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ギャラリー,イベントで出逢った作品

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偶然の出逢いも含めた、ギャラリーやイベントで出逢った作品たちを紹介した記事をまとめたマガジンです。
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記事一覧

静と動の均衡点 -[未来のかけら: 科学とデザインの実験室]03

「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」@21_21 DESIGN SIGHT  内容、展示数とも盛りだくさんで、今回はその3回目(=最終回)。 A-POC ABLE ISSEY MIYAKE+Nature Architects  まずA-POC ABLE ISSEY MIYAKE×Nature Architectsによる、1枚の布からできたブルゾンの制作プロセスを。  つまり、下の写真のマネキンの背後の布が→スチームストレッチ技術によって、マネキンが纏うブルゾンに

機械と身体 -[未来のかけら: 科学とデザインの実験室]02

 「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」@21_21 DESIGN SIGHT 比較形態学 本物の骨と、骨格模型を取り混ぜた展示品たち。  「関節」は、産業ロボットの腕でいえば「軸」にあたる、重要な部分。「関節する」という違和感のある書き方も、たしかに「関節」+「する」のだ、という納得感がある。  自分も一つ持ち、使っていながらも、日ごろ「頭蓋骨」を意識することは、ほぼないけれど、  例えば、こちらの頭蓋骨は本物で  こちらはフェイク。  自由に触れることがで

ロボットとデザイン -[未来のかけら: 科学とデザインの実験室]01

 某日、乃木坂~六本木。 「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」@21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2 (~9/8) 科学とデザインの間 本展では特に、開催の意図とディレクターの言葉は重要なので、はじめにそれらを、自分のなかで整理しようとした。  タイトル「未来のかけら」のイメージはできただろうか? と確認してみる。 Cycroplos & tagtype  入口付近に展示された1作品目は、ディレクターの言葉に近づくための一歩となるような作品

フレームとその内部 -セルバン・イオネスク[Lisi]@NANZUKA 2G

 某日、渋谷。  セルバン・イオネスク「Lisi」(– 7/7)@NANZUKA 2G ポップなフレームに目を奪われて  今回の展示は6作品。  作品は原色の赤、青、黄のフレームに入っており、否応にも目を引く。フレームは帽子のようにも山のようにも、建物のようにも見える。 家と、その内部  ところで、描かれている人物?というか存在なのだけど、  目を奪われがちなフレームから視線を外して描かれているそのものを見るならば、そこにはまた別の印象がある。  描かれている

持続する線と身体性 -新井 碧 [AVOWAL]@Tokyo International Gallery

 某日。品川から天王洲アイルへ。  AVOWAL(〜6/29)@Tokyo International Gallery 生きてきた身体の記憶 1年の時間を経て  新井碧作品を初めて鑑賞したのは、昨年6月、銀座の蔦屋書店の個展だ。そのときの展示作品を思い起こしてみれば、展覧会概要のなかの「より身体の機能にフォーカスしたモチーフを描いた新シリーズの作品」という意味合いもわかる。  当時のnoteに、こんなふうに書いた。  1本1本筆跡の追体験に加えて、今回はその筆を繰

[虚構という現実]経由[虚構という現実] -グループ展”BOLMETEUS” (-6/23)

 某日、渋谷のMIYASHITA PARK。  多数のアーティストが参加しており、この展覧会も全体の世界観を味わうものと捉えた。ウエブサイトを出典とし、どんなアーティストが参加しているのか、そのプロフィールと作品の写真を、まず。 GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(ギロチンドックスギロチンディ) 横手 太紀(Taiki Yokote) 梅沢 和木(Kazuki Umezawa) Hanna Antonsson(ハンナ・アントンソン) Hyunwoo

内面の闇,そして希望 -大河原愛[静けさの内に留まる羊は,いかにして温もりを手に入れたか II]

 某日、銀座。  大河原愛展「静けさの内に留まる羊は、いかにして温もりを手に入れたか II」(-6/20)@銀座 蔦屋書店 アートスクエア  ベールに包まれた女神像のようなモノクロ作品を中心に、左右に作品が展示されている。そのようすは、祭壇を思い起こさせる。 儚さと強い意思と  顔の一部を隠された女性たちからは、儚さや憂いのようなものが漂ってくるようだった。それとは対照的に動物たちの輪郭ははっきりと描かれ、その賢そうな眼差しからは、静かで強い意思のようなものが伝わって

