕事…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.6 第一章

 小さな店内は、温かい静けさに満ちていた。南に開いた大きな窓から、日差しがたっぷりと入っ…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.7 第一章

 夕ごはんも食べていって、と言われて、そのまま夜までごちそうになった。 「ランチの残りで…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.8 第一章

 そのとき、彼女は立ち止まって、小さく、あ、と声を漏らした。 「どうした?」  カケルも思わず、立ち止まった。 「いえ、こっちの話です」 「何だよ」  そう言うと、彼女は、少しいたずらっぽい視線をこちらに投げかけた。 「何日か前に、夢を見て。最後に出てきた人、それが誰だかその時はぼんやりしていて分からなかったけど」  美晴は、少し照れたようにうつむいた。 「カケルさんだった」  そう言って、また、いたずらっぽい目でこちらを見た。 「予知夢、だったのかな」

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.9 第二章

   第二章  このピアスをするのは、久しぶりだ。鏡に向かって、ピアスをつけたあと、マリ…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.11 第二章

 ふいに、おそろしく虚しい気分に襲われた。ぽかーん、とした昼間。みんな忙しく自分の世界で…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.12 第二章

「どうしたの? こんな所で」  肩越しにこちらを振り向いたカケルは、少しだけ眉間にしわを…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.13 第二章

 カケルは、リラックスした様子で、マリを見て、そのまま緑に目を移している。 「この間、美…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.14 第二章

 このとき、今まではっきりと形をとっていなかった疑念が、マリの頭の中に、くっきりと浮かび…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.15 第二章

 カケルは、椅子の背もたれに寄りかかって黙って話を聞いている。 「働いていたときは、同じ…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.16 第二章

 うつむいて黙っていると、カケルが場の空気を変えるように笑った。 「何で、お前が深刻になってんだよ」  え、と顔をあげた。風がかさこそと緑をゆらし、かすかに薫った。 「今、思い出したけど」  カケルの目が、かすかにきらっと光った。 「冬の木立の中で、あなたとは一緒に行けない、って言われたとき」  マリは、思わず赤くなった。別れるとき、マリはカケルにそう言ったのだ。 「あれは、見事だったよ。あの、鮮やかさ」  カケルは、気まずい思いをしているマリの様子を楽しむよ