東本良英

面白い物語を作りたいと思って日夜、研究を重ねています。 気軽に読める短い作品を載せて…

東本良英

面白い物語を作りたいと思って日夜、研究を重ねています。 気軽に読める短い作品を載せていきますので、良かったら覗いてみてください。

マガジン

  • 強制非公開

    奇想系短編小説集。 1話15分もあれば読めます。 世にも奇妙な物語が好きな人にオススメ 過激で奇妙なショートストーリー集 □エピソード紹介□ 『約束の日』 元カノは全員、殺人鬼。 「結婚する」と昔から宣言していた30歳の誕生日 歴代の元カノ=最強の殺人鬼たちが世界中の刑務所から脱出して男の花嫁候補として迎えに来る。 『中野ブロードウェイ《アニマ》ゾンビ』 歩き回る死体。ゾンビに支配された中野で主人公たちはサブカルチャーの聖地 中野ブロードウェイに立て籠る。 一時間目 第二次世界大戦 ハクソーリッジ 二時間目 戦国時代 桶狭間の戦い 過去の戦争が授業になった高校で、奇妙な青春を送る学生たち。 『県立戦場高校』

  • 異世界転生で無双したら現実世界の境遇が激変しました

    異世界転生モノを連載

最近の記事

代替不能カップル

永遠の愛を誓い合う。ぺらぺらの、ペーパームーンみたいな愛だってお互いに薄々気づきながらさ。 そんな、晩秋の落ち葉よりありふれたカップルだったさ。 若くて愚かでありふれた2人。罪も無い男女。お互いにお互いのことを苦い黒歴史だか恋愛遍歴の1ページに変換して永遠に離れてく。よくある小さな物語。 なにがいけなかったんだろうな? 魚の死んだような目で俺をみる女。 彼女の瞳に映る俺も同じ目をしてる。 3日間さまよい続けた砂漠の砂よりも味気ない女の肌。こんな女の肌に欲情してた自

    • モテモテの世紀

      また、いつもの自意識過剰かと思った。 視界の隅で女の白い顔がこちらを向いている気がする。 俺の顔を、女が熱心に見つめている、という感覚。だが、たいていはただの自意識過剰で。焦点を女の白い輪郭に合わせてみればだいたい明後日《あさって》の方向を向いている。俺の事など見ちゃいねえのだ。 経験則から自らの自意識過剰っぷりに自覚がある俺は、もはや女の顔に焦点を合わせて確認するという作業すらしなくなっていた。 あの、勘違いに気づいたときの、猛烈に沸騰するような羞恥心《しゅうちしん

      • 家出

        決して家を出ようとしない引きこもりの息子のために、父はせっせと家を拡張し続けた。 そして、数千年のときが流れた。 □□ 家を出よう。ある日、そう思い立った。 なぜ、そんな決意が自分の心の中に湧き上がったのかは分からない。 顔も見たことの無いネット彼女のエルサが他に好きな人が出来たと言って音信不通になったときにその決意の芽が生まれたのかも知れない。だが、ちょっと違う気がする。 長年プレイしていたネットゲームに新作が発売されて、慣れ親しんだ世界から日に日に知り合いが消

        • 暗闇家族

          女の視線から熱を引き出す美貌だった。男でも不意に直視すると胸をつかれる類いの。色気のある涼やかな目元。通った鼻筋。口紅を引いてるわけでもないのに、はっとするくらい綺麗な色の唇。男心を手玉にとるのが生業の玄人女、その手の女が真剣に惚れるのはいつの時代もこんな男だけなのだろう。 男の名は佐山 慎吾、26歳。佐山に淡い恋心を抱く女は数多かったけれど、積極的に付きまとっているのは6人だった。そのなかでも少し病的と言えるぐらい過激なストーカーと化しているのが木下 由衣という女。年齢2

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        • 異世界転生で無双したら現実世界の境遇が激変しました
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        記事

