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南へゆっくり下る長い道の先に海が見えた。 薄水色をした水面がうねりながら盛り上がると…
濃紺色のウェットスーツに身を包んだ男は、まだ乾ききっていない長髪を振り乱しながら店の外…
翌朝ミトが目を覚ますと、まだカーテンのついていない窓の外が明るくなっていた。スマートフ…
森の小道からやってきたのは、一人の老婦人だった。 灰色がかった髪を後ろに束ね、紺色の…
契約したWi-Fiルーターが届き、新しい家でのリモートワークが始まった。 毎朝まだ薄暗い…
浜辺を歩いてくる長髪の男に見覚えがあるなと思っているうちに、オオノだと気づいた。 「あ…
毎朝早くに目が覚めるので、仕事を始めるまでの時間をどうしようかとミトは考えた。リモートワークだからいつ仕事をしてもいいのだが、同僚たちとずれていると不都合があったので、時間帯を合わせる必要があった。 考えた末、ミトは小さめのポリタンクを買い、それをバックパックに入れて毎朝森の奥へ通うことにした。 早朝の森は格別だった。小道を歩きながら爽やかに湿った空気を吸い込むたびに、全身が生き返る気がした。鳥の鳴き声と風に揺れる樹々のざわめきがミトを包み、歩いているうちにしんと静
リモートワークのヒアリングのため出社する日が近づいてくると、ミトは気が重くなった。普段…
電車を乗り継ぎ家に帰ってくると、ミトは居間の畳の上に転がって大きく息を吐いた。からだと…
雲が空を明るく包み、雨の日が続く季節になった。ミトは毎朝仕事の前にレインジャケットを着…
約束の土曜日、ミトは朝からお弁当の準備をした。ハムとチーズのサンドイッチをつくってから…
毎朝ミトがノートパソコンを立ち上げると、夜の間に着信したメールがボックスに溜まっていて…
その日、ミトは早起きをして簡単な弁当を作ると、いつも入っているポリタンクの他に弁当と水…
最後に身近な人が亡くなったのはいつだったろうと振り返ってみたが、うまく思い出せなかった。しばらく考えてから、大学四年生の時に、高校時代の担任の先生が亡くなってお通夜に出たことを思い出したが、そのことが誰かの亡くなった記憶とうまく結びつかなかったのは、葬儀会館でのお通夜がまるで立派な式典のようで、亡くなった先生がこの世に存在していたことの何もかもがきれいに隠されたまま、ただ棺の前で焼香し、親から借りた数珠を絡めて手を合わせただけだったからだ。 あの日、「私が死んだら、この