届くことのない想いが舞う -塩田千春 @京都精華大学55周年記念展「FATHOM」
京都精華大学55周年記念展(-2023.12.28)
10月に上洛した際に情報を知り、
会期末に駆け込みで観ようと決めて、それが叶った。
京都精華大 ギャラリーTerra-Sへ
2019年の塩田千春展@森美術館。当時、今のように写真は撮っていなかったけれど、年パスは持っており、何度も訪ねた。
今回の会場は作家の母校、京都精華大。京都市営地下鉄の終点、「国際会館」駅が最寄りだ。接続のバスを探して係員の方に聞いたところ、スクールバスが運行中で、大学関係者でなくても利用できるとのことだった。
年末の学内のようす。
3人展、なのだけど、今回は塩田作品を。
数えきれないほどの赤色の糸。予想を裏切らない、塩野千春ワールド。
このようなインスタレーションが、会場いっぱいに展開されていた。
流れるよう、舞うように、白い紙がに吊るされている。
それらは、
手紙だ。
届くことのない想いが浮遊する
天井を見上げれば、
くらくらするような数の、規則的な赤い結び目と、垂れさがる紐。
そこに、うまくとらえられている手紙たち。宛先に配達される以前の、届かない想い。
ひとことの説明がなくとも、文字通り作品世界に入り込み、自らの心までもを作品の中に入れてしまう。足を止めて文面を読み、書き手の心を知り、その心の中に降りていくこともできるだろう。
話す言葉も習慣も超えた作品。それは作家の長い海外生活のゆえだろうか。鑑賞者の忘れていた記憶すら思い起こさせ、作品のなかにさらに没入させていく。
人影もまばらな年末の展示場で、たくさんの人の気配のようなものを感じた。それは、1枚ごとの手紙に込められた、想いだろう。
綴られた言葉は会場を浮遊し、しかし外に出ていくことはない。鑑賞者を満たしては、そこから生まれた感情を吸収して再び展示室に放っていく、そんなようすを想像した。
展示室を後にすれば、そこは冬の青空。
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