          さかな

          夢。 縁日の夢だった。 闇のなか、ぼんやりとした灯りの屋台だけがぽつりぽつりと道のさきに浮かび上がっている。 すれ違う人々がぼんやり光ってるような気がして目をやると、その人の、浴衣の、女性器や男性器のあるあたりに、小さな銀河系が浮かんでいた。 一人一人、みんなが、下腹部のあたりにミニチュアの宇宙を抱えていたのだ。 ここは、神様が来る縁日なのか?それは起きたあとの解釈。夢のなかにいる自分は、それを自然な事として受け入れていた。 夢の中の曖昧模糊とした意識で、ぼんやり

          血の祝日

          通勤電車に急制動がかかり、前にいたOLに身体が触れる。意識とは別の部分で身体が勝手に反応して、性欲の高まりを感じた。鼻がつまったような感覚がして、胸苦しくなる。 満員電車。肉体が、無造作に、不自然にひしめき合っている。 クーラーボックスに生きたまま詰め込まれた魚は、異性と身体を擦り合わせるとき俺たちみたいに不意の性欲に悩まされたりするんだろうか。 目の前にぶら下がる手垢まみれの薄汚いつり革も、網棚の上に放置された安っぽい雑誌も、変に腰を曲げたおかしなポーズで視界の下方に

          血の祝日

          中野ブロードウェイ《アニマ》天下無双

          生まれ落ちた瞬間から、最強への道を猛烈なスピードで駆け出していた。 俺にとって、世界はあまりにも貧弱だった。 苦しみと不安と苦痛にむせび泣く赤ん坊たちのなかで、俺は世界への失望感で泣いていたのだ。 母親の胎内で想像していた外界の苛烈さは、こんな甘ったるいものでは無かったから。 □□ 異常体質。 生まれながらに最上質だった俺の筋肉は、まるで細胞そのものに意志があるかのように自律的に発達していった。 筋肉そのものが、運動を記憶する。 あるトップアスリートはその日の

          中野ブロードウェイ《アニマ》天下無双

          中野ブロードウェイ《アニマ》ドラゴン

          小さな子供の頃、間違いなく俺は勇者だった。 何の疑いも無しに世界の中心は自分で。 頭の中に流れるドラゴンクエストのBGM。 母親の太ももの高さしかない世界から見上げる、頭上を通りすぎる駅構内の通行人たち。 ごくごく、自然に、周囲の存在のすべてはモブキャラだった。 どんな大男でも、立派な身なりな大人でも、目を見張る美女でも、みすぼらしい老婆でも。 すべては自分を中心とした世界に溶け込んだ背景。モブキャラだったのだ。 世界が俺を裏切りだしたのはいつからだろう? 「

          中野ブロードウェイ《アニマ》ドラゴン

          黒い純愛

          夜闇の中、笛の音のように聴こえていたその音が女の悲鳴に変わった。 ユキオは無意識のうちに悲鳴のする方に走っていた。 闇を溜め込んだダムのように横たわる巨大な公園。その奥から女の悲鳴は聴こえて来る。 ユキオは腕に覚えがあるわけでもないのに自然と危険な香りがするその場所に向かっている自分が不思議で、夢の中のような現実感の希薄さを感じていた。 公衆トイレのすぐそばの芝生で、男が女を組みしいていた。男は手足が長く、若かった。 「やめろ!」 ユキオがそう叫ぶと、女を抑えたま

          黒い純愛

          大地から酒が湧き出る大陸

          水たまりがいろんな色に染まっている。 カラフルな水溜まり群。 そのそれぞれが別々の種類の酒なのだ。 ワインの水たまり シャンパンの水たまり 日本酒の水たまり それぞれが芳醇な香りを漂わせている。 そんな水たまりが大地一面に、無数にはっている。 大地全体を使った壮大な絵の具セットみたいに。 それは、大地から絶えず湧き出す酒の泉たちだった。 多くの人間がここを楽園と呼ぶ 酒の涌き出る土壌に根をはった、町の中心にある巨大な酒神樹は、毎日多くの実を結び (それ

          大地から酒が湧き出る大陸

          ぼくが悪い子だからお父さんとお母さんは戦争をはじめた

          自慢に思っていた、アメリカ映画みたいなお父さんお母さんの笑顔。しっかり白い歯を見せて、ほがらかに笑っている。 次に顔を上げた瞬間、お父さんの顔は笑顔のまま血に染まっていた。お母さんの顔は、笑顔のまま赤い飛沫を付着させている。 ぼくは、デパートから買ってきた商品を床に置いてレジ係ごっこをしているところだった。お父さんお母さんはダイニングキッチンで仲良く料理をしていた、はずだった。 お母さんの細い手には包丁が握られていて、お父さんの顔には赤い筋が何本も走っていた。 お父さ

