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19YEARS

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19年一緒に暮らした最愛の夫を亡くし、心の空洞から逃げられなかった日々。 少しずつ立ち直っていく過程で、19歳年下の男性と出逢いました。(ほぼノンフィクション)
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2020年4月の記事一覧

19YEARS #4 体ではない存在

19YEARS #4 体ではない存在

←3より

2013年5月
すすむが天に召されて、一年と少しが過ぎた。最近、不思議なことがたびたびある。

あまりにもはっきりと聞こえる彼の声。
「あっこー。なに泣いてんの。俺ここにいるよ」
「そんなにがんばるな。プリンでも食っとけ」
耳のそばで話しかけられているくらい近いその声が聞こえるたび、戸惑う。空耳かと思うのだけれど、なんどもあるので、だんだん慣れてきた。そしてついに会話するようになってき

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19YEARS #2 心の流血

19YEARS #2 心の流血

←1より

2012年夏。

目が覚めて、部屋を見わたす。やっぱりひとりだ。あの人のいない世界。なぜ目が覚めてしまったのだろう。

ライが、しきりに顔を舐めてくる。否応無く、散歩に連れ出される。リードにぐいぐい引っ張られながら、外の空気を吸いながら歩くと、夏休みのにおいがした。
この子は、私の心に一番近いところにいつもいた。そして、一緒に深く傷ついていた。ライにとってはもう私しかいない。私にとって

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19YEARS #1 最期の日の記憶

19YEARS #1 最期の日の記憶

2012年5月16日午後。

体温計は34.2℃を示していた。
「壊れてるんですかね。34度なんて変ですよね」
巡回の看護師さんに話しかけてみる。看護師さんはうなずいてみせたが、返事はなかった。ただ、笑顔でかいがいしく夫の体を世話してくださる。

わたしは朝から、女ともだち数人と一緒に、夫のベッドを囲んでいた。眠っている夫を見ながら、穏やかに、おしゃべりしたり笑ったり。毎日のように誰かしらお見舞い

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19YEARS #前書き

19YEARS #前書き

プロフィールを本名に変えました。小林昭子と申します。
夫であった小林すすむが亡くなり、もうすぐ8年が経とうとしています。
すすむはこんな人→wiki

先日、現パートナーに結婚を申し込まれました。これを機に、すすむが天に召されてから今日までのことをありのまま書こうと思います。パートナーシップとお互いの変貌についてのストーリーになるかと思います。

写実画のように、写実文を書くのが好きで、多分得意な

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