不器用な父と、不器用な娘と、その妻であり母である彼女の話。
初任給といえば、家族になにをしてあげようか。
わたしの職場がそんな話題で持ちきりになったのは、ちょうど今から1年前のことだった。銀行のアプリを開くと、たしかに入社してはじめての「給与」が入金されている。新卒の同期が多い職場だったから、みな一様に浮足立って、家族を喜ばせるべく作戦会議がはじまっていた。
わたしはそれを横目に見て、適当な相槌でかわし続ける。パソコンを叩く手は止めない。面と向かって家族になにかしようだなんて、しかも一緒に住んでいる家族にだなんて、照れくさくてそわ