境界を越え,調和する -グループ展[Connect #3]@MAKI Gallery

 某日、表参道。  5人展。まずはそれぞれの作家の作品から。 ジャスティーン・ヒル ミヤ・アンドウ 塔尾栞莉 山本亜由夢 ソフィア・イェガーネ 「作品とのconnect」 はじめに、あえて作家別に紹介をしたのには理由がある。5人展ということを忘れてしまいそうになるくらい、展示空間は調和していた。  それぞれの作家の作風は大きく異なるのだけど、展示の流れがあまりにも自然で、作家同士の作品の境界線がなくなっているかのようだ。  だから途中で、入口に設置されていた

躍動,エネルギー -Ryohei Yamashita [7MOTIONS] (-6/15)

 某日、天王洲アイル。 この1枚が観たくて  Ryohei Yamashita/山下良平「7MOTIONS」@MU GALLERY(-6/15)  展覧会案内に載っていたこの作品が観たくて、足を運んだ。 大いなる力から生まれ、エネルギーを纏って駆けだす  太陽に向かって駆けてゆく姿。夕景だろうか、朝焼けだろうか。駆けているうちに時間は過ぎ去り、今度は太陽を背にまだまだ駆ける。作家のテーマは躍動だという。まさに、そんな躍動感のある1枚だった。  展示作品のなかには、

無理に微笑まなくていい -飯沼英樹 "Roulette / ルーレット"

 某日、天王洲アイル。  飯沼英樹 "Roulette / ルーレット"(-6/22)@gallery UG Tennoz 微笑んでいない女性たち  飯沼英樹作品との出逢いは、昨年の銀座蔦屋書店(@GsiX)。  木に彫られた女性像の、力強さに圧倒された。そして彼女たちが、よくありがちな「慈悲深く微笑む」ようなようすををしていない、という点にも強く惹かれた理由だ。  本展示にはかなりの点数がある。ギャラリーの方と言葉を交わしつつ、ゆっくり鑑賞することができ、無意味に

ガラスケースの中の暴力,生命-アンゼルム・キーファー[Opus Magnum]展

 某日、表参道から青山通り。  アンゼルム・キーファー「Opus Magnum」展(-7/13)へ。  ガラスケース内で展開する立体作品と、水彩画が展示されている。 "鎮魂"の芸術家 アンゼルム・キーファー アンゼルム・キーファー。ドイツの歴史上の記憶を揺り起こしたと、下の記事にある。  6/21より、ヴィム・ヴェンダース監督によるドキュメンタリー映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』も公開。  また来年2025年には、世界遺産・二条城の二の丸御殿台所・御清所

新しい神話の断片- 久保寛子[鉄骨のゴッデス](-6/9)

 某日、銀座。  銀座一丁目。ポーラミュージアムアネックス。  作家のステートメントから。 青い尖底土器 シリーズ  自然光が射し込む空間。工事中のようにグリーンの網が張られ、入り込む光は柔らかだ。  「土器」が並ぶ。素材は工事現場などで見るブルーシートと糸。  土器は、土器であるがゆえに、(また、長い年月を経たり、出土したときに欠損することで)その形そのものの美しさを見ていなかったと思う。こうして違った素材で形だけが再現されることで、「用の美」であった土器の、シ

根ざすことと"根こぎ"と -クリスチャン・プーレイ "Geographies of Love"

 某日、千駄ヶ谷から原宿方面。  千駄ヶ谷小学校と向かい合う、「ギャラリー38」。  クリスチャン・プーレイ " Geographies of Love " (- 6/30) 抽象のなかに消え入りそうな緊張感  白い空間に、美しい色彩の風景?画。一部が抽象化された作風のようだ。  描かれている作品の解像度がだんだん粗くなり、細い筆が太い刷毛に変わって画面を覆い尽くしていくのではないかというような……という、静けさのなかに「動き」のある作品。人物の近くにまで迫ったその

光の予感, 音を観る-[GOMA ひかりの世界]@GYRE

 某日、原宿。  「GOMA ひかりの世界」(-6/29) 「ひかりの世界」  展覧会のタイトルどおり、作品には  光が広がっていた。 生と死の境界にある「ひかり」  その源泉は、作家のプロフィールにある。  会場で配布されていたパンフレットには、作家が楊枝のような細く尖った道具を用いて一筆一筆、作品を制作している静かな写真が載っていた。 映像作品に没入する  紹介文にもあるように、会場は「音」に満ちている(ウェブサイト内で聴くことができ、これを書きながら、