【連載小説】「緑にゆれる」Vol.16 第二章
うつむいて黙っていると、カケルが場の空気を変えるように笑った。
「何で、お前が深刻になってんだよ」
え、と顔をあげた。風がかさこそと緑をゆらし、かすかに薫った。
「今、思い出したけど」
カケルの目が、かすかにきらっと光った。
「冬の木立の中で、あなたとは一緒に行けない、って言われたとき」
マリは、思わず赤くなった。別れるとき、マリはカケルにそう言ったのだ。
「あれは、見事だったよ。あの、鮮やかさ」
カケルは、気まずい思いをしているマリの様子を楽しむよ