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昼間鈍行(12)美(観+酒+食)=倉敷、の回

2015年8月20日
21:43 岡山県 某カプセルホテル

カプセルホテルとはご存知の通り大きめの棺桶みたいな長方形の箱型の小部屋に布団が敷いてあって、人ひとりが一晩過ごすくらいであればちょうど良いアレである。

ただ、利用した経験はなく、若干怖いような気もしていた。

友人が一度、音楽フェスに参加すべく群馬から東京へ遊びに来て、宿代を節約するためにカプセルホテルを使ったことがあるという。自分のカプセルの入り口にかかったカーテンをサッと開けると、見知らぬおっさんが横たわっており、友人もさることながらおっさんも仰天したらしい。冬眠から起こされたクマのごとくおっさんはカプセルの中で飛び上がり、友人はパニックのあまりピシャリとカーテンを閉めた。

「はて自分のカプセルになぜ」と部屋番号を見ると全然違う他人のカプセルだったとのこと。友人100%の過失だった。おっさんからしてみればのんびりと自分の穴ぐらの中で横になっていたら、見ず知らずの若者に突如として出入り口を開けられ、塞がれてしまったのだ。おっさんの恐怖も推して測るべきであろう。

この利用者次第で事件にもなりうるガバガバの運用スタイルが怖くもあり、ちょっと体験したくもあって、旅費が心許なくなってきた今、利用しない手はないと考え岡山駅前のカプセルホテルを予約した。

今、カプセルの中で横になってこのメモを書いている。

呉を出て数時間、ぼくは岡山の倉敷に着いていた。「美観地区」と呼ばれる江戸時代の伝統的な建築物が保存された街区を散策する為だ。

あたりは既に薄暗く、駅に掲げられたJR西日本の青いロゴマークが綺麗に光っている。

駅から数分もあるけば美観地区である。白塗りの壁は街灯に照らされ美しく光っている。日も暮れたというのに街の印象は"白"だ。さながら映画のセットのようである。いつ辻斬りに襲われてもおかしくない、そんな雰囲気が漂っていた。

地ビールが美味しい店がある、と事前に調べていたので、足早にまっすぐそこへ向かう。お店は"蔵びあ亭"といった。

カウンターに腰を落ち着けると、店員のお姉さんが「好きな系統をざっくり言ってくれればぴったりの地ビールを出す」というので、「スッキリ系で」と答える。すぐに"ケルシュ"というドイツビールを出してくれた。確かに苦味少なく後味も変に残らないさっぱりした味わいだった。

つまみに"砂肝の柚子胡椒炒め"や"つくね"を注文する。どれも塩っ気が強く、ビールが進む。今度はクセあるやつを飲んでみたいと思い、"ナイト"と呼ばれる8%のビールを頼んだ。こちらは後味が濃く、飲んだ時に鼻から抜けるアルコール臭が強く感じられた。

店内は古民家をそのまま活用したような情緒ある雰囲気で、照明もなんとなく薄暗く、19世紀の倉敷の一角を想像させるような魅力があった。

数杯の後、"蔵びあ亭"を後にしたぼくは、予約した岡山駅前のカプセルホテルに向かうべく倉敷駅へふらふらと向かった。

***

(GoogleMapから)


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