見出し画像

ブロックチェーンへの深い探究心を持つ男【フィンテックエンジニア養成読本】

フィンテックエンジニア養成読本』を10月5日に出版しました。この本は、これからフィンテック関連の仕事に携わりたいと考える方や現役の金融業界のビジネスパーソンに向けて,最新の事例をもとにフィンテック関連技術とサービス事例を解説することで,フィンテックの全体像をつかむことを目指しています。この出版を機に書籍の内容を紹介していきたいと思います。

わたしとブロックチェーン(志茂さん)の出会い

私がブロックチェーンに興味を持ったのは、今から4年前の2015年の春頃だったと思います。

まだそのころはビットコインやブロックチェーンの紙の本はありませんでした。唯一、大石哲之さんが自費出版した電子書籍が4,5冊ありました。この本は丁寧でとてもわかりやすい本でしたが、当時の私は一般のインターネットやクラウドの考え方しか理解できず、これがすぐに頭に入りませんでした。それでも、何度も読み直して理解しようとした記憶があります。

すると、ちょうどタイミングよく、ビットバンク株式会社がビットコインの勉強会を渋谷で開催し始めました。場所はConnecting The Dotsというシェアオフイスです。この"Connecting The Dots"という言葉は、点を繋げばやがて線になるという意味で、スティーブ・ジョブズ氏が、スタンフォード大学の2005年の卒業式で行ったスピーチの中の格言でもあります。私は、この施設名を聞いただけで鳥肌が立ちました。そして、何度も通いました。するとそこで今回の書籍でブロックチェーンの章を執筆した一人である志茂博(当時はコンセンサス・ベイス合同会社の代表)さんと出会うことができました。 

この勉強会の講師は、現在は、ブロックチェーン大学校の学長(兼 代表取締役)をしているジョナサン・アンダーウッド氏です。ジョナサン氏はビットバンクの技術顧問をしており、ビットコインの技術に詳しく、何でも教えてくれます。

志茂さんは、出会った当時からビットコインのことが詳しく、彼からもいろいろ教えてもらいました。逆に彼も気になることがあれば、何でも尋ねてくるのが印象的でした。とにかく自分が納得するまで相手に問い詰め、自らも調べまくります。そうです、とにかく追求するのです。そして、それがわかると嬉しそうに後でみんなへ教えてくれます。私は、「この男のブロックチェーンに対する探究心は計り知れないな。」と、この頃からずっと彼に注目していました。

雑誌の取材協力

もう一つのきっかけは、「Etherium & the Power of Blockchain 分散の力 ヴィタリック・ブテリン、かく語りき」という記事への取材です。私は、このWIREDの記事に少しだけ協力しました。と言っても、ヴィタリックがまた来日するのでWIREDへ取材した記事を出して欲しいと提案しただけです。それで、志茂さんにヴィタリックとのアポイントなどをサポートしてもらったのです。

その後も、様々な勉強会でご一緒したり、今でも時々みんなで集まって意見交換をします。このような繋がりもあり、ブロックチェーンの原稿はコンセンサス・ベイス株式会社にお願いしたいと最初から心の中で決めていました。また、コンセンサス・ベイスからもブロックチェーンの技術書が出版されています。タイトルは「図解即戦力 ブロックチェーンのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書」です。とても分かりやすくて、初心者にはお勧めな内容です。

執筆依頼

ただ、実際に執筆を依頼する時には、一つ大きな問題がありました。それは、”ブロックチェーンエンジニアには仕事の引き合いが多すぎて、なかなか執筆に時間がとれない。”という問題です。そんな状況にも関わらず、今回の執筆を快く引き受けてくれたので、もう感謝の言葉しかありません。コンセンサス・ベイス株式会社 代表の志茂さんと、コンサルティング部長の半田 昌史さんの2名で分担して執筆してもらいました。

出来上がった原稿は、ページ数が限られているにもかかわらず、基本的な説明がわかりやすく書かれています。この中でもとくに重要なのはP2Pネットワークスマートコントラクトです。