          ぼくが悪い子だからお父さんとお母さんは戦争をはじめた

          縮む教室

          教室から、クラスメートの席がひとつ消えた。 高校入学二日目の事だった。 入学初日。クラスの初顔合わせで、自己紹介のときにウケようとして失敗し、氷河期のような寒い空気を作り出したお調子者の席だった。 気のせいだと思った。そのお調子者の席が消えた分だけ教室が狭くなったように感じたのは。 入学早々にスベって、将来に悲観した挙げ句に自主退学でもしたのだろう。あの生徒は。 同じ高校に進学した幼馴染みのユカリと久しぶりに肩を並べて下校した。 川沿いの土手を歩いているときに、何

          縮む教室

          強制横スクロール

          真っ白な肌をした巨大な相撲取りに、頬ずりされながらどこまでも押されていく。 そんな夢から覚めると、実際に俺の身体は引きずられていた。建築基準法を守っているのかも怪しい古いアパート。背中が変色した畳に擦れて熱い。 俺は、顔面を薄い襖に押しつけられ身動きできなくなった。ゆっくりだが、揺るぎない力で絶えず押されている。 顔面で襖を突き破り、身体ごと厚紙の戸を抜けていく。ひっくり返った拍子に後ろを確認してみた。だが、そこには誰もいなかった。 恐怖で心臓が締め付けられた。ポルタ

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          鍵穴 ──その男の性器は鍵型をしていた(ショート・ショート)

          その男の性器は鍵型をしていた。 歪な形状をした、その異形のペニスのせいで、男は女性と交わる事ができないのだった。 悩み苦しんだすえに男は旅に出ることにした。 この世界のどこかに、自分の鍵型の性器を受け入れる事の出来る鍵穴の女性がいるはず。男はそう考えたのだ。 男は世界中を旅して、あらゆる人種、国籍の女性と交合を試みた。 白人、黒人、黄色人種、あらゆる組み合わせのハーフ。だが、どんな人種の女性にも男の鍵型のペニスを受け入れる事は出来なかった。 自分の運命の女性は、も

          鍵穴 ──その男の性器は鍵型をしていた(ショート・ショート)

          恋愛世襲制

          十五代目の笑窪は十四代目のそれより深かった。 ミルク色の幼い地平にうがたれた渓谷。小指がすっぽり埋まりそうなスケール。 中年の気配が、冬がはじまる紅葉の切れ目みたいに見え隠れしていた先代の面影を思い出す。 先代は、嫁を娶《めと》るほんの数日前まで私のもとに通い続け、恋の詩を綴り続けた。 足の指先まで若さが溢れて、溌剌としている十五代目は、先代とは比べようもないくらい青臭く未熟な恋の詩を読み上げる。 若さと引き換えのような熟練。肌が滑らかで、血管の中に灯籠を入れている

          恋愛世襲制

          聖人は賞金首 極悪人は英雄になる世界で その双子は一人は地獄の底に堕ちる悪の道、もう一人は天国へ続く光の道を志した。 ──神の実在を確かめるために

          朝陽の中で見る商売女の顔みたいに薄ら汚れた壁に、童貞の白ブリーフのような真新しい指名手配書が貼られている。 イエス・キリスト 賞金10兆ギル ブッダ 賞金10兆ギル 預言者ムハンマド 賞金10兆ギル この世界の原理原則。それを端的に示すための広告みたいなものだった。 頂点の3善人からだいぶランクの下がる壁の腰あたりの高さに俺と全く同じ顔をした男の手配書が貼られている。 トーマス・コルベ神父 賞金500万ギル 身体の弱い子供や女性を砂漠の砦にかくまい、守る

          聖人は賞金首 極悪人は英雄になる世界で その双子は一人は地獄の底に堕ちる悪の道、もう一人は天国へ続く光の道を志した。 ──神の実在を確かめるために