P2PはPeer to Peer の略です。Peerは「対等」の意味であり、中央サーバを経由せず、1 対1 の対等な関係で通信することをいいます。
従来のクライアント/サーバ型の通信方式では、1 つのサーバにデータを保存し、そのサーバに対して個々のユーザが通信します。クライアント/サーバ型の通信方式では、ユーザ同士が直接的に通信することはありません。そ
れに対してP2Pネットワークでは、「ノード(node)」と呼ばれる各コンピュータがクライアント、サーバ両方の役割を果たし、分散的なネットワークを形成します。
(「フィンテックエンジニア養成読本」第2部第5章ブロックチェーン出現による金融業界への衝撃より引用)
スマートコントラクト(smart contract)とは、広義には「取引における契約・執行を自動で行うしくみ」全般を指します。また、ブロックチェー
ンの文脈では「ブロックチェーン上に配置された自律的に動作するプログラム」のことを意味します。
(「フィンテックエンジニア養成読本」第2部第5章ブロックチェーン出現による金融業界への衝撃より引用)

余談ですが、私はP2Pの技術を追求しているうち、3年前からlibp2pIPFSのWeb3関係のオープンソースプロジェクトに興味を持ち、ビットコインやイーサリアムよりも基盤技術寄りの調査や開発をしています。

libp2p:簡潔に説明するとP2P Network を構築するための仕様が、goやpython用の様々なライブラリも開発されている。尚、イーサリアムのP2Pはdevp2pなので別のものになります。
IPFS(InterPlanetary File System):簡潔に説明すると「ハッシング」と「P2Pネットワーク」を融合させたファイルシステム。

書籍では、フィンテックのテーマに関するICOSTO、暗号資産以外の金融事例まで網羅されています。さらに最近話題になりつつ「分散型金融」についても解説があります。

分散型金融(Decentaralized Finance、しばしばDeFi(デファイ)と略される)とは、銀行や証券会社などの金融機関を介さずに、ブロックチェーン上でユーザに金融サービスが提供されるしくみです。オープンファイナンス(OpenFinance)とも呼ばれています。これまで金融サービスでは、証券会社や銀行などの中央集権的な機関による仲介が不可欠でした。銀行の融資であれば、まず銀行が利用者からの預金を集めて、借りたい人・組織に対して融資を行います。その融資金額は、銀行による与信審査・信用リスク評価に見合った額となります。しかし、分散型金融の場合は、それらの仲介する金融機関の役割をすべてスマートコントラクトが担うことで、透明性の高い金融サービスが提供されます。
(「フィンテックエンジニア養成読本」第2部第5章ブロックチェーン出現による金融業界への衝撃より引用)

自律分散型社会への転換

さて、少し話題が変わりますが、最近、「世の中は、さまざまな偶然でできているのでは。」と、つくづく感じることがあります。でも、その偶然とは、自分の足で動き回って出会えたものですよね。できるだけ素晴らしい偶然に出会うためには、一箇所に集中して突き詰めるだけではなく、いろいろな場所に顔を出した方が、チャンスは劇的に増えます。そして、その動きは、ブロックチェーン技術にも少し関係しています。集中型の技術から、自律的な分散型技術へと舵が切り替わりつつこの動きは、実は現代社会にも同期しているのではと。自発的に組織の壁を超えて活動するほうが、より楽しい人生に出会える機会にめぐりあえるからです。自律的かつ安定的に自己運動できる動きが活発になれば、今の日本社会の働き方への不満解決にも繋がり、下手すれば窮屈な都心での生活を逃れ地方経済が発展する可能性も大いにありえます。

このブログを読んでいただいた方に伝えたいことは、社会や個人が自律的に分散しながら変化しようとする動きに合わせて、ブロックチェーン技術が注目されているということです。ブロックチェーン自身は単なる技術ですが、技術はいつも社会を変化させてきました。今一度、自分の固定概念を捨てて、こういった社会やビジネスの変化についても意識していただければ幸いです。

今回はフィンテックエンジニア養成読本の中から、第2部5章『ブロックチェーン出現による金融業界への衝撃〜ブロックチェーンの基礎知識と金融分野でのユースケース〜』を執筆したコンセンサス・ベイス株式会社 代表の志茂博氏とのエピソードについて紹介しました。私にはブロックチェーンの知り合いが大勢いますが、その中から、何故、コンセンサスベイス株式会社に執筆してもらったか分かりましたでしょうか。

電子版で欲しい方はkindle版も同時発売されたのでこちらをご購入ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?